日本は本気でセルフメディケーションを推進する気があるのか?

 27日,厚労省の薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会が開催され,スイッチOTC化の候補として日本薬学会が選定した18成分(TOPICS 2009.4.28)についての審議が行われました。

 業界紙によれば,この選定されていた18成分のうち,フルルビプロフェン(外用),レバミピド,ベンダザック,クロベタゾン酪酸エステル,トラニラスト(点眼),アンレキサノクス(点鼻),デキサメタゾン(口腔内外用),フドステインの8成分については,スイッチOTC化を進めることが適当とされた一方,PPIの3成分は「医師の管理の下で使うことが適当」などとしてリストから除外,アルファカルシドール,カルシトリオール,ドンペリドン,ナジフロキサシン,コレスチミド,オフロキサシン(点眼),ノルフロキサシン(点眼)なども今回は見送りとなったそうです。(おそらく来月初めの日薬ニュースや日薬雑誌で詳報が伝えられると思います)

 また,トロキシピド(アプレース)とロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン)のスイッチ品についての審議も行われ,トロキシピドは部会として承認,ロキソプロフェンナトリウムのスイッチについては審議を継続することとなったそうです。

 この部会については,3ヶ月ほどで議事録は出ますが,審議に関する詳しい資料は公開されないの通例です。PPIが不適当となったのは,おそらく関係の学会等から反対の意見が出されたためだと思いますが,どういった理由があるのか知りたいものです。

 OTCへのスイッチに積極的な英国では,スイッチが実施される場合に関係団体などからの意見を求め,寄せられた意見はウェブサイトで掲載を行っています。(下記は,アジスロマイシンのスイッチ(TOPICS 2008.8.6)が提案された際に出された,個人・関係団体からの意見です)

Public consultation (ARM 43): Request to reclassify azithromycin 500mg from POM (prescription only medicine) to P (Pharmacy)
 (MHRA Page last modified: 05 August 2008 )
http://www.mhra.gov.uk/Publications/Consultations/Medicinesconsultations/ARMs/CON2031517

 今回のPPIのスイッチの見送りは,クロピドグレルとの相互作用(TOPICS 2009.1.29)の懸念を考えれば,やむを得ないのかもしれませんが,スイッチというと抗アレルギー薬とか胃粘膜保護成分などといったものばかりで,たいていは目新しいものがなく,正直のところ,本当にセルフメディケーションを推進する気があるのかと思います。ちなみに,今回審議された成分で海外での承認状況は以下の通りです。

成分名 OTC品が承認となっている国
ランソプラゾール スウェーデン
オメプラゾール 英国,米国,オランダ,スウェーデン,ノルウェー,中国,メキシコ,アルゼンチン
ドンペリドン 英国,オランダ,イタリア,アイルランド,ベルギー,チェコ,スイス,チリ,中国,韓国,シンガポール
クロベタゾン酪酸エステル(外用) 英国,豪州,カナダ,シンガポール

 OTCへのスイッチがどういう点で不適当なのか,もしかしたらOTCの販売方法によっても解決できることがあるもしれません。もっと関係資料を公開してもらいたいものです。

厚生労働省 薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/yakuji.html#ippan

関連情報:TOPICS
  2009.04.28 厚労省、スイッチ候補18成分を公表
  2009.01.29 PPIがクロピドグレルの作用を減弱するかもしれない
  2009.02.01 欧米におけるスイッチOTCの状況
  2008.12.05 英国におけるスイッチOTC25年の歩み
  2008.08.06 クラミジア対策にアジスロマイシンがスイッチ(英国)

参考:
【薬食審一般用医薬品部会】8成分をスイッチ‐PPIなど3成分は除外
   (薬事日報 HEADLINE NEWS 8月28日)
 http://www.yakuji.co.jp/entry15933.html
一般薬部会「スイッチ化適当」は8成分、PPI3成分は見送り
   (日刊薬業WEB フリーサイト8月27日)
 http://nk.jiho.jp/servlet/nk/gyosei/article/1226551728849.html?pageKind=outline
  RISFAX HEADLINE NEWS 8月28日  


2009年08月28日 12:20 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    WAMNET に資料(議事次第)が掲載されました。

    薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会(2009年8月27日開催)
     資料(WAMNET 9月1日掲載)

    やはり,リストから外された理由の資料は出ていませんね,

    それと,トロキシピドのスイッチ品はアズレンとの配合品で,佐藤製薬から発売されるようです。

    議題3の点鼻薬に含まれる亜鉛に関する副件用の報告等についてというのは,本サイトで紹介した下記の記事のことだと思います。

    TOPICS 2009.06.17 亜鉛の鼻腔内適用は嗅覚障害をもたらす(米FDA)

  2. アポネット 小嶋

    11月4日に議事録が厚労省HPにアップされました。(後半の方です)

    薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会議事録(2009年8月27日開催)
     http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08/txt/s0827-5.txt