健康サポート薬局は、いったい誰のため? 現在パブコメ実施中

 すでにご存知かと思いますが、現在、1月1日を期限に、先日報告書としてまとめられた健康サポート薬局の要件について意見募集が行われています。(今回の記事はツイートを引用しています。引用された方には申し訳ありません)

 内容的なものは、「健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会」報告書(→リンク)に沿った内容となっています。

  日医工の報告書をまとめた下記イラストと今回示された、下記に示した要件(骨子)(→リンク)と合わせてみるとわかりやすいです。

健康サポート薬局のあり方について (日医工MPI行政情報)
http://www.nichiiko.co.jp/stu-ge/phplib/s_getdoc_mpi.php?member=&filepath=406kenkousupportyakkyoku-arikata.pdf

1.かかりつけ薬局としての基本的機能 次のいずれにも該当すること。
① 患者が当該薬局においてかかりつけ薬剤師を適切に選択することができるような業務運営体制を整備していること。
② 患者が受診している全ての医療機関を把握し、要指導医薬品及び一般用医薬品(以下「要指導医薬品等」という。)を含めた医薬品を服用している情報等を一元的かつ継続的に把握するよう取り組み、薬剤服用歴の記録を適切に行うこと。
③ 残薬管理及び確実な服用につながる指導を含め、懇切丁寧な服薬指導及び副作用等の状況を実施するよう取り組むこと。
④ 患者に対し、お薬手帳の意義及び役割を説明した上で、その活用を促していること及び一人の患者が複数のお薬手帳を所持している場合には、当該お薬手帳の集約に努めること。
⑤ かかりつけ薬剤師及び薬局を持たない患者に対し、薬剤師が調剤及び医薬品供給等を行う際の薬剤服用歴の管理、疑義照会、服薬指導、残薬管理その他の基本的な役割を周知することに加えて、かかりつけ薬剤師・薬局の意義、役割及び適切な選び方を説明した上で、かかりつけ薬剤師・薬局を選ぶよう促していること。
⑥ 開店時間外であっても、かかりつけ薬剤師が患者からの相談等に対応する体制を整備していること。
⑦ 過去一年間に在宅患者に対する薬学的管理及び指導の実績があること。

⑧ 医療機関に対して、患者の情報に基づいて疑義照会を行い、必要に応じ、副作用その他の服薬情報の提供及びそれに基づく処方の提案に適切に取り組むこと。
⑨ かかりつけ薬剤師・薬局として、地域住民からの要指導医薬品等の使用に関する相談及び健康の維持増進に関する相談に適切に対応した上で、そのやり取りを通じて、必要に応じ医療機関への受診勧奨を行うこと。
⑩ 地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、訪問看護ステーションその他の地域包括ケアの一翼を担う機関における多職種と連携体制を構築していること。

2.国民による主体的な健康の維持増進の支援を実施する上での地域における関係機関との連携体制の構築 次のいずれにも該当すること。
① 利用者から要指導医薬品等に関する相談を含む健康の維持増進に関する相談を受けた場合は、利用者の了解を得た上で、かかりつけ医と連携して状況を確認するなど受診勧奨に適切に取り組むこと。
② 利用者からの健康の維持増進に関する相談に対し、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所及び訪問看護ステーション、健康診断や保健指導の実施機関、市町村保健センターその他行政機関並びに介護予防サービス及び日常生活支援総合事業の実施者その他の連携機関(以下「医療機関その他の連携機関」という。)への紹介に取り組むこと。
③ 地域の一定範囲内で、医療機関その他の連携機関とあらかじめ連携体制を構築した上で、連絡先及び紹介先の一覧表を作成していること。
④ 利用者の同意が得られた場合に、必要な情報を紹介先の医療機関その他の連携機関に文書により提供するよう取り組むこと。
⑤ 地域の医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会、栄養士会、介護支援専門員協会その他の関連団体に連携及び協力した上で、地域の行政機関及び医師会等が実施又は協力する健康の維持増進その他の各種事業等に積極的に参加すること。

3.常駐する薬剤師の資質 要指導医薬品等及び健康食品等の安全かつ適正な使用に関する助言、健康の維持増進に関する相談並びに適切な専門職種又は関係機関への紹介等に関する研修を修了し、一定の実務経験を有する薬剤師が常駐していること。

4.設備 間仕切り等で区切られた相談窓口を設置していること。

5.表示に関する方法等 次のいずれにも該当すること。
① 健康サポート薬局である旨並びに要指導医薬品等及び健康食品等の安全かつ適正な使用に関する助言及び健康の維持増進に関する相談を積極的に行っている旨を当該薬局の外側の見えやすい場所に掲示すること。
② 当該薬局で実施している国民による主体的な健康の維持増進の支援の具体的な内容について、当該薬局において分かりやすく掲示すること。

