OTC医薬品の活用を検討する米FDA公聴会(続報)

日本での報道は現時点ではほとんどないということもあり、TOPICS 2012.03.23 の話題については多くの方にご興味を頂きました。

まとまった時間がとれたので、その後の反応はどうかとググったところ、結構記事とかが出ていました。

FDA Mulls Expanded Universe of Nonprescription Drugs
(AJHP News 2012.04.13)
http://www.ashp.org/menu/News/PharmacyNews/NewsArticle.aspx?id=3708

「本当に薬剤師が医師に受診をすすめるのか」と疑問を投げかけたパネリストに、CDTMがよく知られていないのではないかと注文。また、報酬についても言及。最後の方では医師会などの反対意見を紹介。(米国医療薬剤師会=病院薬剤師会のニュース)

FDA debates expansion of switch paradigm
(Drug Store News 2012.04.13)
http://www.drugstorenews.com/article/fda-debates-expansion-switch-paradigm

テクノロジーの活用の可能性について言及(下記スライドの下の方)。kioskというシステムの活用により、患者との対話を増やしたり、栄養士への橋渡しをする care protocol というのがあるらしい。

Caution Urged in Moving More Drugs OTC
(ACEP NEWS 2012.03.26)
http://www.acepnews.com/index.php?id=514&tx_ttnews%5Btt_news%5D=1189&cHash=f0932ebfac

救急医療の学会誌のニュース。スピーカーの発言をいろいろ紹介している。

How the Government Plans to Lower Cost by Eliminating Doctors and Shifting Costs to Patients
(Cure talk 2012.04.16)
http://trialx.com/curetalk/2012/04/how-the-government-plans-to-lower-cost-by-eliminating-doctors-and-shifting-costs-to-patients/

Safe Use Conditions proposed by FDA may re-open door for switch in US: Has the OTC Drug Facts Label fallen victim to the Peter Principle?
SelfCare 2012;3(2):19-20 SelfCare 誌の論説)
http://www.selfcarejournal.com/view.article.php?id=10072

さらに、改めてFDAのウェブサイトにアクセスしたところ、新たにFDAのコメントと公聴会で使われた資料・スライドが掲載されていました。

まず米FDAでは、公聴会の2日目にあたる23日付で下記のようなコメントを掲載しています。並々ならぬ明確な取り組み姿勢を感じます。(訳が下手なのはお許しください。解釈が違ったら、ご指摘ください。)

FDA Considers Expanding Definition of Nonprescription Drugs
New approach could increase availability of over-the-counter medicines
http://www.fda.gov/Drugs/ResourcesForYou/SpecialFeatures/ucm297128.htm

  • Getting medicines into the hands of consumers has become troublesome over the last few years.
    医薬品を消費者の手に入れることにういて、この2、3年で多くの問題が生じてきた
  • Research shows that for a variety of reasons, 20 percent of patients with prescriptions do not get them filled.
    理由はさまざまあるが、処方を受けた患者の20%が調剤を受けないという実態がある。
  • In addition, the time or cost required visiting a doctor to receive a prescription or refill often stops patients.
    そのうえ、処方を受けるために受診するコストや時間がかかったり、しばしばリフィルをやめる患者がいる。
  • The Food and Drug Administration thinks that some of these doctor visits can be eliminated. It is exploring ways to make drugs for commonconditions available as nonprescription products.
    FDAでは受診を避けている患者がいると考えていて、ありふれた健康状態に対する非処方せん製品として利用ができないかどうか検討している。
  • Under this paradigm, the agency would approve drugs — that would otherwise require a prescription — for over-the-counter (OTC) distribution, if certain conditions are followed.
    このパラダイムの下で、FDAでは特定の健康状態向けに処方を必要とするような薬をオーバー・ザ・カウンターで供給する医薬品が承認される。
  • “OTC drugs have had great success in providing consumers with excellent self-care options.
    “OTC医薬品は、セルフ・ケアにおける優れたオプションとして消費者を提供され実績がある。

 

  • To ensure safe and appropriate use, special conditions would apply to types of nonprescription products.
    安全確実で適切な使用、特別な健康状態に対しては、非処方せん製品のタイプもあてはまる。
  • For example, before getting a medication, you might have to talk with a pharmacist, or need to have a diagnostic test.
    それには、薬を購入するにあたっては、あなたは薬剤師と相談をしたり、診断検査を持つ必要がある。
  • In other cases, you might have to visit a physician to obtain the original prescription, but not to get refills.
    またこの結果、処方医の下を訪ねる必要となったり、リフィルを受けられない場合もある。
  • FDA is also considering whether some drugs could be a prescription drug and a nonprescription drug with conditions of safe use.
    FDAは、一部の薬について、安全確実な使用が可能なものについて、非処方せん薬にすることも検討している。
  • Various technologies could support this model.
    さまざまなテクノロジーは、この新しい販売モデルをサポートすることができる。

また、当日のスピーカーが用いた資料(発表原稿)・スライドもアップされています。(とりあえず可能なものをリンクのみ。スライドがないものもあるようです。内容の確認次第追記予定。確認の作業は結構大変だった)

regulations.gov(スライド掲載ページ)
http://www.regulations.gov/#!documentDetail;D=FDA-2012-N-0171-0015

