一般名処方考

 4月の診療報酬改定で一般名処方が導入されました。私の所では、まだ多くの処方を見ていませんが、近隣の医療機関が積極的なところほど、大変な苦労があったかと思います。

 だいぶ落ち着いて来ていますが、ツイッター(→リンク)ではさまざまなつぶやきがあり、問題や課題なども浮かび上がります。

 今回、想定を超えて混乱となってしまったのは、下記のような問題が対応できていないままに、4月に突入してしまったためではないかと考えています。

1.一般名がきちんと定義されていなかった

 厚労省では、事前に一般名処方マスタ(→リンク)を示していましたが、実際にはそれ以外の医薬品も一般名処方として発行されていたようです。

 私の所でも、アスピリン錠100mgやセンノシド錠12mgといった処方があり、医科のシステムは見事に対応していたようです。

 一方、調剤のシステムは現時点では対応が不十分なものがあり、私のところでは徐放製剤や口腔崩壊錠などがあるものは一般名を表示させると複数が表示され、入力に苦労しました。

 この背景には、徐放製剤や口腔内崩壊錠があるものや配合剤などについて、これまできちんとした(電算システム上)の一般名がなく、またそのリストについても入手することができないことがあります。

 懸命にぐぐったのですが、ヒットしたのは北海道医師会のホームページに掲載されたくらいものしかありませんでした。(もし無償で掲載されているサイトがあればご教示下さい)

処方せん医薬品以外(通称:非処方せん薬)リスト
(北海道医師会 2005.05.30)
http://www.hokkaido.med.or.jp/new/juyo/hi-syoho.pdf

 すでに一般名処方マスタが設定されていますが、上記によればファモチジン錠は(1)が普通錠、(2)が口腔内崩壊錠となっていて、調剤のシステムで判別が分かりずらくなっているのはこういった背景があるようです。

 さらに、興味深いのが配合剤などです。(こういった薬は一般名で処方されることはないが、もし処方となれば、この名称で入力することが必要な場合がある)

  • PL配合顆粒→非ピリン系感冒剤(4)顆粒
  • SG配合顆粒→ピラゾロン系解熱鎮痛消炎配合剤(4)顆粒
  • タフマックE配合カプセル→ジアスターゼ配合剤(1)カプセル
  • ビオフェルミンR錠→耐性乳酸菌製剤(3)

 安全対策部会の副作用報告では、一般名で副作用がリストアップされるのですが、「非ピリン系感冒剤(4)」というのがいったい何であるのかを調べるのは大変だったことを改めて思い出しました。

 厚労省は、一般名処方マスタの設定が遅れるのであれば、まず商品名が対応する一般名のリストだけでも示してもらえればと思います。(もしどこかに掲載しているのであれば、すぐにわかるようにリンクを貼って欲しい)

2.一般名処方で効能違いはどうする

 一般名マスタには注釈が入っていますが、効能違いがあるものはどうするのでしょうか? 常識的に判断できるものはいいのですが、後発品メーカーが追加効能についての承認を得ていないものも散見しますので、自分のところにもしきたら、「病名は?」と問い合わせると思います。

3.先発品しかない一般名の場合はどうする

 一般名処方マスタには、「シロスタゾール口腔内崩壊錠50mg/100mg」というのがあります。つまりプレタールOD錠50mg/100mgのことです。これには、同じ剤型の後発品が存在しませんので、プレタールOD錠を調剤することになります。後発品変更可なら普通錠の後発品に変更ができますが、一般名ではできないと考えられます。(Q&Aで出るとは思いますが、これが変更できないとなると、ちょっと問題かと思います)

4.どうみても違和感のある処方が散見される

 一種類のみ、一般名処方とし、他については変更不可のチェックが全て入っているといった処方にも遭遇しました。(しかも、その中に後発品が入っているから不思議)

 将来を見据えた過渡期として見るべきなのでしょうが、こういった場合、今回の一般名処方の意味を患者さんに対してどのように説明したらよいか考えさせられます。

5.医療機関への銘柄名の連絡は本当に必要なのか?

