処方せんの使用期間周知徹底は進まず

 処方せんの使用期間の周知については、総務省が厚労省に対し2010年3月に広報啓発が行われるよう医療機関に対し要請が行われているところ(TOPICS 2010.11.17)ですが、その後も使用期間を知らずに有効期限を過ぎ調剤を受けられなかったという苦情が寄せられているとのことで、総務省中部管区行政評価局(http://www.soumu.go.jp/kanku/chubu.html)は20日、東海北陸厚生局に対して、改めて医療機関に対し、院外処方せんの使用期間の周知徹底について指導するようあっせんしたそうです。

苦情処理委員会の意見を踏まえたあっせん(院外処方せんの使用期間が4日間であることを周知してほしい)」
(総務省中部管区行政評価局 2012年7月20日)(概要)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000168996.pdf

【行政相談の要旨】
院外処方せんの交付を受けたが、持病薬であったことや急ぎの用事もあって、当日は薬局へ行かなかった。翌日は祝日であり、次は土・日曜日であったため、4日間の院外処方せんの使用期間を徒過するところであった。幸い土曜日の午前中に気付き、ことなきを得たが、使用期間を徒過した場合、改めて院外処方せんの交付を受けるには実費が必要と聞いている。院外処方せんの使用期間を高齢者にも分かるように周知してほしい。

 あっせんの要旨によれば、医療機関の中には

  • 院外処方せんの使用期間欄に「○月○日~ ○月○日」と、使用期間を具体的に明示している。
  • A4版の左半分(A5版)を院外処方せんを、右半分に注意事項を記載し、使用期間を含む注意事項の文字を大きな文字にしている。また、院外処方せんを交付する際には、注意事項の使用期間部分をマーカーしている。
  • 診療科待合室のモニターや会計窓口待合室の待ち時間モニターのテロップに使用期間を表示している。
  • 院外処方せんを、薬剤師会が作成した使用期間を大きく表示した封筒に入れて交付している。

などの工夫をしているところがあるものの、行政評価局が51人に面接調査を行ったところ、「使用期間を知らない」人が68.6%いる一方、医療機関での使用期間の掲示を見たことがある人はごくわずかだったそうです。

 行政苦情処理委員会では、周知の方策として

  1. 患者の立場、特に使用期間を徒過する可能性が高い高齢者への配慮が必要なこと
  2. 平成22年の総務省のあっせんを踏まえた所要改善が十分に図られていないことに配意することが必要と考える

として、創意工夫した対応(例:患者への声掛け及び待合室や会計窓口のモニターのテロップを活用した使用期間の周知、使用期間の具体的日付の記載、処方せんと一体化した注意事項に使用期間を大きく表記等)を具体的に例示し、その普及を図ることが即効性のある対応と考えるとした意見を付しています。

 それならば、「病状の安定した慢性疾患に限定して処方せんの使用期間の延長を」との声もでそうですが、「同じ慢性疾患であっても患者の症状は人によって様々であるため、診察に当たる医師が個々の事情に応じて該当の可否を判断すべきである。」として、慢性疾患に限定しての一律の延長も困難との見解が既に示されています。

薬の処方せんの使用期間の徒過の防止について(2010年3月30日)
(総務省・行政苦情救済推進会議の検討結果を踏まえた本省のあっせん事例
  概要:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/pdf/100408_6.pdf
あっせん:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/pdf/100408_5.pdf

薬の処方せんの使用期間の徒過の防止について(回答)
-行政苦情救済推進会議の意見を踏まえたあっせんに対する回答-
(総務省 2010年10月?)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000098129.pdf

 ここまで同じような苦情がある以上、処方せんの様式を変えるか、処方日数によって、処方せんの使用期間を変える、さらにはリフィルを認める というのが、解決策に近づくと思うのですが、厚生局が乗り出して、「保険医療機関として、患者さんにきちんと行っていない」場合は指導の対象ですというのは勘弁してもらいたいですね。

関連情報:TOPICS
 2010.11.17 処方せんの使用期間周知は徒過の防止が目的

参考:
朝日新聞7月22日
http://www.asahi.com/health/news/NGY201207200030.html


2012年07月22日 21:10 投稿

コメントが2つあります

  1. http://www.pref.okayama.jp/hoken/hohuku/tuuchi/iyaku20120626-1195.pdf
    土日をはさんだら2~5日(市街地は5~6日)と書いてあります。
    処方せんの有効期間が過ぎてから薬配達されても作れないんですけど。
    次からって言われても必ずその処方が来るとは限らないし、個人的にはそもそも4日以内って書いてあるのに、平気で5日とか6日って通知出す事が信じられません。

  2. アポネット 小嶋

    日病薬が会員向けに関連の通知を出しています。(病院薬剤師に周知するだけではどうにもならない問題だと思うけど)

    院外処方せんの使用期間は4日間であることを周知して下さい!
    (一般社団法人 日本病院薬剤師会 2012.08.15)
    http://www.jshp.or.jp/cont/12/0815.html