SSRI・SNRIに対し、衝動性亢進の注意喚起を指示

 厚労省は8日、SSRI(塩酸セルトラリン、パロキセチン塩酸塩水和物、フルボキサミンマレイン酸塩)、SNRI(ミルナシプラン塩酸塩)について、攻撃性や衝動性の亢進についての注意喚起を記した添付文書の変更を指示しました。 (「薬害オンブズパースン会議」の要望書から1年かかりましたね)

使用上の注意改訂情報(平成21年5月8日指示分)(PMDAウェブサイト)

 新しい添付文書では、[重要な基本的注意]の項に、

不安、焦燥、興奮、パニック発作、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、アカシジア/精神運動不穏、軽躁、躁病等があらわれることが報告されている。また、因果関係は明らかではないが、これらの症状・行動を来した症例において、基礎疾患の悪化又は自殺念慮、自殺企図、他害行為が報告されている。患者の状態及び病態の変化を注意深く観察するとともに、これらの症状の増悪が観察された場合には、服薬量を増量せず、徐々に減量し、中止するなど適切な処置を行うこと。」

と改められ(追記され)、また、家族等への指導について、

「家族等に自殺念慮や自殺企図、興奮、攻撃性、易刺激性等の行動の変化及び基礎疾患悪化があらわれるリスク等について十分説明を行い、医師と緊密に連絡を取り合うよう指導すること。」

と改められています(追記されています)。

 ところで、「家族や患者に十分説明を行うこと」という記載のある医薬品について、処方医はどれだけリスクについての説明を行っているのかを考えることがあります。

 抗がん剤ではきちんと説明が行われていますが、それ以外の薬剤では重大な副作用の初期症状を説明して、あとで処方医からクレームがくるという経験をすることが少なくないからです。

 添付文書を変更する以上、メーカーは処方医にもきちんと患者さんに説明するよう働きかけるとともに、処方時における書面による説明も徹底してもらいたものです。

関連情報:TOPICS
  2008.05.13 SSRIによる衝動性亢進について、いっそうの注意喚起が必要

関連記事:「攻撃性」注意喚起を指示  抗うつ薬パキシルなど
  (47NEWS 5月8日 共同通信配信)
  http://www.47news.jp/CN/200905/CN2009050801001022.html


2009年05月09日 01:10 投稿

コメントが4つあります

  1. アポネット 小嶋

    今回の添付文書変更の指示に先だって、5月8日に開催された平成21年度第1回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会で、副作用事例が報告されています。

    資料2−4:抗うつ薬の副作用と他害行動について
    (平成21年度第1回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会)
      厚労省資料(5月14日掲載 PDF493KB、リンク再設定しました)

    厚労省では、「敵意/攻撃性」に該当する副作用報告(パロキセチン塩酸塩水和物173件、フルボキサミンマレイン酸塩65件、塩酸セルトラリン15件、ミルナシプラン塩酸塩15件)を検討、症例経過から傷害等の他害行為があった塩酸パロキセチン26件、マレイン酸フルボキサミン7件、塩酸セルトラリン2件、ミルナシプラン塩酸塩4件(ミルナシプラン塩酸塩については、他害行為につながる可能性があった副作用報告も含む)についての因果関係を詳しく調べました。

    その結果、塩酸パロキセチンの副作用報告のうち2件、マレイン酸フルボキサミンの副作用報告のうち2件において、医薬品と他害行為との因果関係が否定できないものと評価したそうです。

    厚労省ではこういった結果をうけ、国民が抗うつ薬への不安を抱かないよう、抗うつ薬の副作用をはじめとする薬物療法に関する諸問題を専門家の立場から検討し、適正な抗うつ薬の使用法を提言する、「抗うつ薬の適正使用に関する委員会」を立ち上げた日本うつ病学会と協力し、添付文書改訂や症例評価に基づき、今後診療や患者・家族等に対する適切かつ効果的な情報提供の内容・手段等について検討するとしています。

  2. アポネット 小嶋

    6月24日公表の「医薬品・医療機器等安全性情報258号」で解説があります
     http://www1.mhlw.go.jp/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/258.pdf

  3. この情報を会社のうつ病治療されている方に教えたいのですが、丸々コピーし労働組合新聞に載せたいのですが、可能でしょうか? また、どのように掲載すれば著作権などの法律に抵触はしないのでしょうか?

  4. アポネット 小嶋

    元の情報は公的なものなので著作権の心配はないと思いますが,SSRIの服用者だけが衝動性が亢進するというわけではない(一般的に見れば,SSRIの方がリスクが高いようにも感じられますが)というのが,学会の見解です。

    もし,引用等されるのであれば,日本うつ病学会が発表した下記の資料の方がよいかもしれません。

    抗うつ薬の適切な使い方について
      ―うつ病患者様およびご家族へのメッセージ―
        (日本うつ病学会 抗うつ薬の適正使用に関する委員会 6月16日)
      http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/img/tsukaikata.pdf

    関連情報:TOPICS 2009.06.19 日本うつ病学会、「抗うつ薬」の患者・家族向け見解を発表