EMA、ピオグリタゾンはベネフィットがリスクを上回る(Update)

 EMA(欧州医薬品庁)は21日、ピオグリタゾン(アクトス他)製剤について、膀胱がんリスク増が見られるものの、ピオグリタゾンで利益を得る一部の患者があるとして、使用制限をすることは可能でなく、治療中の患者に対してはベネフィットがリスクを上回るとしたCHMP(ヒト医薬品委員会)の結論を発表しています。

European Medicines Agency recommends new contra-indications and warnings for pioglitazone to reduce small increased risk of bladder cancer
(EMA Press Relesase 2011.07.21)

 Q&Aによれば、CHMPはピオグリタゾンと膀胱癌のリスクに関するすべての利用できるデータをレビューし、専門の委員会においても、患者の代表を含めた糖尿病の専門家の委員からの意見を聞いたそうです。その結果、CHMPとして膀胱がんリスクが若干高まると結論づけた一方、他治療によって十分に治療されることができない一部の患者にとってはピオグリタゾンから利益が得られるいとして、ピオグリタゾンによって効果が認められる患者においては、ベネフィットがリスクを上回ると結論づけています。

Questions and answers on the review of pioglitazone-containing medicines (Actos, Glustin, Competact, Glubrava and Tandemact)  
 (EMA 2011.07.21)

 そのうえで、処方医に対しては、次のような勧告を行っています。

  • ピオグリタゾンは効果が認められる患者についてはベネフィットがリスクを上回るが、膀胱がんリスクを減らすために特定な対策が必要であることも留意すべきである
  • 但し、膀胱がん患者(既往歴も含む)や尿検査での潜血?などまだ血尿が認められているのにもかかわらずチェックを行っていない患者については中止する必要がある。
  • 処方医は、3~6ヵ月ごとにピオグリタゾンによる治療について再検討するべきで、十分な利益が認められない患者については投与をやめる。処方医は定期的にレビューを行い患者への利益が維持されることを確認すべきである。
  • 処方医は、ピオグリタゾンによる治療を開始する前に、年齢、喫煙、特定の化学薬品などへの暴露など、膀胱がんの危険因子を考慮するべきである。
  • 高齢者に対し、ピオグリタゾンによる治療を開始する場合は、最も低用量で始めるべきである。
  • 処方医は、更新された医薬品情報に従ってピオグリタゾン製剤を使うべきである。

また、患者に対しても次のような助言を行っています。

  • 血尿、排尿時の痛み、頻尿など膀胱関連の症状を感じたときはすぐに医師に報告して下さい。
  • 現在、ピオグリタゾン製剤を服用中の方は次回受診時に医師よって治療の評価が行われます。どんな質問でも医師に尋ねてください。

Actos:Product Information as approved by the CHMP on 21 July 2011, pending endorsement by the European Commission
 (アクトスの更新された製品情報)

 今回の発表を受け、武田薬品工業は「『ピオグリタゾンは2型糖尿病患者の治療選択肢として有用であり、膀胱癌の発症リスクにわずかな増加が見られるものの、添付文書に、新たな投与禁忌、使用上の注意、定期的な安全性と有効性の確認を追記し、適切な患者さんを投与対象とすることでそのリスクを軽減できる』との結論に達した」と述べるとともに、「今後、EMAの措置が欧州委員会により承認され次第、当社は、EMAと協力し、欧州連合加盟各国において、患者さんや医療関係者の皆さんに今回の変更に関わる情報提供を実施するとともに、本剤が最新の科学的知見に基づいて使用されるよう全力で取り組んでまいります。」とのコメントを発表しています。

欧州医薬品庁によるピオグリタゾンの添付文書の変更推奨について
(武田薬品工業株式会社ニュースリリース 2011年7月22日)
http://www.takeda.co.jp/press/article_45116.html

 添付文書を変更したうえで、販売が継続されるということになりそうですが、定期的レビューとはどのように行うのでしょうね。

 北米や欧州各国の反応が出たら、紹介したいと思います。

関連情報:TOPICS
  2011.06.24 EMA、ピオグリタゾンの評価は7月まで結論を延期

参考:
武田薬「アクトス」、効用ががん発生リスク上回る-欧州医薬品庁
(Blomberg 日本版 7月22日)
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=agKhWhtX7IWc
武田薬の糖尿病治療薬、膀胱がんリスク警告表示すべき=欧州医薬品庁
(ロイター 日本版 7月22日)
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-22312920110721

関連記事:
ミクスOnline 7月22日
http://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/41131/Default.aspx
医療介護CBニュース 7月22日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/35068.html

7月22日 13:35更新 15:25リンク追加


2011年07月22日 11:57 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    PMDAウェブサイトにメーカー発出の文書を掲載しています。

    欧州医薬品庁によるピオグリタゾンの添付文書の変更推奨について
    (武田薬品工業株式会社2011年7月22日)

    医療関係者向け
    http://www.info.pmda.go.jp/riscommu/PDF/riscommu110725_m4.pdf
    患者向け
    http://www.info.pmda.go.jp/riscommu/PDF/riscommu110725_p4.pdf

    メーカー発出の文書を掲載することも必要ですが、注目されていたEMAの見解(プレスリリース)の翻訳を掲載しないのはなぜでしょう? 

    3~6か月ごとに再検討することを勧奨しているということは、日本よりは厳しい対応のはずです。(後で海外公的機関 医薬品安全性情報Vol.9 No.16に日本語訳は掲載されると思うけど)