子宮頸がん予防ワクチン、積極的には勧めないって?

 14日の夜からあちこちのメディアで報じられているので既にご存じかと思いますが、厚労省は14日開催された予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会/薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)における議論を踏まえ、子宮頸がんワクチン(正式には、HPVワクチンですが、今回の記事はこちらで統一します)の「積極的な勧奨は一時見合わせ」(この表現が適切かと考えました)とする意見をまとめ、自治体に通知を行っています。

 ワクチンについては私自身不勉強の部分があるので、最近は記事として取り上げるのは控えていましたが、さすがに今回の国の対応はちょっとどうかと思い、疑問に思った部分を整理してみました。

平成25年度第2回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成25年度第2回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)(2013.06.14開催)
配布資料:http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000034g8f.html
  議事録:http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000019309.html

 今回の積極的な勧奨の一時見合わせは、今回の検討部会で、ワクチン接種後に疼痛が広範囲にわたる(注射部位に限局しない筋肉痛、関節痛、皮膚の痛み。しびれ、脱力等も伴い長期間持続する例も。)従来にない重い副作用が38例報告(→資料2-8)されたためです。

 検討会では、予防接種以外の注射や採血などの医療における穿刺行為後に長時間続く痛み(CRPS:複合性局所疼痛症候群)との関連性も含め、これら症状がワクチンとの因果関係の有無が確認することにし、これがはっきりするまでは、自治体に対し、「あまり接種を勧めない」といった内容の通知を行いました。

ヒトパピローマウイルス感染症の定期接種の対応について(勧告)
(厚労省 2013.06.14)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000034kbt.html
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000034kbt-att/2r98520000034kn5.pdf

 注目は、上記(PDF)通知文の3の部分で、

市町村長は、管内の医療機関に対して、ヒトパピローマウイルス感染症の定期接種の対象者等が接種のために受診した場合には、積極的な勧奨を行っていないことを伝えるとともに、接種を受ける場合には、ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン接種の有効性及び安全性等について十分に説明した上で接種することを周知すること。なお、同ワクチンの有効性及び安全性等について記載した説明用資料については、別紙のとおりである。

 この別紙というのが下記のリーフレットです。(画像クリックで別ウインドウでPDFファイルが開きます)

 子宮頸がんワクチンについては、今年4月から日本でも定期接種になったことや、海外では男児や男子へも接種勧奨が広がっていることも考えると、必要性については多くの専門家が認めるところでもあります。

 その一方で、ワクチンの接種が始まってからはまだ期間が短く、有効性についてはまだはっきりとしない部分もあります。

 また、広く接種されるようになってから今までに知られなかった重篤な副反応が報告されていること、また他のワクチンに比べ副反応の頻度も比較的高いこともあり、リスクベネフィットを考慮したとき、有用性はないとの意見もあります。

HPVワクチンの効果と害/子宮頸がんの疫学とHPVワクチン
(正しい治療と薬の情報 2013年4月号 Vol.28 No.2)
http://www.tip-online.org/
http://www.tip-online.org/pdf_free/2013_04free.pdf

 しかし、海外では安全性を理由に子宮頸がんワクチンの接種を停止するというケースは私が知る限りなく、積極的に勧めないけど、「有効性 と リスク を理解した上で受けてください」ということになったようです。

 要は「自分で判断して子どもに受けさせて下さい」ということなのでしょうが、上記のリーフレットだけで果たして、保護者は判断することができるのでしょうか? ましてや、今回「積極的にはお勧めしていません。」ということになった理由がこのリーフレットにはどこにも書いていません。

 また、自治体(おそらく実際に接種を行う医師も)に対しても、このリーフレットで周知せよというのも、あまりにも現場任せだと思います。

 子宮頸がんワクチンが定期接種になったのにもかかわらず、子宮頸がんワクチンについて記した厚労省HPのページは私が知る限りでは下記だけです。

子宮頸がん予防ワクチン、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/

 一般の人が理解できるのは下記ページくらいしかない

子宮頸がん予防ワクチンに関するQ&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/qa_shikyukeigan_vaccine.html

 現時点で掲載されていたのは2013年4月版だが、あまりにも少なすぎだと思う。

 第2回の副反応検討部会で、下記のような新たなQ&Aが提示されたので、差し替えになると思う。

(資料2-11)子宮頸がん予防ワクチン Q&A
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000034g8f-att/2r98520000034hu7.pdf

 また子宮頸がんワクチンは、小学校低学年や小さな子どもが受ける予防接種と異なり、自分で症状を理解し、伝えることができる中高生の接種者が多いので、国はこういった子どもたちむけのわかりやすいリーフレットやQ&A、ワクチンに関するサイトを作成すべきだと思ういます。(メーカーの啓発とは立場が違うはず)

 ちなみに、学校での接種が行われている豪州では、、医療従事者だけではなく、本人や親、学校関係者向けごとの情報を網羅したサイトがあります。(内容については何とも言えませんが)

HPV School Vaccination Program
http://hpv.health.gov.au/

 子宮頚がんワクチンに限りませんが、とりわけHPVワクチンについては、新たに定期接種になったのにもかかわらず、厚労省として発信される(関連機関はそれなりにあるけど)情報が限られ、結局はメーカー(の宣伝)やや自治体など現場任せであったこと、また有害反応の収集・検討する仕組みがうまく機能していないことも今回のことを招いてしまったのではないかと思いました。(PMDAでの副反応の関連が疑われる健康被害の報告が少ないとの報道もあった)

 海外では自発的に(患者さんが直接)副反応を報告できる仕組みが導入されている国もあり、こういった制度の導入も早急に研究する必要があると思いました。 

 

資料:
予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会(厚労省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000008f2q.html#shingi13

9月3日 議事録へのリンク追加


2013年06月17日 02:38 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    Q&Aが、詳しい内容に更新されました。

    子宮頸がん予防ワクチンQ&A
    (厚労省 平成25年6月更新版)
    http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/qa_shikyukeigan_vaccine.html

  2. アポネット 小嶋

    日本産科婦人科学会は日本産婦人科医会、日本婦人科腫瘍学会との連名で、安全性の再評価を急ぐよう求める要望書を、厚労相あてに提出することを決めています。

    子宮頸がんワクチン、早期評価を 学会が要望書提出へ
    (47NEWS 共同通信 2013.08.31)
    http://www.47news.jp/CN/201308/CN2013083101001941.html

    子宮頸がん予防ワクチンの接種勧奨再開審議に関する要望書
    http://www.jsog.or.jp/news/pdf/20130903_0831.pdf

    要望書では、HPVワクチン接種と子宮頸がん検診の両者を広く普及させていくことが大切だとしたうえで、わが国のようにHPVワクチンの定期接種導入後に「積極的勧奨の一時中止」の勧告が出された国はなく、世界中が今後のわが国のワクチン行政の動向に注目しているとしています。

    一方、薬害オンブズパースン会議は8月23日、厚労省が作成したリーフレットでは、保護者や本人が接種を受けるかどうかを判断するのに十分な情報は書かれていないとして、独自のQ&AをWEBで公開しています。

    子宮頸がんワクチンに関する本当のQ&A
    (薬害オンブズパースン会議 2013.08.23掲載)
    http://www.yakugai.gr.jp/topics/topic.php?id=839
    http://www.yakugai.gr.jp/cc_vaccine_qa/

    このうち、WHOはが2009年にまとめた方針説明書(position paper)では、無条件で「世界全体においてこのワクチンを使用するよう推奨」しているわけではないとしています。