 一般名処方になったことにより、従来までは考えられなかった「アスピリン100mg錠」や「センノシド12mg錠」の場合でも、最低一回は処方元への連絡が必要になりました。

 ただ、厚労省の下記通知では、「一般名処方とは、単に医師が先発医薬品か後発医薬品かといった個別の銘柄にこだわらずに処方を行っているものであること。」と記されています。

処方せんに記載された医薬品の後発医薬品への変更について(通知)
(平成24年3月5日保医発0305第12号)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/tuuchi1-4.pdf

 個別の銘柄にこだわらずに処方を行っているのであれば、私は銘柄名の報告は本当に必要かと思います。連絡すべきとしたのは、中医協で決まったことなので、厚労省ではこれを踏襲したのですが、処方元も薬局側も今まで以上に手間が増えてしまっているのが現状ではないでしょうか。これが、かえって後発医薬品の使用促進に足かせになるのではないかと懸念します。(地元では薬剤師会が連絡方法の確認を行っていますが、回答の集約が進んでいません。答えるのも忙しくてで大変なんだと思う。)

 今回の一般名処方で後発医薬品の使用促進が確実に進むとは思いますが、この通りだと今まで必要なかった、局方品のメーカー名も伝える必要があることにもなってしまいます。(中医協の委員さんたちは、現場の大変さをどの程度理解しているのかと改めて感じます)

関連ブログ:
意外に増えそうな一般名処方
(薬局のオモテとウラ 2012年4月2日)
http://blog.kumagaip.jp/article/54779777.html


2012年04月08日 22:05 投稿

コメントが12つあります

  1. 厚生労働省
    使用薬剤の薬価(薬価基準)に収載されている医薬品について(平成24年4月2日現在)
    http://www.mhlw.go.jp/topics/2012/03/tp120305-01.html

  2. アポネット 小嶋

    このリストは私も活用していますが、これは「成分名」であって「一般名」ではないので配合剤などでは十分ではないと考えています。

  3. すいません。釈迦に説法でした。先生が読んでないわけないよなと思いつつ出してしまいた。
    いつもというか毎日読ませていただいております。大変お世話になっております。
    これからもよろしくお願いします。

  4. アポネット 小嶋

    この表に、一般名が入ったものを作れば問題ないんですけどね。

  5. 3についてですが、個人的にはできると思ったのですが。

    医師は後発が存在するかどうかもわかってはいない可能性も大ですが、基本的には、一般名にしたら後発変更可能の意思表示と受け取って、剤型変更もOKであると思いました。
    ですから、一応疑義照会必要かもしれませんが、OD以外の剤型でいいと思います。
    そうじゃないと、これは厚労省の決定的ミスですよね。後発の存在しない医薬品で2点取ってるんですから。

    そうしないと、今まであった後発→後発での在庫軽減が生かされないと思います(願望かもしれませんが)。

  6. アポネット 小嶋

    ぼんたさんのように解釈したいんですけどね。

    3月30日のQ&A(医科問147)で、「後発医薬品のある先発医薬品について一般名処方した場合に限り算定できる。従って、後発医薬品の存在しない漢方、後発医薬品のみ存在する薬剤等について一般名処方した場合は算定できない。」となっていますが、機械的に算定されちゃっているのでしょうか?

    それと、一般名処方マスタの更新が行われています。

    一般名処方マスタ [216KB] (4月9日更新)
    http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/dl/120305.pdf

    フェルビナク(パップ)についての訂正ですが、テープはどうするのと思います。

    この一般名処方のマスタの決め方は、薬価基準収載医薬品コード上9ケタを基準に考えているのですが、フェルビナク貼付剤の場合、テープもパップも上9ケタが“2649731S1”のため、パップを優先せざるを得なかったのだと思います。

