ARBが高齢男性の認知症リスクを低下させるかもしれない

 12日、BMJ 誌のonline FirstにARBが認知症のリスク低下させる可能性があるとした論文が掲載され話題になっています。

Use of angiotensin receptor blockers and risk of dementia in a predominantly male population: prospective cohort analysis
BMJ 2010;340:b5465 Published 12 January 2010)
http://www.bmj.com/cgi/content/full/340/jan12_1/b5465

 この研究は、米国の退役軍人の健康データ(Administrative database of the US Veteran Affairs)のうち65歳以上の心臓病の持病がある819,491人(うち男性が98%)のデータを4年間追跡調査したもので、ARB服用群(約11,500人)、リシノプリル(ACE阻害剤)服用群(約91,000人)、その他の心臓病薬(ARB、ACE阻害剤、スタチン)以外の服用群(約696,000人)の3群に分けて、アルツハイマーや認知症の(dementia)の発現や死亡リスクなどを比較しています。

 その結果、ARB服用群ではその他の心臓病薬服用群と比べ、認知症のリスクが24%低下、リシノプリル群と比較しても19%低下、さらに、ARBとリシノプリルを併用するとリスクは46%低下したそうです。

 リスクが低下する理由について、はっきりとした理由はわからないものの、脳細胞には複数のアンジオテンシン受容体が存在しており、ARBにより悪いレセプターをブロックすることでニューロンの働きを強化するためではないかと推測しています。

 今回の研究は前向きコホート研究である点、ARBの服用群のデータが少ない点、大部分が男性である点など信頼性が十分でないことから、今後はランダム化比較試験での検証が求められます。

参考:
一般的な降圧剤に認知症予防効果、米研究
(AFP BB NEWS 2010.1.14)
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2682381/5163522
Blood pressure drugs and dementia(NHS Choice 2010.1.13)
http://www.nhs.uk/news/2010/01January/Pages/
Blood-pressure-drugs-and-dementia.aspx

Could angiotensin receptor blockers reduce incidence and progression of Alzheimer’s disease?(Nelm 2010.1.13)
http://www.nelm.nhs.uk/en/NeLM-Area/News/2010—January/13/
Could-angiotensin-receptor-blockers-reduce-incidence-and-progression-of-Alzheimers-disease/

Some Blood Pressure Drugs May Stave Off Dementia
(Health day 2010.1.12)

http://www.healthday.com/Article.asp?AID=634898


2010年01月14日 11:45 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    関連ブログです

    ARB:男性認知症リスク軽減効果
    (内科開業医のお勉強日記1月15日)
     http://intmed.exblog.jp/9665404/