Tポイントサービスに関する要望書(薬害オン会議)

 TOPICS 2012.07.17 で、さまざまなコメントがあったドラッグストアのTポイントサービスについてですが、 薬害オンブズパースン会議が20日、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)、医薬品販売業者(ドラッグストア)としてポイントプログラム参加企業等に対し、医薬品購入歴情報の抹消および加盟店契約自体の解消などを求める要望書を提出しています。(WEB記事では“末梢”になっているが、要望書PDFでは“抹消”になっているので誤変換だと思う)

「Tポイントサービスに関する要望書」を提出
(薬害オンブズパースン会議 2012.11.20)
http://www.yakugai.gr.jp/topics/topic.php?id=822
http://www.yakugai.gr.jp/topics/file/Tpoint_service_ni_kansuru_youbousho.pdf

 同会議では、Tポイントサービスは、個人情報保護法(23条1項)に抵触し、また刑法(134条、秘密漏示罪)に抵触する可能性があるとして、CCCおよび医薬品販売業者(ウェルシア関東、寺島薬局、ユタカファーマシー、大屋、JR九州ドラッグイレブン)に対しては、医薬品購入歴情報の抹消および加盟店契約自体の解消等を、各担当大臣に対してはCCCおよび医薬品販売業者たる加盟店がかかる情報抹消と加盟店契約解消等を行うよう勧告・命令・指導するよう求めています。

個人情報保護法
第四章 個人情報取扱事業者の義務等
第一節 個人情報取扱事業者の義務

(第三者提供の制限)
第二十三条  個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
一  法令に基づく場合
二  人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
三  公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
四  国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
2  個人情報取扱事業者は、第三者に提供される個人データについて、本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止することとしている場合であって、次に掲げる事項について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているときは、前項の規定にかかわらず、当該個人データを第三者に提供することができる。
一  第三者への提供を利用目的とすること。
二  第三者に提供される個人データの項目
三  第三者への提供の手段又は方法
四  本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止すること。
3  個人情報取扱事業者は、前項第二号又は第三号に掲げる事項を変更する場合は、変更する内容について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置かなければならない。
4  次に掲げる場合において、当該個人データの提供を受ける者は、前三項の規定の適用については、第三者に該当しないものとする。
一  個人情報取扱事業者が利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合
二  合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合
三  個人データを特定の者との間で共同して利用する場合であって、その旨並びに共同して利用される個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的及び当該個人データの管理について責任を有する者の氏名又は名称について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているとき。
5  個人情報取扱事業者は、前項第三号に規定する利用する者の利用目的又は個人データの管理について責任を有する者の氏名若しくは名称を変更する場合は、変更する内容について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置かなければならない。

(刑法)
第13章 秘密を侵す罪

(秘密漏示)第134条
医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

 同会議では、医薬品の購入歴は刑法134条の規定する秘密に当たると解釈、また会員契約締結時に未だ加盟店契約を締結しておらず、特定もできていない加盟店に医薬品情報を提供することについての同意は認めがたいとして個人保護法に違反する可能性がある解釈しています。

 7月17日の朝日新聞のコピペ
 http://blog.livedoor.jp/yoshitaka1215/archives/2432202.html

 一方で、現時点では法的には問題がないとの意見も。(実際に顧客や消費者がそれらの情報を取得されてしまうことに対してどのような感情を抱くのか、顧客や消費者の視点に立ちかえって改めて検討する必要があるとはしていますが)

ライフログ
(第3回:最近の報道(1)~Tポイント報道のポイント~)
(第4回:最近の報道(2)~Tポイントによるライフログ取得の適法性~)
(第5回:ライフログの適切な取扱方法)
(フランテック法律事務所 2012.08.06、08.07、08.08)
http://www.frantech.biz/article/14487743.html
http://www.frantech.biz/article/14487783.html
http://www.frantech.biz/article/14487787.html

上記よれば米国では下記のような事例があったそうです。(コピペすみません)

2012年1月頃、アメリカの大手ディスカウント百貨店チェーンが、女子高生宅に対して、ゆりかご等の妊婦を対象としたクーポンを送ったところ、これを見た女子高生の父親が、「娘に妊娠することを勧めているのか!!」と激怒して、このチェーンに対してクレームを出したという事例があります。 

この百貨店チェーンは、女子高生の妊娠検査薬の購入履歴(ライフログ)から、その女子高生が妊娠していると推測し、マーケティングの一環(行動ターゲティング広告)として、その女子高生に対してゆりかご等の妊婦を対象としたクーポン送付していました。 

このアメリカの事例は、このチェーンが女子高生の購入履歴(ライフログ)から推測した通り、その女子高生は実際に妊娠していたことから、父親が後日そのチェーンに謝罪したことで終わったようです。

 日本では同じような使われ方がないとも言えませんよね。

 ちょっと私には難しいけど、上記関連で下記の総説もヒットしました。

ライフログの定義と法的責任
個人の行動履歴を営利目的で利用することの妥当性
(情報管理 53(6) p295-3010,2010)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/53/6/53_6_295/_pdf

 また、法解釈をめぐって議論となりそうですね。

関連情報:TOPICS
 2012.07.17 OTCの購入履歴は業務上知りえた秘密に該当するか?


2012年11月20日 22:21 投稿

コメントが2つあります

  1. 医薬品という生命関連の特殊商材は個人情報の機密性が尊重されなければなりません。

    それを企業が営利目的に利用することは社会的にも、法律的裏付けからも許されないことです。

    薬害オンの要望書は先生から教えて頂いたように、優秀な弁護士さんの手によって、完璧なまでに仕上げられています。

    法律にも疎い私ですが、個人情報の保護と漏洩問題、Tカードにおける医薬品顧客の利害、Tカード企業の医薬品顧客への扱い方など。法律的解釈に基づいて、Tカードを巡る利用者と業者のあるべき姿を提言していくことはとても大切だと思いました。

    Tカードの利用者も、それが自分たちにとってどういうメリット・デメリットがあるのか、しっかりと把握する必要があります。

    その自覚をしっかり持った上で、健全なTカード利用者にならなければなりません。

    でも、企業というのもはいろんな手段をこうじて、営利目的を追求したがるものです。

    ただ、社会常識に照らした上で、健全なる営利追求に努力してもらいたいものです。

    この薬害オンの設立(薬害に関して・・・。)の趣旨や活動目的から、このTカード問題を取り上げて要望書に纏められたことの理由がちょっとわからないのですが・・・。

    Tカードの要望書は素晴らしいと思いましたが、下記の薬害オンの目的を踏まえた一文が、その中に盛り込まれていたでしょうか。

    例えば、Tカードの安易な拡がりは利用者の健康関連商品の過度な販売促進の押しつけになり、健康や病気の被害拡大の原因にもなりかねない。

    その懸念を薬害オンとしては軽視できない問題として、捉えています。まあ、弁護士さんなら、もっと、素晴らしい文章表現されると思いますが。

    ※薬害オンの目的
    当会議は、医薬品等に起因する容認できない健康被害の発生、拡大等(以下「薬害」という)を防止することを目的とする。

  2. アポネット 小嶋

    NHKが異例の記事配信です。

    利用者購入の医薬品データ収集 懸念の声
    (NHK NEWS WEB 2012.11.24)
     http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121124/k10013720241000.html

    CCCでは、「規約に基づき、同意を得て情報を提供していただいていると理解しており、データも適切に運用している。個人が分からない形で統計的に処理しており、こうした運用をしていることをしっかり説明していきたい」と答えたそうです。