    おそらく現状では、テープもパップもコンピューター上では、おそらく「フェルビナク貼付剤」としか出てこないんじゃないでしょうが。

    ツイッターだど、「ヘパリン類似物質(軟膏)0.3%」というのも困ったとか。

    このリスト、結局は経済的効果が大きいものから優先的に設定したと想像してしまうのですが、現場としては、まず、疑義照会が必要になるものから優先的にして設定して欲しいですね。(実際に処方されるのだから)

    対応するレセコンメーカーさんは大変だと思いますけど。

  7. いつも貴重な情報ありがとうございます。
    弊局でも処方先が一般名処方についてどの薬剤が対象か?ということで
    かなり迷っておられるようです。
    ネットで調べてみますと下記のサイト(日医工さん)が一番分かりよい
    と思います。ご参考までに・・

    http://www.nichiiko.co.jp/stu-ge/mps/pdf/20120406ippanmeikasankahiStuGE.pdf

  8. アポネット 小嶋

    紹介ありがとうございます。

    ツイッターでも話題になっていましたが、まだ確認していませんでした。

    最後のページに、元記事でも指摘した「プレタールOD錠」のことが記されています。

    OD錠の後発品がないのに、「同一剤形・規格の後発医薬品がある先発医薬品」ということになっていますね。(6月の後発品収載の予定もないはず)

    同じものが掲載されている資料(67ページ)
    http://www.mhlw.go.jp/topics/2012/03/dl/tp120305-01_1.pdf

    コードも違うのに、剤型違いでも後発品があれば、算定が可能な品目と解釈をする(錠剤、OD錠、カプセルは同一剤型として扱う)ということにいつから解釈することになったのでしょうか?(日医工もこういた資料を出すにあたってはおそらく厚労省に確認をとっていると思う。今後は、剤型変更の連絡も不要ってことですね?!) 

    そうであれば、ぼんたさんが言うように、普通錠への変更もOKということでしょうね。

    でも、口腔内崩壊錠と書いてあるのに、普通錠で処方というのもどうなのでしょう?

    錠剤の後発品しかない「アカルディ」やカプセルの後発品しかない「アシノン(75mg)」も同じ扱いになるのでしょうか?

    一方で、フェルビナクの貼付剤はパップ剤を優先。

    すごい矛盾を感じます。

  9. メトホルミン塩酸塩錠も(1)と(2)が存在する様ですね。
    同一剤形・規格の後発医薬品がある先発医薬品となっていないので、一般名処方の算定できない商品ですかね?
    難しいです。

  10. アポネット 小嶋

    そうですよね。

    処方側は、その辺は考えて(グリコランなら可、メトグルコなら不可)オーダーを出すと思いますが、処方せんとして出てくるのは、おそらくどっちも“【般】メトホルミン塩酸塩錠250mg”でしょう。

    もしこの処方を受けたら、新薬のメトグルコなのか、従来までのグリコランやメデットなのか、いったいどっち? いうことになりますよね。

    保険的には後者ということになると思いますが、ドクターが前者と考えているかもしれませんよね。

    もっとも、同じ成分なのに高齢者が使える・使えないというのも変な話ですが。

    薬局としてはこれまでに考える必要がなかった業務がまた一つ増えるということですね。

    今となっては、後発品がないものを一般名処方できないなどとはできませんから、本当に何とかして欲しいですよね。

  11. 『後発医薬品のある先発医薬品について一般名処方した場合』を読んだときに、『同じ剤型の後発がある』ではないので・・・・法律の文書でそれは大きい気がしたんです。
    ですから、改正前の後発変更可は剤型変更が可能だったので、当然それは生きてる前提で考えました。

    一般名→後発で調剤→剤型変更(22年改定ルール)で、プレタールODの場合同一剤型が無いので中間を飛ばして錠剤にって。

    何にしても薬効別薬価本に記載して欲しかったです・・・・

  12. 「一種類のみ、一般名処方とし、他については変更不可のチェックが全て入っているといった処方」への違和感の意味が解りかねます。他の薬剤は処方どおりの薬を服用してもらいたいだけなのでは?