ヒドロキシジンは少ない量で短期間の使用を(EMA)

 ドンペリドンに続き、使用経験が長い医薬品について注意喚起です。

 EMAのファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC:Pharmacovigilance Risk Assessment Committee)は13日、抗ヒスタミン薬のヒドロキシジン(本邦名;アタラックス)のレビュー結果を発表し、心リズムへの影響を最小にするため、使用にあたって十分留意を求める勧告を行っています。

PRAC recommends new measures to minimise known heart risks of hydroxyzine-containing medicines
(EMA 2015.02.13)
http://www.ema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/news_and_events/news/2015/02/news_detail_002265.jsp&mid=WC0b01ac058004d5c1

 PRACではレビューの結果、リスクは小さいもののQT延長とtorsade de pointesとのはっきりとした関連性があるとして、リスクを最小にするため、次のような点に留意して使用することを勧告しています。

  • 最も最小の有効量で、できるだけ短期間で使用する
  • 1日の最大用量は100mg、40kgまでの子どもでは2mg/kgまでとする
  • 高齢者への使用は勧められない(使用する場合は50mg/日まで)
  • 調律異常がある人、QT延長が知られている薬剤を服用中の患者へ使用は避けなければならない
  • 徐脈傾向の人や低カリウム血症の患者でも注意が必要である

 いろいろPubmedなどで調べたのですが、症例報告は意外とみつかりませんでした。(ググると日本でも和誌への報告がある)

QTprolongation induced by hydroxyzine: a pharmacovigilance case report.
(Eur J Clin Pharmacol. 2015 Jan 28. )
http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00228-014-1804-9

Hydroxyzine-induced supraventricular tachycardia in a nine-year-old child.
(Singapore Med J. 2004 Feb;45(2):90-2.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14985850
http://www.sma.org.sg/smj/4502/4502cr2.pdf

 ちなみに、米FDAに寄せられた副作用情報などをまとめたサイトによれば、ヒドロキシン関連が疑われる不整脈については、FDAが把握した報告が75あったとしています。(日本からの報告も)

Hydrochloride Related Arrhythmia
(Drug Informer)
http://www.druginformer.com/search/side_effect_details/hydroxyzine%20hydrochloride/arrhythmia.html

 下記サイトでは、成分名を入れると有害事象が多い順に出てくる

HYDROXYZINE
http://www.drugcite.com/?q=Hydroxyzine&a=&s=

 ところで、今回の発表の関連で調べて初めて知ったのですが、セチリジンはヒドロキシジンの活性代謝体なんですね。

 そのため、Pubmedで検索すると、ヒロドキシジンでやっても、なぜかセチリジンのQT延長や torsade de pointes のリスクについての論文がヒットします。

Torsades de pointes caused by cetirizine overdose
(Arch Mal Coeur Vaiss. 2005 Feb;98(2):157-61.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15787309

 ただ、今回のEMAでの発表ではセチリジンについては触れられていませんので、たぶん安全性は確立されているものと思われます。(一応留意は必要?)

 さて、日本ではこういった情報どう解釈されるでしょうか?(ドンペリドンは未だスルー)

関連情報:TOPIC
2014.05.11 使用経験が長いからといって監視を怠ってはいけない


2015年02月14日 09:17 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    ようやく日本でも注意喚起のアナウンスがでました。

    使用上の注意改訂情報(平成27年8月6日指示分)
    http://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/revision-of-precautions/0297.html#1
    http://www.pmda.go.jp/files/000206582.pdf

    【措置内容】以下のように使用上の注意を改めること。
    [慎重投与]の項に

     「QT延長のある患者(先天性QT延長症候群等)、QT延長を起こすことが知られている薬剤を投与中の患者、著明な徐脈や低カリウム血症等がある患者」

    を追記し、[副作用]の「重大な副作用」の項に

     「QT延長、心室頻拍(torsades de pointesを含む): QT延長、心室頻拍(torsades de pointesを含む)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。」

    を追記する。

    となっており、併用避けることや用量に関する制限がないなど、EMAよりは弱いものとなっています。

    そういえば、ドンペリドンはどうするんだろう。