心筋梗塞後のNSAIDsの使用と再発リスク

 心臓病の既往歴のある患者さんへのNSAIDsの使用については、NSAIDsの種類にかかわらず心臓血管病のリスクがあるとして特に長期使用については慎重使用が求められていますが、Circulation 誌のオンライン版に短期使用でもリスクが高まるとした研究報告が行われています。

Duration of Treatment With Nonsteroidal Anti-Inflammatory Drugs and Impact on Risk of Death and Recurrent Myocardial Infarction in Patients With Prior Myocardial Infarction
Circulation Published Online on May 9, 2011)
http://circ.ahajournals.org/cgi/content/abstract/CIRCULATIONAHA.110.004671v1
http://circ.ahajournals.org/cgi/reprint/CIRCULATIONAHA.110.004671v1.pdf

 この研究は、1997~2006年に心筋梗塞(MI:myocardial infarction)で入院して、無事退院したデンマークの83,675人の患者を対象に追跡調査を行ったもので、NSAIDsの使用とMIの再発(死亡も含む)との関連を調べています。

 その結果、このうちの35,257人(42.1%)が再発、これをNSAIDsを使用の有無(42.3%が何らかのNSAIDsを使用)で比較したところ、NSAIDsを使用した群では再発リスクが1.45倍になったそうです。

 また調査では、ロフェコキシブ(本邦未発売,、米国では販売中止)、セレコキシブ(セレコックス)、イブプロフェン(ブルフェン)、ジクロフェナク(ボルタレン)、ナプロキセン(ナイキサン)、その他のNSAIDsと成分ごと、MI後どのくらいの期間に使用したかでのリスクも算出しています。

 その結果、90日までに使用した場合では1.55倍に高くなったほか、成分ごとではジクロフェナクでのリスクが特に高く、MI後1週間以内に使用した場合には3.26倍に達したそうです。一方ナプロキセンでは有意なリスクの上昇は見られなかったそうです。

 心臓血管病リスクというと、以前はコキシブ系がクローズアップされましたが、この研究ではイブプロフェンの使用でもリスクが高くなっており、心臓疾患へのこれらOTC医薬品(国によってはジクロフェナクもOTC)の使用に留意するよう各紙が呼びかけています。

 研究者らは、これらの結果を踏まえ、心臓血管の安全見地からNSAIDsの長期使用だけではなく、短期使用も制限すべきだとしています。

参考:
After Heart Attack, Certain Painkillers May Raise Risk for Recurrence
(HealthDay 2011.05.09)
http://consumer.healthday.com/Article.asp?AID=652777
Some Painkillers May Be Risky After Heart Attack
(WebMD 2011.05.09)
http://www.webmd.com/heart-disease/news/
20110509/some-painkillers-may-be-risky-after-heart-attack


2011年05月10日 18:55 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    NHS Choices で解説記事が掲載されています。

    Painkillers and risk of heart problems
    (NHS Choices 2011.05.11)
    http://www.nhs.uk/news/2011/05May/Pages/NSAID-painkillers-increased-risk-heart-problems.aspx
    OTCのNSAIDsの使用が含まれない、用量による解析が行われていない点などを指摘していますが、心臓血管病を有する人にNSAIDsがより慎重にしようされるべきということは支持しています。

    こちらのブログでも記事が出ています。

    心筋梗塞既往者におけるNSAIDと死亡・心筋梗塞再発リスク : ボルタレンなどNSAIDs全般の危険性
    (内科開業医のお勉強日記 5月11日)
    http://intmed.exblog.jp/12555266/