地域薬局は自殺・うつ病対策のゲートキーパーとならないのか

 29日の各紙が報じていますが、厚労省の自殺・うつ病等対策プロジェクトチームは28日、今後、厚生労働省が自殺対策に取り組む指針として、プロジェクトチームのとりまとめを発表しています。

自殺・うつ病等対策プロジェクトチームとりまとめについて(厚労省2010年5月28日)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jisatsu/torimatome.html

 プロジェクトチームでは、今後の自殺防止のための厚生労働省の対策として、

  1. 普及啓発の重点的実施
    ~当事者の気持ちに寄り添ったメッセージを発信する~
  2. ゲートキーパー機能の充実と地域連携体制の構築
    ~悩みのある人を、早く的確に必要な支援につなぐ~
  3. 職場におけるメンタルヘルス対策・職場復帰支援の充実
    ~一人一人を大切にする職場づくりを進める~
  4. アウトリーチ(訪問支援)の充実
    ~一人一人の身近な生活の場に支援を届ける~
  5. 精神保健医療改革の推進
    ~質の高い医療提供体制づくりを進める~

の5つの柱を示して、具体的に取り組むべき課題を示しているのですが、上記2の「ゲートキーパー」に地域の薬局や薬店が位置づけられていない点に私はがっかりしました、

 というのは、報告書本文[pdf]でも例に出されている、富士モデルといわれている、静岡県富士市でモデル事業として行われている取り組みが十分に反映されていないからです。

 この富士モデルというのは、静岡県が働き盛りのうつ自殺対策として2006年から始められている取り組みで、「働き盛りのメンタルヘルス日本一を目指して」をスローガンに、富士市、富士市医師会、地元精神科医療機関、富士市薬剤師会、保健所、富士労働基準監督署など様々な機関と連携して行われているものです。

 富士の取り組みについては、静岡県精神保健福祉センター所長の松本晃明氏の下記の報告でおおよそ概要がつかめます。

働く方々のメンタルヘルス~うつ・自殺予防対策における地域・職域連携について~
平成21年度地域・職域連携推進事業関係者会議 2009年11月15日開催)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/hoken-sidou/dl/h21_shiryou_b.pdf

明日からできるうつ対策 その4
かかりつけ医と精神科医の連携~富士モデル事業
(総合メディカルマネジメント、ラジオNIKKEI 200912.24放送)
http://medical.radionikkei.jp/sogo_medical/final/PDF/M091224.pdf

 上記報告で松本氏が、「市販の睡眠改善薬(OTC)が発売され始め、購入者が急増している。仕事が多忙な働き盛り男性は、医療機関にかかる時間も惜しみ、結果として市販の睡眠改善薬の使用を繰り返している可能性がある。不眠に悩むハイリスク者が利用する薬局は、重要な相談機関の一つであり、かかりつけ薬局も(早期対応の)ゲートキーパー」として位置付けられることは、自殺対策における相談体制整備の一環として必須と考えられる」と指摘しているように、体の不調や不眠を訴え、まず地域の薬局や薬店で相談することは少なくないはずです。

 今年3月の自殺対策強化月間に行われた睡眠キャンペーンを継続し、「不眠が2週間以上続く場合は、うつのサインかも。かかりつけのお医者さんへ」といった分かりやすいメッセージの発信を続けるのであれば、地域の医療資源としての薬局・薬店を利用することは考えないのでしょうか。

 どこの国(たぶん英国)か忘れてしまいましたが、OTC咳止め薬を常用している人に、肺がんの早期発見を呼びかける啓発リーフレットを渡す、店頭に陳列されている商品にも直接リーフレットなどを貼り付けるなどの取り組みなどを行っている国もあります。つまり、病気の早期発見と治療を促すという点で、地域薬局は地域の保健に大きく貢献するはずです。

 今回の指針を見て、富士地区の薬剤師はどう思われていることでしょう。日本では、英国などのように地域薬局を公衆衛生や保健の分野で活用するという発想はまだないのかもしれませんね。

関連サイト:
【広報ふじ平成20年10月20日 950号】ちゃんと眠れていますか?
http://www.city.fuji.shizuoka.jp/ct/other000009400/950-08.pdf
うつ自殺予防対策「富士モデル」事業(静岡県精神保健福祉センター)
http://www.pref.shizuoka.jp/kousei/ko-810/seishin/utsu.html 


2010年05月29日 14:55 投稿

コメントが3つあります

  1. アポネット 小嶋

    政策レポートとして、関連ページをアップしています。

    自殺・うつ病等対策プロジェクトチームとりまとめについて
    (社会・援護局障害保健福祉部 精神・障害保健課)
    http://www.mhlw.go.jp/seisaku/2010/07/03.html

  2. 社団法人富士市薬剤師会の廣中義樹です。
    こちらではかなり積極的に参加してますよ。
    http://www.fujiyaku.net/

    参考までにpdfファイルなどをご覧になって下さい。

  3. アポネット 小嶋

    廣中さん情報ありがとうございます。

    貴会HPで情報を発信していたのですね。

    うつ・自殺予防対策「富士モデル事業」
    (社団法人富士市薬剤師会 2010年7月21日)
    http://www.fujiyaku.net/files/topix0012.pdf

    私は、富士市のこれまでの取組によって、厚労省の「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」がまとめた施策(TOPICS 2010.9.10)で薬剤師の活用というのが出てきたのだと思っています。

    日薬は今後設置されるワーキングチームに参加して、それから取組を考えるという姿勢のようですが、私は富士市の取組をまずできる地域から全国に広げていくことのほうが先決だと思います。

    特に睡眠改善薬を購入する人への介入やサポートは今すぐにでもできることです。

    それにしても貴会の取組が、日薬誌やホームページで詳しく紹介されないことは残念でなりません。

    セルフメディケーションや公衆衛生の担い手としての薬剤師の役割を社会に訴えるいい機会だと思うのですが。