アイルランド保健省は18日、薬剤師が特定の病気について処方できるようにするcommon conditions service 等を盛り込んだ Community Pharmacy Agreement 2025(コミュニティ薬局協定2025) を発表しています。
【アイランド保健省 2025.09.18】
Minister for Health publishes Community Pharmacy Agreement 2025
https://www.gov.ie/en/department-of-health/press-releases/minister-for-health-publishes-community-pharmacy-agreement-2025/
この協定は、薬局サービスの拡充に向けた取り組みを支援し、当該分野への新たな投資を提供するとともに、費用対効果と近代化、デジタル改革を推進するもので、これにより、安全で公平かつ効率的な医療の提供を支援し、構造化された連携、持続可能な資金調達、統合されたサービス提供を通じて、地域薬剤師が国の保健医療上の優先課題に貢献するための体制強化を図られるとしています。
Community Pharmacy Agreement 2025(コミュニティ薬局協定2025)
https://assets.gov.ie/static/documents/9903d88b/Community_Pharmacy_Agreement_2025.pdf
協定では、「地域薬局は、患者の安全を守り、医療システムの他の部分への不必要な負担を軽減し、懸念事項に可能な限り早期に対処する上で極めて重要な役割を果たしている。この幅広い役割は、アイルランドの医療サービスの持続可能性にとって依然として不可欠である」として、次のような取り組みに期待してます
1.Common Conditions Service(CCS)
地域薬剤師が地域薬局において、一般的でしばしば自然治癒する疾患に対する助言と治療を提供することを可能にします。
これは、薬局の役割拡大を支援する専門家タスクフォース(Expert Taskforce)の提言(→TOPICS 2025.06.07)を受けて行われているもので、本サービスにより、地域薬剤師はセルフケア指導、安全確認(セーフティネット)、および適切な場合には特定の市販薬(OTC医薬品)の提供ならびに確立されたプロトコルに基づく処方箋医薬品(POMs)の処方を通じて、以下の一般的な疾患を管理できるようになります。
- アレルギー性鼻炎
- 口唇ヘルペス
- 結膜炎
- 膿痂疹
- 口腔カンジダ症
- 帯状疱疹
- 単純性尿路感染症/膀胱炎
- 外陰腟カンジダ症
2.BowelScreen: The National Bowel Screening Programme
薬局は年齢に基づいてBowelScreenの対象となる患者を特定し、その人をプログラムに参加するよう招待し、プログラムに登録し、スクリーニングの受診率向上を目的としてFIT(便免疫化学検査)キットを注文できるようになります
3.Sexual Health Services
地域薬剤師は既に緊急避妊薬の提供において中核的かつ確立された役割を担っており、アイルランド全土の人々がタイムリーかつ公平にアクセスできるよう確保しています。
このサービスは、緊急の性健康ニーズに対応する地域薬局のアクセシビリティ、専門性、迅速性を実証しており、今や医療サービスにおける信頼できる一部として確固たる地位を築いている。
この基盤を踏まえ、地域薬局はより広範なSexual Health Servicesへの貢献を拡大する好位置にあります。
既に継続的な避妊ニーズへの相談が行われており、性感染症(STI)検査の紹介や、必要に応じて性的暴行被害者支援・その他の保護サービスへの連携も含まれます。(→TOPICS 2025.04.30)
この中核的サービス提供を基盤に、アクセス可能な支援体制を構築する機会があります。
・全国コンドーム流通サービス
望まない妊娠、HIV、または性感染症のリスクが高い可能性のある集団に直接対応するサービス機関に対し、コンドームと潤滑剤の⼩袋を無料で配布
・避妊サービス
地域の薬剤師は患者と臨床相談を行うことができ、適切な場合には、国が策定したプロトコルと規制に沿って、短期作用型の可逆的避妊薬の処方を継続することができる(37.5ユーロ=約6,520円)
・国家性保健戦略(National Sexual Health Strategy)との整合性(→TOPICS 2025.07.08)
4.予防接種サービス
インフルエンザとCOVID‑19のワクチン接種プログラムでは、現在、コミュニティ薬剤師が3回に1回の割合でワクチン接種を⾏っています
- インフルエンザワクチン接種率75%の目標達成に向けて取り組む
- COVID‑19ワクチンおよび肺炎球菌多糖体ワクチン(PPV23)の接種促進
- 妊婦やその他のリスクのあるグループ、脆弱なグループにおけるワクチン接種の推進。
またこの協定では、医薬品の緊急投与、薬剤師への研修、医薬品不足への対策、医薬品の最適化なども含まれています。
さらに、政府のデジタル医療計画の実施を確保するため、州と地域薬局間の連携枠組みを定めています。
これには、全国電子処方箋プログラム、共有ケア記録、HSEアプリ、電子健康記録などの関連デジタル改革・取り組みへの参加が含まれます。
今回の協定について、IPU(Irish Pharmacy Union)は、「この協定は、地域薬局と私たちがサービスを提供する患者にとって大きな前進となります。長らく待たれていた投資をもたらし、薬剤師の重要な専門知識を認め、国内のあらゆるコミュニティにおける新たなサービスとサービスの拡充への道を開くものです」と歓迎の意を述べています。
Irish Pharmacy Union Welcomes Publication of the Community Pharmacy Agreement 2025
(IPU 20005.09.18)
https://ipu.ie/communication/irish-pharmacy-union-welcomes-publication-of-the-community-pharmacy-agreement-2025/
参考:
Pharmacists to begin prescribing ‘from late 2025 into early 2026’
(Irish Medical Times 2025.09.19)
https://www.imt.ie/news/pharmacists-to-begin-prescribing-from-late-2025-into-early-2026-19-09-2025/
関連情報:TOPICS
2025.07.08 国家性保健戦略2025-2035(アイルランド)
2025.06.07 薬局サービスの将来に関する専門家タスクフォースの提言(アイルランド)
2025.04.30 地域薬局はDV被害者の相談場所(欧州)
2025年09月19日 18:11 投稿