肥満症治療薬「ゼニカル」がOTCとして販売へ(米国)

 23日、FDAの専門諮問委員会(Nonprescription Drugs and Endocrinologic & Metabolic Drugs advisory committees)が行われ、膵リパーゼ阻害剤の肥満症治療薬「ゼニカル(xenical 一般名:orlistat)」をOTCとして認可を求める票決を行いました。早ければこの夏にも、60?カプセル(処方薬は120?カプセル、副作用に配慮)がOTCとして発売される見通しです。

 Glaxo’s Orlistat Favored For OTC Weight-Loss Use By FDA Joint Panel
  (FDA Advisory Committee 2006.1.24)
FDA Joint Advisory Committee recommends approval of orlistat 60 MG capsules for over-the-counter use
  (GSK 2006.1.23)  

 このゼニカルは、膵リパーゼの活性を阻害することにより、中性脂肪やコレステロールの腸管からの吸収を抑制、食事中の脂質を糞便中に排出することで抗肥満作用を示すとされ、米国では1999年より、ロシュ社が処方せん薬として発売、アボット社のメリディア(Meridia 一般名:sibutramine)とともに広く使われています。(GSK社によれば、世界でも145カ国2200万以上の人が使用)

 しかし、近年医師による処方が260万処方(2000年)から100万処方(2004年)に減少したことから、OTC化による市場拡大の必要がでてきたようです。そこで2004年7月にはグラクソスミスクライン(GSK)社が、ロシュ社よりOTC薬の販売権を取得、2005年6月にFDAにスイッチ品の承認を申請していました。

 GSK社では、ゼニカルの18歳未満への販売方法についての考慮(年齢の確認)するとともに、FDAも販売後も十分モニーターするように勧告していますが、腹痛や脂肪便などの副作用や、シクロスポリンやワルファリン、アミオダロン、脂溶性ビタミンとの相互作用も知られていることから、今回のスイッチ化については消費者団体等からは懸念の声が挙がっています。また、米国におけるOTC薬の販売状況を考えると、濫用の危険性が考えられます。

 一方、ニュージーランドではこのゼニカルは、要薬剤師薬(pharmacist only medicine)に指定され、既にOTCとして販売されています。ニュージーランドのロシュ社のプレスリリースによれば、薬科大学はこのスイッチ化を歓迎し、指定の変更に伴って、 weight-management training courseを完了した900人の薬剤師を送り出すと表明、また薬剤師もこの決定を大いに歓迎し、効果的な weight management counsellingと、減量に取り組む人たちによい結果をもらすようためのトレーニングプログラムをつくり、多くがそれを完了したと伝えています。

 なお発売元のニュージーランドのロシュ社は、専用のHPを設けて情報を提供しています。
      Xenical(Home Page) http://www.xenical.co.nz/

 ネットなどをみるとこのゼニカルは、日本でも個人輸入の形で使用されるなど、かなり知られているようです。OTC化となれば、今後はさまざまな形で今まで以上に日本にも流入する可能性があり、私たちも関心を持つ必要があるでしょう。日本では中外製薬が去年まで、治験薬名「R212」で開発をすすめていましたが、臨床第?層試験の困難さから開発を断念、2005年4月4日のプレスリリースで開発中止を発表しています。日本での発売は現時点では未定です。

資料:Xenical (consumer Medicine Information)
     http://www.medsafe.govt.nz/consumers/cmi/x/Xenical.htm
    PDR Drug information for Xenical Capsules(Drugs.com)
     http://www.drugs.com/pdr/Xenical_Capsules.html

参考:FDA panel okays Glaxo’s OTC weight loss drug Alli
    (Foodconsumer org. 2006.1.24)
 http://www.foodconsumer.org/777/8/
  FDA_panel_okays_Glaxo_s_OTC_weight_loss_diet_pill_Alli.shtml
    FDA finds risk in GlaxoSmithKline PLC’s Xenical diet pil
    (Foodconsumer org. 2006.1.22)
 http://www.foodconsumer.org/777/8/
  FDA_finds_risk_in_GlaxoSmithKline_PLC_s_Xenical_diet_pill.shtml
A Diet Pill With Some Nasty Drawbacks(Washigntonpost 2006.1.23)
 http://www.washingtonpost.com/
  wp-dyn/content/article/2006/01/23/AR2006012301270.html
    Xenical available from pharmacists(Scoop 2005.3.11)
    (ニュージーランドロシュ社のプレスリリース)
      http://www.scoop.co.nz/stories/GE0503/S00049.htm    
  上野浩晶、中里雅光:肥満症治療薬, 日本薬剤師会雑誌(57),1185-1189(2005)


2006年01月24日 23:00 投稿

Comments are closed.