6.要指導医薬品等の取扱い 次のいずれにも該当すること。
① 要指導医薬品等、衛生材料及び介護用品等について、利用者自らが適切に選択できるよう供給機能及び助言を行う体制を有しており、かつ、その際、かかりつけ医との適切な連携及び受診の妨げとならないよう、適正な運営を行っていること。
② 要指導医薬品等又は健康食品等に関する相談を受けた場合には、利用者の状況並びに当該要指導医薬品等及び健康食品等の特性を十分に踏まえた上で、専門的知識に基づき説明すること。

7. 開店時間の設定 平日の営業日において一定時間以上連続して開局しており、かつ、土曜日又は日曜日のいずれかの曜日には一定時間開局していること。

8.健康相談及び国民による主体的な健康の維持増進の支援の取組 次のいずれにも該当すること。
① 要指導医薬品等及び健康食品等の安全かつ適正な使用に関する助言並びに健康の維持増進に関する相談に対応すること。
② 販売内容及び相談内容(受診勧奨及び患者への紹介の実施内容を含む。)を記録した上で、当該記録を一定期間保存していること。
③ 国民による主体的な健康の維持増進の支援に関する具体的な取組を積極的に実施していること。
④ 地域の薬剤師会等を通じる等により当該薬局における取組を発信すると同時に、必要に応じて、地域の他の薬局の取組を支援していること。
⑤ 国、地方自治体及び医学薬学等に関する学会等が作成する健康の維持増進に関するポスターの掲示又はパンフレットの配布により、啓発活動に協力ししていること

 理想像としては概ね支持できる内容ですが、疑問に感じる箇所もいくつかあります。 まず、上記骨子と日医工さんのイラストをみて感じたことは また、なぜ最初に服薬管理が来るのでしょうか? 確かに下記調査では患者が薬局に求める機能としては最も多い機能に掲げられています。(でも、この調査報告書、WEBでは入手できない)

中医協2015.12.4資料より引用(画像クリックで別ウインドウでリンク先に)

 上記調査は機能なので、こういう質問枝となるのでしょうが、薬局という以上、地域に必要な薬を供給する(販売体制・備蓄体制)機能について明確に示されていない点は大きな問題があります。 実際、必要な医療用医薬品を在庫していなかったり、セルフメディケーションに対応できる必要最小限のOTCを取り扱っていない薬局は少なくないはずです。

 次に、一番気になったのは、過去一年間に在宅患者に対する薬学的管理及び指導の実績があること の部分です。 在宅医療に無縁なビジネス街にあって調剤機能をもち、OTC販売などを行う主にビジネスマンを対象としたドラッグストアは健康サポート機能を有していないと言えるでしょうか? そんなことはありませんよね。

 在宅での服薬管理は海外では多くは看護師や介護スタッフの役割です。施設入所者の服用薬のレビューはあっても、日本のように薬剤師が直接現場に出向くという業務は私が知る限りあまりありません。

ドイツの高齢者施設への薬の供給(吉岡ゆうこ)
(薬学つれづれ見聞録 2012.01.05)
http://www.neophist.co.jp/blog/2012/01/post_20.html

 下記の報告を見ると、セルフメディケーション(軽度の病気への対応)やワクチン接種や生活習慣病などのスクリーニング(賛否はありますが)など、むしろPublic Health への役割にシフトしています。

Paying pharmacists for patient care A systematic review of remunerated pharmacy clinical care services (Can Pharm J. Jul 2014; 147(4): 209–232.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4212445/
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4212445/pdf/10.1177_1715163514536678.pdf
(カナダのほか、米国・欧州・豪州・ニュージランドで行われている、地域薬局で実践されている clinical care services について調べたもので、サービスの内容と行うための要件などがまとめられている)

 薬剤師が直接訪問し、残薬確認などの服用状況、処方の検討を行うことは重要なことだと思いますが、処方日数の調節さえ、医師の了解を得る必要がある状況であれば、どれだけ意味あることなのかと思います。

 さらに、上記で紹介した、薬局の機能に係る実態調査でも、「在宅医療を受けている患者のお家を訪問し、 薬の説明や飲み忘れ等を確認すること」が5.9%である状況を考えると、たとえ少額であっても、高齢者の介護・医療費用負担の上昇を考えると、自己負担を伴う薬剤訪問管理指導の二-ズ(優先度)がどれだけあるのか疑問に感じます。

 批判を覚悟で下記ツイートをしましたが、何人の方からリツイートを頂きました。やはり、在宅の実績を要件に加えることについては、再考すべきと考える方も少なくないと思います。

 現時点では、過去一年間に在宅患者に対する薬学的管理及び指導の実績があることは具体的にどのようなことを指すのか示されていませんが、もし訪問薬剤管理(指導)料の算定実績であるなら、私は反対です。もしこの項目を残す必要があるのであれば、具体的な取り組みの記録を残す(例えば、地域包括支援センターからの要請で残薬対応を行ったなど、他職種への支援も含む)という内容にとどめるべきでしょう。

