処方せん様式の変更でも後発医薬品の使用は進まず

 厚労省は、25日に開かれた中央社会保険医療協議会・診療報酬改定結果検証部会に、去年11月〜今年2月にかけて行った後発医薬品の使用状況調査の速報値を報告しました。

第21回中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会資料(2009年3月25日開催)
   http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/s0325-8.html

なお、今回の調査の調査表は、第19回検証部会の資料に掲載されています。(p40-p62)

第19回中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会資料(2008年11月5日開催)
   http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/11/s1105-9.html

 今回の調査は、「処方せん様式等の変更による後発医薬品の使用状況」「後発医薬品の使用に関する医療機関・医師、患者の意識」「後発医薬品の使用が進まない理由」等の把握のために行われたもので、全国のから無作為で抽出された保険薬局2,000施設、診療所2,000施設、病院1,000施設を対象に行われた他、医師、そして今回は初めて患者への調査も行われています。
 保険薬局の調査は、2008年12月1ヶ月間に取り扱った処方せんについて、処方せん枚数、後発医薬品の調剤状況等を尋ねています。(有効回収数944、有効回収率47.2%)

 1ヶ月分についての調査では下記のような結果が得られていますが、昨年9月に日薬が行った調査(()内の%)と同様の傾向が示されています。(別に1週間分についての調査結果もあります)

処方せんベース
(総取り扱い枚数486,352枚)
(1薬局あたりの1,310枚)
総枚数
(n=371)
全処方せんに占める割合 「後発医薬品への変更がすべて不可」欄に処方医の署名等がない処方せんに占める割合
1)全処方せんのうち、「後発医薬品(ジェネリック医薬品)への変更がすべて不可」欄に処方医の署名等がある処方せん 167,456枚 34.4%
(42.9%)
2)全処方せんのうち、処方せん内容の一部について変更不可としている処方せん 6,585枚 1.4%
(3.4%)
3)全処方せんのうち、「後発医薬品への変更がすべて不可」欄に処方医の署名等がない処方せん 318,896枚 65.6%
(59.8%)
  4)3)のうち、処方せんに記載されたすべての銘柄について後発医薬品が薬価収載されていないために、後発医薬品に変更しなかった処方せん(後発医薬品のみが記載された処方せんを含む) 32,494枚 6.7%
(6.8%)
10.2%
(11.3%)
5)3)のうち、以下の理由により、後発医薬品に変更できなかった先発医薬品が1品目でもある処方せん1品目でも後発医薬品の銘柄変更調剤をした処方せん
  a)先発医薬品の含量規格に対応した後発医薬品がなかったため 44,366枚 9.1% 13.9%
b)先発医薬品の剤形(ただし、OD錠除く)に対応した後発医薬品がなかったため 8,138枚 1.7% 2.6%
c)先発医薬品の剤形がOD錠であり、それに対応した後発医薬品がなかったため 2,169枚 0.4% 0.7%
6)患者が希望しなかったために、すべて後発医薬品に変更しなかった処方せん 28,328枚 5.8%
(4.8%)
8.9%
(8.1%)
6)3)のうち、1品目でも先発医薬品を後発医薬品に変更した処方せん(以前に一度変更し、今回も同様に変更した場合も含む) 19,497枚 4.0%
(3.4%)
6.1%
(5.6%)
7)3)のうち、1品目でも後発医薬品の銘柄変更調剤をした処方せん 1,624枚 0.3%
(0.1%)
0.5%
(0.2%)
8)「後発医薬品(ジェネリック医薬品)への変更がすべて不可」欄に処方医の署名等があり、後発医薬品を銘柄指定している品をる処方せん 69,629枚 14.3%
(11.5%)
-
9)全処方せんのうち、1品目でも後発医薬品を調剤した処方せん 213,996枚 44.0%
(42.9%)
-

 上記の表をみてわかるように、1品目でも先発医薬品を後発医薬品に変更した処方せんの割合は、「後発医薬品への変更がすべて不可」欄に処方医の署名等がない処方せんの6.1%(総処方せん枚数に対してはの4.0%)で、後発医薬品への変更ができない(後発医薬品のみが処方され、あえて変更する必要がない)を除外しても、変更率は6.8%にすぎず、後発医薬品調剤に対して積極的できないという結果が示されてしまいました。

  一方、「後発医薬品の使用に関する考え」について尋ねると、「後発医薬品の説明・調剤にはあまり積極的には取り組んでいない」と答えた薬局が33.5%と、「薬効によっては後発医薬品を患者に説明して、調剤するように取り組んでいる」(31.3%)、「特にこだわりはない」(21.1%)、「後発医薬品を積極的に患者に説明して、調剤するように取り組んでいる」(11.8%)などを上回り最も多くの割合を占めています。(日薬調査とほぼ同じ傾向)

 各紙とも、処方せん様式の変更でも後発医薬品の普及がすすんでいないと伝える一方、今のところ薬局の説明不足という指摘はされていませんが、この結果はやはり複雑です。

関連情報:TOPICS
  2008.11.09 日薬、後発医薬品の使用状況調査(中間報告)を公表
  2008.07.10 平成19年度後発医薬品の使用状況調査報告書
  2007.11.08 後発医薬品への変更進まず、処方せん書式の変更も視野に

関連記事:
【厚労省調査】後発品使用、進展なく低迷‐変更は6%止まり
  (薬事日報HEADLINE NEWS 3月26日)
 http://www.yakuji.co.jp/entry9517.html
「ジェネリック」、処方箋様式変えても伸びず(産経新聞3月25日)
  http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090325/plc0903252122021-n1.htm
朝日新聞3月25日
  http://www.asahi.com/national/update/0325/TKY200903250404.html


2009年03月26日 00:12 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    4月22日に開催された、中医協の第23回診療報酬改定結果検証部会で報告書案が示されています。

    第23回診療報酬改定結果検証部会資料(2009年4月22日開催)
    http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/04/s0422-3.html

    診療報酬改定結果検証に係る特別調査(平成20年度調査)
    後発医薬品の使用状況調査報告書(案)(資料(検-2-3))
    http://www-bm.mhlw.go.jp/shingi/2009/04/dl/s0422-3f.pdf

    今回は、自由記述の意見も掲載されています。

    医師側からの意見(p77-84)の中には、『「先発品しか置いていないので、それに変更したい」という連絡をくれる薬局がある。』(後発品を処方し、変更不可にしてる場合も考えられますが)といった薬局への注文や、高齢者や小児について変更する意義はあるのかといった声が寄せられています。