使用経験が長いからといって監視を怠ってはいけない

 最近、EMAのファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC:Pharmacovigilance Risk Assessment Committee)では、使用経験が長い医薬品についてのレビュー開始が相次いで発表となっています。

 PRAC関連のニュース一覧(→リンク

 EMAのファーマコビジランスの仕組みは、各国の当局の提案により、PRACで討議しEMAとしての見解をまとめるといった仕組みのようですが、コデインやドンペリドンに続き、アンブロキソール(ムコソルバン他)/ブロムヘキシン(ビソルボン)やヒドロキシジン(アタラックス他)といったものも、安全性についてのレビューが開始されています。

Start of review of ambroxol and bromhexine
 (EMA 2014.04.11) (→リンク) (→和訳
 アナフィラキシーなど重篤な皮膚有害反応

Review of hydroxyzine-containing medicines started
 (EMA 2014.05.08) (→リンク
 不整脈や心臓の電気活動への影響のリスク

 使用経験が長いと、すでに既知の副作用は明らかになっているとして、本邦では添付文書の変更(注意喚起)の頻度は少なくなりがちですが、海外では使用経験の長さに関係なく、常にファーマコビジランスが行われていることがうかがわれます。

 今回の発表について、ほんとうにそうかなあと、レビュー対象となった成分と症状(副作用)でググったり、Pubmedで検索をかけると症例報告がいくつも出てきました。

 またググって初めて知ったのですが、海外(米国)では、米FDAに寄せられた副作用情報を整理し、さらに独自に情報を加わえるなどして、成分と症状で副作用の報告状況などがわかるサイトが存在することを知りました。

DRUG INFORMER
http://www.druginformer.com/search/aers_search

DRUGCITE.com
http://www.drugcite.com/

 例えば、ヒドロキシン関連が疑われる不整脈については、FDAが把握した報告が75あったとしています。(日本からの報告も)

 Hydrochloride Related Arrhythmia
(Drug Informer)
http://www.druginformer.com/search/side_effect_details/hydroxyzine%20hydrochloride/arrhythmia.html

 下記サイトでは、成分名を入れると有害事象が多い順に出てくる

HYDROXYZINE
http://www.drugcite.com/?q=Hydroxyzine&a=&s=

AMBROXOL
http://www.drugcite.com/?q=AMBROXOL&s=&a=

 上記の結果をもって(報告数が多いからといって)、関連性が認められるわけではありませんが、日本でもPMDAが公表しているデータを2次利用して、もう少しわかりやすい情報の発信があれば、さらに副作用報告の収集に弾みがつくのではないかと思いました。(この記事とは直接関係ありませんが、モンテルカストの夜尿症の件(TOPICS 2014.05.06)もそう)

 こういった関連性が疑われる副作用報告をどう解釈するかは当局の仕事ですが、今、目の前の患者さんに起こっている副作用と思われる症状が、使用経験が長い医薬品でも、新たな知見としておこりうるということを痛感させられます。

関連情報:
 2014.05.10 海外公的機関 医薬品安全性情報Vol.12 No.10
 2014.05.02 ドンペリドンは厳しい使用制限へ(EMA)


2014年05月11日 11:29 投稿

Comments are closed.