ビスホスホネート製剤の添付文書改訂を指示

 厚労省は1日、ビスホスホネート製剤の添付文書について、顎骨壊死・顎骨骨髄炎と非外傷性の大腿骨転子下及び近位大腿骨骨幹部のストレス骨折に関する記載の追記を指示しました。

使用上の注意改訂情報(平成22年6月1日指示分)(PMDAウェブサイト)

 顎骨壊死・顎骨骨髄炎に関する記載([重要な基本的注意]の項)については、下記のように変更するよう指示しています。

「本剤を含むビスホスホネート系薬剤による治療を受けている患者において、投与経路によらず顎骨壊死・顎骨骨髄炎があらわれることがある。報告された症例のほとんどが多くが抜歯等の歯科処置や局所感染に関連して発現しており、また、静脈内投与された癌患者がほとんどであったが、経口投与された骨粗鬆症患者等においても報告されているしているリスク因子としては、悪性腫瘍、化学療法、コルチコステロイド治療、放射線療法、口腔の不衛生、歯科処置の既往等が知られている。
本剤の投与にあたっては、必要に応じて適切な歯科検査を行い、本剤投与中は侵襲的な歯科処置はできる限り避けること。また、患者に対し適切な歯科検査を受け、必要に応じて抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置を投与前に済ませるよう指示するとともに、本剤投与中は、歯科において口腔内管理を定期的に受けるとともに、抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置はできる限り避けるよう指示すること。また、口腔内を清潔に保つことや歯科受診時に本剤の使用を歯科医師に告知するなど、患者に十分な説明を行い、異常が認められた場合には、直ちに歯科・口腔外科に受診するよう注意すること。」

 一方、非外傷性の大腿骨転子下及び近位大腿骨骨幹部のストレス骨折については、

「ビスホスホネート系薬剤を長期使用している患者において、非外傷性の大腿骨転子下及び近位大腿骨骨幹部のストレス骨折が発現したとの報告があるので、X線検査等を実施し、十分に観察しながら慎重に投与すること。この骨折では、X線検査時に骨皮質の肥厚等、特徴的な画像所見がみられ、完全骨折が起こる数週間から数ヶ月前に、罹患部位の前駆痛があるため、そのような場合には適切な処置を行うこと。また、両側性の骨折が生じる可能性があることから、片側で骨折が起きた場合は、他方の大腿骨の画像検査も行うこと。」(内服製剤のみ)

が、[重要な基本的注意]の項に追記されるそうです。

 前者については、次の論文を考慮したようです。

Oral bisphosphonate use and the prevalence of osteonecrosis of the jaw
J Am Dent Assoc, 140(1), 61-66.)
http://jada.ada.org/cgi/content/full/140/1/61

 一方、後者については、3月10日の米FDAのアナウンス(TOPICS 2010.03.11)を受けてのものですが、果たして処方医は、この基本的注意の項に従って、きちんとチェックしてからビスホスホネート製剤を慎重に処方するのでしょうか?

関連情報:TOPICS
  2010.03.11 長期間のビスホスホネート服用と大腿骨の骨折リスク(米国)
  2009.07.17 FRAX、ビスホスホネートと顎骨壊死


2010年06月01日 23:08 投稿

コメントが4つあります

  1. 情報、どうもありがとうございました。
    Twitterにて、紹介させていただきました。
    事後報告、どうぞお許し下さい。
    http://twitter.com/hirosi_m

  2. 参考までに

    http://spell.umin.jp/nangoroku/nangoroku_osteoporosis.html

    ここで指摘されているように 骨折予防や 寝たきり予防のGLを作るべきなのに、骨訴訟症のGLを作ってしまうところが、根本的な姿勢の誤りでしょう。サロゲートエンドポイントの過大評価は禁物です。

  3. アポネット 小嶋

    8月4日開催の平成22年度第1回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会で、過去3年間の顎骨壊死・顎骨骨髄炎関連の副作用報告の状況について公表を行っています。

    資料7-5 ビスホスネート系薬剤による顎骨壊死・顎骨骨髄炎について
    (平成22年度第1回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会)

    成分別に最も多かったのが、ゾレドロン酸水和物(ゾメタ)の290例(317件)で、次いでアレンドロン酸ナトリウム水和物・経口剤(フォサマック・ボナロン)の197例(238件)、リセドロン酸ナトリウム水和物(ベネット・アクトネル)の61例(64件)と続き、経口剤でも報告数が少なくないことがわかります。

    また、使用開始から副作用発生までの期間も示されており、早い場合で使用開始6日で発症したケースがある一方、11年以上経ってから発症したケースもあったそうです。

    厚労省ではこれら報告について、必ずしもビスホスホネート(BP)製剤と顎骨壊死・顎骨骨髄炎との因果関係が明らかになったものではないとしながらも、顎骨壊死・顎骨骨髄炎の副作用件数は、経口のBP製剤においても、注射剤と同程度報告されていること、経口のBP製剤に関して顎骨壊死・顎骨骨髄炎の転帰をたどった報告内容を精査したところ、BP 製剤の投与中に歯科医師がBP製剤の投与を受けていることを知らずに抜歯等の歯科処置等を行った症例や投与中に口腔の衛生管理を怠ったと考えられる症例が見られたなどとして、今回の添付文書の改訂に踏み切ったようです。

    こういった情報は添付文書の改訂指示時に詳しく伝えて欲しかったですね。

  4. アポネット 小嶋

    2010年9月29日公表の医薬品・医療機器等安全性情報271号で添付文書改訂の経緯が記されています。

    ビスホスホネート系薬剤による顎骨壊死・顎骨骨髄炎に係る安全対策に至る検討状況と対策について(厚労省 2010年9月29日掲載)
    http://www1.mhlw.go.jp/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/272-1.pdf