薬局は公的クラミジア対策サービスも紹介すべき(英国)

 8日のTOPICSで、クラミジア対策でスイッチされたOTCアジスロマシン“Clamelle”について、販売のための薬局向けツールが作成されていることを紹介しましたが、英国王立薬剤師会は14日、独自の販売指針(practice guidance)を公表しています。

 PRACTICE GUIDANCE: AZITHROMYCIN
  http://www.rpsgb.org/pdfs/azithromycinguid.pdf

 英国王立薬剤師会が示した販売指針では、“Clamelle”はあくまでも民間が行う一サービス(Private chlamydia screening service) にすぎないとして、国や地方が保健対策としてすすめている事業についても最大限活用する(国民に紹介する)ことを求めていることが意外でした。

 販売指針によれば、英国内ではアジスロマシンの供給方法としては現在次の5つの方法があるようです

  • 薬局用医薬品(今回の“Clamelle”)として
  • NHSのサービスまたは個人的に受診後の処方薬として
  • PGD(patient group direction)を通じて、処方薬を薬局で処方せんなしで限定的に販売
  • イングランド地方で実施されている全国クラミジアスクリーニングプログラムを通じて
  • 地域薬局を通じて行われているスコットランド地方の公衆衛生サービス

 王立薬剤師会はこの販売指針で、“Clamelle”は薬局で手軽に検査を依頼できて、すぐにアジスロマイシンが買える便利さはあるが、検査や薬剤の購入が無料になる公的サービスも最大限活用すべきとしています。こういった背景には、“Clamelle”の販売で行われる検査はクラミジアだけで、他の性感染症、とりわけ淋菌の検査が行われない(クラミジアに感染していれば、当然淋菌にも感染している可能性がある)ことで、アジスロマイシン耐性の淋菌が増えるのではないかという懸念があるためのようです。

 OTCになったので、どうやって売るかということだけではなく、OTC化によってどのような社会的影響があるか、また薬剤師として他の公的保険サービスや医療機関とどのように連携が求められるかなどに力点を置いたこの販売指針にはさすがと思いました。

 日本でも、ニコチンパッチがOTC化され、薬局での禁煙指導が実施されていますが、私は医師が行う禁煙指導や公的な機関が行う禁煙対策との連携や協働の必要性を感じさせられました。そして、こういった視点での販売指針というものが今こそ必要ではないかと考えさせられました。

 日本に立ち返れば、未だ日薬は第一類医薬品の品目ごとのの独自の販売指針を示すことができていません。改めて、日薬のOTC販売に対しての取り組みの低さを感じざるを得ません。

関連情報:TOPICS
    2008.11.08 アジスロマイシンのOTCが発売(英国)
    2008.09.16 OTC販売時の業務指針・チェックリスト(英国)
    2007.06.30 クラミジア対策にアジスロマイシンのOTC化を検討(英国)
    2005.11.23 薬局でクラミジア検査キットを無料配布(英国)

参考:POM to P switch of azithromycin
     (The Pharmaceutical Journal 2008;281:557)
  http://www.pjonline.com/news/pom_to_p_switch_of_azithromycin
    Is Pandora’s box now open?
     (The Pharmaceutical Journal 2008;281:500)
http://www.pjonline.com/news/is_pandora%E2%80%99s_box_now_open


2008年11月15日 02:13 投稿

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