ラジレスとイトラコナゾールは併用禁忌

 厚労省は12日、アリスキレンフマル酸塩(ラジレス錠150mg)、イトラコナゾール(イトリゾールカプセル50他)等の添付文書の改訂指示を行っています。

使用上の注意改訂情報(平成22年10月26日指示分)(PMDAウェブサイト)

 今回、添付文書の改訂指示で注目したのは、ラジレスとイトラコナゾールの併用禁忌で、併用注意からの移行ではなく、いきなり併用禁忌の項に追記された点です。

 ラジレスの審査報告書(→PMDAウェブサイトへリンク)でも、イトラコナゾールとの併用についての記載はなかったため、Pubmedでこの2剤についての相互作用に関する論文はないかと検索したところ、次の論文がヒットしました。

Itraconazole, a P-Glycoprotein and CYP3A4 Inhibitor, Markedly Raises the Plasma Concentrations and Enhances the Renin-Inhibiting Effect of Aliskiren.
J Clin Pharmacol. 2010 Apr 23. Epub ahead of print)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20400651/

 上記研究は、ラジレスが肝臓での代謝に主にCYP3A4 が関与すること、ラジレス及びその代謝物の排泄にトランスポーターとして、P-糖たん白質が主に関与していることに着目し、P-glycoprotein で、CYP3A4 阻害薬であるイトラコナゾールとの薬物相互作用試験を行ったもののようです。

 試験は、健康成人11人にイトラコナゾールを服用した後、ラジレスを服用してもらってラジレスの血中濃度を測定したというもので、Cmaxが5.8倍、AUCが6.5倍となったとのことです。(ここの部分は訳に自信がないので誤りがあったらご指摘下さい)

 現在ラジレスとの併用禁忌であるシクロスポリンとの相互作用試験では、Cmaxが約2.5倍、AUCが約5倍に増加したとのことなので、おそらくラジレスとイトラコラゾールについても併用禁忌とする必要になったものと思われます。(今後メーカーから発出される情報でご確認下さい)

 薬物代謝を詳しく学ばれている最近の薬剤師の方にとっては、要注意の組合せと感じていた方もいるのではないかと思いますが、改めて使用経験の少ない新薬には、まだまだたくさんの未知の相互作用があるんだなと思った次第です。 (この分野、しっかり勉強しなくちゃ)


2010年10月26日 23:06 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    イトリゾールの改訂添付文書がアップされています(→PMDA

    添付文書では、

    イトラコナゾールカプセルの併用投与(空腹時)により、アリスキレンのCmax及びAUCがそれぞれ約5.8倍及び約6.5倍に上昇したとの報告がある。

    アリスキレンのP糖蛋白(Pgp)を介した排出が本剤により抑制されると考えられる。

    となっていました。

    紹介文献と訳は間違っていなかったようです。

    ラジレス錠もノバルティスファーマ社のWEBサイトに改訂情報が掲載されています。

    ラジレス錠 添付文書改訂のお知らせ(2010年11月1日掲載)
     http://www.novartis.co.jp/product/ras/os/os_ras1010.html

    1 .使用上の注意(事務連絡 及び 自主改訂)
    「禁忌」の項:“イトラコナゾールを投与中の患者”を追記、「併用禁忌」の項:“イトラコナゾール(イトリゾール等)”を追記

    健康成人(外国人)にイトラコナゾール100mgと本剤150mgを併用投与(空腹時)したとき、アリスキレンのCmaxが約5.8倍、AUCが約6.5倍に増加したとの報告(記事紹介論文)があり、また、CCDS(企業中核データシート)に記載されたことから追記いたしました。本剤のP糖蛋白(Pgp)を介した排出がイトラコナゾールにより抑制され、本剤の血中濃度が上昇すると考えられます。

    2 .薬物動態
    「薬物間相互作用(P糖蛋白(Pgp)阻害作用を有する薬剤との薬物間相互作用)」の項:イトラコナゾール併用投与時のデータを追記

    「禁忌」及び「併用禁忌」の項にイトラコナゾールを追記したことに伴い、本剤及びイトラコナゾール併用時の薬物動態のデータ(記事紹介論文)を追記いたしました。

    また、インタビューフォームも改訂されています。
     http://www.novartis.co.jp/product/ras/if/if_ras1010.pdf

    インタビューフォームでは、

    本剤は薬剤排泄のトランスポーターであるP 糖蛋白(Pgp)により腸管内に排出される。イトラコナゾール及びシクロスポリンは非常に強力なPgp 阻害作用を有することから、本剤の排出が阻害されると考えられる。

    [海外データ]
    外国人健康成人11 例を対象に、イトラコナゾール100mg 及び本剤150mg を空腹時に併用投与したとき、本剤単独投与と比較して本剤のCmax は約5.8 倍、AUC0-inf は約6.5 倍に増加し、T1/2 は有意な変化はなかったが、Tmax は遅延した。

    となっています。