一般用医薬品の通信販売の継続を求める要望書が提出される

 ヤフー、楽天、NPO法人日本オンラインドラッグ協会、医薬品ネット販売推進協議会、 社団法人日本通信販売協会、インターネット先進ユーザーの会は11日、厚労相に楽天が集めたとされる約10万人分の署名とともに連名で、一般用医薬品のインターネット販売継続を求める要望書を提出し、共同で記者会見を行っています。

一般用医薬品の通信販売の継続を求める要望書
   (楽天株式会社ニュースリリース 2008年12月11日)
 http://www.rakuten.co.jp/info/release/2008/1211.html

医薬品ネット販売継続を〜楽天、ヤフー、MIAUらが厚労相に要望書
  (ITMedia News 12月11日)
 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0812/11/news069.html

ヤフーや楽天、「医薬品の通信販売」継続求める要望書を舛添厚労相に提出
  (マイコミジャーナル12月11日)
 http://journal.mycom.co.jp/news/2008/12/11/027/

一般用医薬品のネット通販継続求め要望書−ヤフーなど
  (医療介護CBニュース12月11日)
 http://www.cabrain.net/news/article/newsId/19626.html

 要望書には、別紙で「一般用医薬品の情報提供に関する方針案」が添付されていて、店舗販売・ネット販売それぞれに下記のような情報提供手段としての特徴があるとして、合理的かつ科学的な視点に立った情報が消費者にきちんと届けられるためにはどのような方法が有益なのかを考えていきたいとしています。

店舗販売における情報提供等の特徴
  • 行きつけの店舗での、購入履歴や持病等を熟知した薬剤師との対面のコミュニケーションによる情報提供
  • ネット検索ができない方、個別の補足説明が必要な方への情報提供
  • かかりつけ薬剤師の記憶による大量購入制限
ネット販売における情報提供等の特徴
  • PDF ファイルなどによる購入前の添付文書の閲覧、確認
  • 店舗では聞きづらい医薬品に関する情報の提供
  • 行政庁の安全性情報のリンクによる提供・それに基づく販売停止
  • 購入履歴による大量購入制限
  • 購入履歴による医薬品回収への協力
  • 申込から発送までの時間差を利用してのチェックや送付管理が100% 薬剤師によって実施可能

 今日のIT社会を背景とすれば、彼らの主張は一定の理解は得られることでしょう。しかし、社会的弱者までを引き合いに出してまで、ITが全てを解決するとした主張には違和感を覚えます。

 「店舗では聞きづらい医薬品もある」としていますが、そういった医薬品であればあるほど、誤用などを防止するために、専門家による購入者のそのときの体調や症状、併用薬等の把握などが不可欠です。24時間薬剤師などが張り付いて電話で対応するのであればかまわないとは思いますが、IT技術だけで果たしてこのことが可能となるのでしょうか?

 また、「購入履歴による大量購入制限」も可能としていますが、複数の店舗で購入を行えば何ら意味はありません。購入者情報を共有するのであれば話は別ですが、そんなことはできるはずはありませんよね。咳止め(シロップ)などの濫用を果たして防ぐことができますか? 

 セルフメディケーションとは、全て自己の責任や判断だけで行われるものではありません。医薬品販売時の薬剤師等の存在意義や、「くすりとどうかかわるか」といったことが一般認識として啓蒙されていなかったことも、こういった主張を正当化させているのかもしれません。

 一方、今回の記者会見では、インターネットで一般医薬品を販売する薬局側からの声も紹介されたそうです。

医薬品のネット販売、規制の見直し求め署名10万件
  (INTERNET Watch 12月11日)
   http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/12/11/21830.html

 「病院が漢方外来をやるようになって、客が来なくなった。ネット販売を規制されると、つぶれる薬局が多く出てくるのではないか。ネット社会にふさわしいルールを作ってほしい。」というもので、やはり現場では声なき声が多く存在することを伺わせます。

 やはり生の声や、データを示してはじめて社会から理解を得ることが可能となります。今回、こんな形で現場の声が伝えられてしまったことは、やはり反対を唱える私たちにとっては大きなイメージダウンです。現場の声さえも把握せずに「反対」を主張を続けてきた日薬にとっては大きな痛手となることでしょう。改めて、日薬内ではこの問題への関心の薄さと対応の不十分さを感じざるを得ません。

 このままだと、ネット販売に関する検討会の設置という方向になるのではないかと予感させられます。

関連情報:TOPICS
  2008.12.02 ネット販売がなくなると困るという薬局の声は本当に一つもないのか?
  2008.11.13 楽天、医薬品のネット販売の継続を求めてネット署名を開始
  2008.10.09 ネット販売、規制改革会議の疑問にどう答えるか?


2008年12月11日 19:42 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    関連記事がアップされています。

    MIAU、医薬品のネット販売締め出しは“逆デジタルデバイド”
     (INTERNET Watch 2008.12.11)
      http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/12/11/21839.html

    ITを活用すれば、店舗販売よりも充実した情報提供が行えるなど、ネット販売の優位性ばかりをまた紹介しているのかと思いましたが、記事の後半部分の

    「情報提供ページの画面遷移や文章などの具体的な方法にまで踏み込まないと、ネットでの適切な情報提供について議論することはできない」

    とした、ヤフーCCO兼法務本部長の指摘は的をついていると思いました。

    やはり、現状のネット販売における情報提供の問題点を検証し、具体的な方法のあり方について議論することについては私も賛成です。

  2. アポネット 小嶋

    楽天は26日、同社に寄せられた離島住民・障害者及び障害者の家族の声などを掲載した、一般用医薬品の通信販売の継続を求めるプレスリリースを発表しています。

    一般用医薬品の通信販売の継続に向けて
     (楽天株式会社 ニュースリリース12月26日)
      http://www.rakuten.co.jp/info/release/2008/1226b.html

    離島にお住まいの方や傷害をもった方の声もわからないわけではありませんが・・・・