抗生剤適正使用キャンペーンは十分浸透せず(EU)

 2008年から11月18日を“European Antibiotic Awareness Day”と定めるなど、抗生剤の適正使用のキャンペーンが行われているEUですが、このほど抗生剤の使用実態や、受け止める側の住民の認識状況などを調べた調査結果が公表されています。

Antimicrobial resistance(Eurobarometer Special Surveys)
http://ec.europa.eu/public_opinion/archives/eb_special_en.htm#338

 この調査は、Eurobarometer (→Wikipedia)というEU加盟27か国の住民を対象に行われた大規模調査で、European Antibiotic Awareness Day をはさむ、昨年11月13日~12月9日にEUの住民26761人を対象に対面調査で行われています。

 調査結果の概要は以下の通りです。

  • 40%の人が最近1年間に抗生剤を使ったことがある
  • 抗生剤は97%の人が医師の処方によるもの
  • 使用の目的は、インフルエンザが20%、気管支炎が17%、のどの痛みが16%、かぜが15%
  • 53%の人が抗生剤はウイルスを殺すものと考えている
  • 風邪やインフルエンザに抗生剤が効果がないと考えている人は47%
  • 不必要な抗生剤の使用により抗生剤が効かなくなると考えている人は83%
  • 抗生剤の副作用として下痢などの症状があることを知っている人は68%
  • 抗生剤についての上記4つ事項について正しく答えられた人は20%、平均正答率は2.3問
  • かぜやインフルエンザなどで抗生剤は使用しないなど、不必要な抗生剤を服用しないことについての情報を最近1年間に聞いたことがある人は37%
  • これらの情報について、初めて聞いたのは医師からが30%、テレビCMが29%、新聞やテレビのニュースでが15%、薬剤師からは5%
  • 適正使用キャンペーンを知りながら、抗生剤に対しての考え方を変えたのは62%
  • 抗生剤の信頼できる情報の入手先として利用しているのは医師が88%、薬局が42%、病院が18%、看護師が10%

 なお、これら調査結果ですが、各国間で差が大きく、それぞれの国の医療制度や医療習慣によるものが大きいと考えられます。また、新型インフルエンザ流行の影響も若干考慮する必要もあるかもしれません。

  • ルーマニアでは16%の人が処方せんなしで薬局で購入した抗生剤を使用
  • 抗生剤についての4つ事項について正しく答えられた人の割合は北欧諸国で高かった(フィンランド44%、スウェーデン39%、デンマーク37%など)
  • 適正使用キャンペーンを知った方法で薬局と答えた国で最も多かったのがオランダの12%
  • 抗生剤の信頼できる情報の入手先として薬局と答えたのは、アイルランドが62%、オランダが61%、スウェーデンが59%が高かった。

 結果の通り、まだ抗生剤の適正使用キャンペーンは各国住民に十分理解されたものとは言えません。今後、キャンペーンが浸透するには、各国ともに医師の役割が大きく、またテレビなどのメディア通じた継続的な情報発信が求められるようです。

 日本で同じ設問で調査を行ったらどんな結果が出るでしょうね。

関連論文:
European Antibiotic Awareness Day, 2008 – the first Europe-wide public information campaign on prudent antibiotic use: methods and survey of activities in participating countries
(Eurosurveillance, Volume 14, Issue 30, 30 July 2009)
http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=19280

関連情報:TOPICS
 2008.11.08 European Antibiotic Awareness Day
 2009.11.19 European Antibiotic Awareness Day 2009


2010年04月19日 17:04 投稿

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