ニューキノロン系抗菌剤と腱障害

医薬品などを監視する消費者団体の米国パブリックシチズン(Public Citizen)は29日、ニューキノロン系抗菌剤(Fluoroquinolone Antibiotics)による腱炎・アキレス腱断裂などのリスクを、黒枠警告(”Black-box”warnings)に記載すべきとする請願をFDAに行ったと発表した。

FDA should warn of tendon ruptures linked to Cipro, similar antibiotics
  (Public Citizen Hot Issue 2006.8.29)
  http://www.citizen.org/hot_issues/issue.cfm?ID=1434

パブリックシチズンでは、1997年11月から2005年12月31日までにFDAの有害事象データベース(FDA Adverse Event data)に寄せられたニューキノロン系抗菌剤関連の副作用を調査し、その結果、腱断裂(Tendon Rupture)262例、腱炎(Tendinitis)258例、腱障害等(Tendon Disorder (other))274例など腱関連の副作用報告が計794例があったという。

また腱断裂が記された副作用報告687例を調べたところ、38.1%でニューキノロン系抗菌剤を使用、うち61%がレボフロキサシン(但し、処方数自体もこの4年間で全処方中約45%を占めている)が占め、次いでシプロフロキサシン(23%)、モキシフロキサシン(8.8%)などを使用していたこともわかった。腱断裂は、24.5%でスタチン系薬剤の使用でも認められたが、処方数などで調整するとニューキノロン原因のものはスタチンの5倍に達するとしている。

米国では、腱断裂や腱炎の副作用は既に”Warninngs”の項目に記載されてはいるが、パブリックシチズンでは、今回の調査結果を元に、これらの副作用の重要性について注意を促すよう、黒枠警告に改めるよう求めた。なお同様の要請は、2005年5月にイリノイ州政府からも出されている。

わが国でも既に、ほとんどのニューキノロン系抗菌剤の添付文書の「重大な副作用」の項目にこれらの副作用が記載されている。引き続き薬局の現場では患者さんに対し、より積極的にこれらの情報を提供することが求められる。

関連論文:
Fluoroquinolones and risk of Achilles tendon disorders: case-control study
(BMJ 2002;324:1306-1307)
  http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/full/324/7349/1306
Increased Risk of Achilles Tendon Rupture With Quinolone Antibacterial Use, Especially in Elderly Patients Taking Oral Corticosteroids
(Arch Intern Med. 2003;163:1801-1807)
  http://archinte.ama-assn.org/cgi/content/abstract/163/15/1801

参考:Group wants stronger antibiotics warnings
    (MSNBC 2006.8.29 AP通信配信)
      http://msnbc.msn.com/id/14574467


2006年08月30日 23:00 投稿

Comments are closed.