 次に、どうしても気になるのが、要指導医薬品等、衛生材料及び介護用品等について、利用者自らが適切に選択できるよう供給機能及び助言を行う体制を有しており、かつ、その際、かかりつけ医との適切な連携及び受診の妨げとならないよう、適正な運営を行っていることの部分です。

 健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会(→リンク)での、OTC医薬品を売って欲しくないという医師会委員の意見に配慮するあまり、本来あるべく、生活者へのセルフメディケーションの支援といった面が失われています。

健康情報拠点薬局(仮称)あり方に関する検討会 第5回議事録
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000101009.html

 医療機関から見れば一般用医薬品、OTCを含めて置いてほしくないということがあります。何回も言いますけれども、先週、先々週と地元医師会、医療機関とか関西の方にも行って回ってきたのですが、そこで得た情報からは、調剤の薬局でそういうOTCとか一般用医薬品であるならば、院外処方であっても調剤を出したくない。  ただ、今、法律ではそういうことは言えませんけれども、少なくとも医療機関側としては、そういう薬局に対しては不快感があるということです。

 あと、数ですけれども、最初の話では300品目とか、あるいは2銘柄ぐらい置きたいということですが、それも問題ですし、もしそういうことをされるのだったら一般用医薬品と調剤の会計は、まったく別に分割して欲しいなど、混合診療にならないようにして頂かなければ不公平です。

 セルフメディケーションの支援(軽度の病気へのアドバイス)を薬局は行うべきではなく、医師に相談せよとも読み取れます。しかしこの考え方は、すぐに医療機関にかかることが国民皆保険制の日本においても極端な主張であり、世界的な地域薬局(community Pharmacy)の役割とは大きく反しています。

Role of community pharmacists in patients’ self-care and self-medication
(Integrated Pharmacy Research and Practice Published online 24 Jun 2015)
https://www.dovepress.com/role-of-community-pharmacists-in-patients39-self-care-and-self-medicat-peer-reviewed-fulltext-article-IPRP

 地域薬局には独自の役割があるはずです。医師の下請けではありません。 「その際、かかりつけ医との適切な連携及び受診の妨げとならないよう、適正な運営を行っていること」は削除すべきだと思います。もし、この項目を残すのであれば「健康サポート薬局」という名称自体も疑問です。(「かかりつけ医サポート薬局」ならわかる)

 来年の診療報酬改定の議論を見る限り、健康サポート薬局は、新たな施設基準の要件に置き換わることは間違いなく、これからは、国の開設許可をする薬局の要件というのもダブルスタンダートにしていくということに留意する必要があります。(厚生局が本来すべき施設基準の確認を、保健所の薬事担当に確認させるというのもどうなんだろう)

 かかりつけ薬局のあり方については、さまざまなレポートやツイートがあります

医薬品・医療機器の現状(後編) -患者の残薬問題解消のために、かかりつけ薬局は何をすべきか?
(ニッセイ基礎研究所・基礎研レポート2015.08.03) 
http://www.nli-research.co.jp/report/nlri_report/2015/report150803.html
http://www.nli-research.co.jp/report/nlri_report/2015/report150803.pdf

  私は、医薬分業のメリットを社会にアピールするためだけの「健康サポート薬局」の導入に思えてなりません。

  地域薬局は、地域包括ケアの中だけで存在しているわけではありません。さまざまなスタイルで地域の保健医療に貢献している薬局はたくさんあると思います。

  私には、「健康サポート薬局」を新たな施設基準導入のために、現状でおきているさまざまな問題を十分に検証することなく机上の議論を行い、理想だけを現場に押し付けるためのようにも感じてならないのです。本当にこれでいいのでしょうか?

 パブリックコメント締切は1月1日です。下記から、それぞれの思いで意見をみなさんも出してみませんか?

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則第1条第5項第十号に規定する厚生労働大臣が定める基準に関する意見の募集について
(案の公示日 2015年12月02日 意見・情報受付締切日 2016年01月01日)

関連情報:TOPICS
  2015.09.15 健康づくり支援薬局(仮称)のあり方について(報告書案)
  2015.09.01 一般用医薬品の中分類って?
  2015.08.26 健康づくり支援薬局(仮称)の要件(案)が示される
  2015.07.03 健康づくり支援薬局(仮称)の要件(検討会論点)
  2015.06.19 「かかりつけ薬局」=「健康情報拠点薬局」ではない
  2015.05.27 「患者のための薬局ビジョン」策定の重み
  2015.05.24 厚労省の「かかりつけ薬局」推進の本気度は疑わしい?
  2015.03.11 「医薬分業」公開ディスカッションを前に思う事


2015年12月13日 22:49 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    年末余裕がなく、先ほど、パブコメを提出してきました。

    記事で示した疑問点などをなどをまとめました。

    今日1日が締め切りなので、どんなことでもいいので思いを伝えましょう。

    それにしても、この重要なパフコメが行われていることを、会員に周知させないなんて、日薬はほんとどうかしている。