団体名(公聴会発言順) 当日
資料
概要、関連資料など
National Association of Chain Drug Stores (NACDS)
American Pharmacists Association (APhA) slide 患者のアクセスとpublic health の向上に貢献するとしたメッセージの他、全米50州の175,000人の薬剤師によるインフルエンザのワクチン接種によりpublic health に貢献していることをアピール、他の医療専門職との共働が可能だとした。(→statement 2012.03.22
Consumer Healthcare Products Association (CHPA) oral
slides
OTC医薬品の活用で、1,020億ドル(受診のための費用が770億ドル、医薬品に250億ドル)の医療費の節減に貢献できるとした上で、これまでのスイッチの実績を強調。また、近年OTC医薬品の需要は高まっているとして、最新のテクノロジーを活用すれば新たなスイッチも可能とした。
(→statement 2012.03.22
GlaxoSmithKline Consumer Healthcare (GSK)
Healthcare Distribution Management Association (HDMA) slides 流通の立場から発言
American Medical Association (AMA) oral 高血圧、高脂血症、喘息、偏頭痛などを自己診断することに懸念を示す一方、新しいOTC医薬品が導入されてもCDTMなどを通じてにより、患者・医師・薬剤師の関係強化を図りたいとした(→press release 2012.03.22
National Community Pharmacists Association (NCPA) oral 帯状疱疹や口唇ヘルペスのための抗ウイルス薬、喘息発作時の吸入薬、軽度やけどの軟膏剤、副鼻腔炎に対するステロイド点鼻薬、抗ヒスタミン点眼液、アナフィラキシーのエピペンのスイッチが生活者に利益をもたらす(薬剤師による介入も必要)とした他、安全使用のために薬局のみの販売とすること、販売する際のアルゴリズムを確立すること、薬剤師サービスへの報酬も必要だとした。(→statement 2012.03.22
National Association of Boards of Pharmacy (NABP) oral
American Society of Health-System Pharmacists(ASHP) slides
American Academy of Nurse Practitioners oral
Academy of Managed Care Pharmacy (AMCP) slides
The Self Care Collaboration slides
American College of Allergy Asthma and Immunology oral
Allergy and Asthma Network Mothers of Asthmatics slides
Accreditation Council for Pharmacy Education (ACPE) slides
Philadelphia College of Pharmacy
Adjunct Assistant Professor, University of Utah School of Medicine slides
Concentrics Research, LLC slides
Patient Safety and Clinical Pharmacy Services Collaborative (PSPC) Alliance slides
Harm Reduction Coalition slides
The Foundation for HealthSMART Consumers slides
Food Allergy and Anaphylaxis Network (FAAN) slides
Epidemiology, Obstetrics, Gynecology, and Reproductive Services slides
Reproductive Health Technologies Project oral
Ibis Reproductive Health slides
Francesco International slides
SoloHealth Inc. slides
LearnSomething Inc. slides
SMARTcare, Inc. slides
Farmacia Electronica, Inc. slides

2日間にわたる公聴会では、麻薬中毒者向けのナロキソンをスイッチして欲しいとか、経口避妊薬をスイッチして欲しいなどの声や、食物アレルギーや喘息の人向けのスイッチの問題、テクノロジーの活用事例など実にいろいろな発言があったようです。(避妊薬に関する発言に関する記事もそういえば結構出ていた)

また患者電子記録へのアクセスなども今後議論の遡上に上がるような雰囲気です。

さて日本ですが、今後のスイッチへの試金石とも言われているエパデールのスイッチについて、5月にも開催される一般用医薬品部会で結論が出るのではないかとの報道があります。(RISFAXによれば、頑なにスイッチに反対する医師会の委員が今回の選挙で留任したからおそらく無理らしい)

もし頓挫したら、厚労省はいったんFDAのようなこういった公聴会を開催したり、セルフメデフィケーション推進するための新たな検討会(どのような視点でスイッチさせるかといった内容で)を設けるなどをしないと、米国のような明るい未来はないと思います。

関連情報:TOPICS
2012.03.23 OTCの活用を検討する注目の米FDA公聴会が始まる
2012.03.01 OTCを活用した薬剤師の新しい役割を検討へ(米FDA)


2012年04月23日 00:22 投稿

コメントが4つあります

  1.  Kioskは、コンビニの電子端末と同様なものと考えて良いかと思います。 米国の入国管理の窓口では、日本の機械化窓口と同様なものをKioskと称しています。 他の記述と合わせると、ネット上でのロジック(?)を用いて、薬剤師が行う問診と同様の行為をセルフで行わせる事を期待しているように思われます。
     また、従来RxだったものをOTCに切り替えるというよりは、日本と同様に医療用医薬品と一般用医薬品の2つの承認が併存する事が起こるとしているものと思われます。 つまり、2007年に挫折した「第三の区分」創設ではなく、Rxであるのだけれども、一定の条件を満たせば処方せん無しに『薬剤師の判断』で交付できるとするもの(であろう)と、期待半分で読んでいました。

  2. アポネット 小嶋

    kiosk についての説明ありがとうございます。

    私もちょっとググってみます。

  3. アポネット 小嶋

    上記スライド一覧の下から4番目のSoloHealth Inc.のスライドが、kioskのイメージみたいですね。

    血圧も測れるようになった端末で、ここまでいくと販売時に薬剤師は必要なのかと思ってしまいます。

    また、下から6番目のIbis Reproductive Health のスライドを見ると、kiosk を経口避妊薬の販売で可能性だとする発言があったようですね。

    さらに、下から8番目のEpidemiology, Obstetrics, Gynecology, and Reproductive Services のスライドを見ると実証研究も行われているようですね。

    WEBでは、こんな記事も

    Over-the-Counter Birth Control Pills Could Come to a Kiosk Near You
    (Tressugar 2012.03.23)
    http://www.tressugar.com/Over–Counter-Birth-Control-22345394

  4. アポネット 小嶋

    調剤と情報の5月号の連載記事“OTC医薬品のトピックス”で、日本OTC医薬品協会顧問の西沢元仁氏が、「アメリカの新しい動き」のタイトルで関連記事を書いています。(まだ読んでいなかった)