高齢者へのイチョウエキスの有益性

 イチョウ(葉)エキスというと、認知症の予防になるのではないかと期待されているハーブですが、このほどオレコン州立大の研究グループが、高齢者を対象に行った二重盲検ランダム化比較試験の結果をNeurology 誌のオンライン版に発表しています。

Does Ginkgo Biloba Affect Memory?
   (American Academy of Neurology 2008.2.27)
  http://www.aan.com/press/index.cfm?fuseaction=release.view&release=580

A randomized placebo-controlled trial of ginkgo biloba for the prevention of cognitive decline
  (Neurology online before print February 27, 2008)
  http://www.neurology.org/cgi/content/abstract/01.wnl.0000303814.13509.dbv1 

 この研究は、認知機能に問題がない85歳以上の男女118人を対象に、42ヶ月間行われたもので、介入群では1日3回イチョウエキスを毎日摂取しています。

 その結果、介入群では60人中7人が、またプラセボ群で58人中14人が軽度の認知障害になったそうです。一見イチョウエキスの有用性があるかとも思われますが、統計学的には有意差は認められなかったそうです。また、きちんとイチョウエキスを摂取した人は、プラセボ群に比べて、軽度の認知障害となるリスクが68%減少したそうです。

 一方、副作用ですが全体では有意差が認められなかったものの、凝血能関連による出血事例が介入群で7例あったのに対し、プラセボ群では1例もなかったとのことで、出血リスクは注意する必要があるとしています。

 研究者らは、今回の研究はパイロットスタディということで、サンプル数が小さく、直ちに結論づけることはとはできないとして、大規模な同様の試験が必要だとしています。

 各紙のこの論文の取り上げ方はさまざまで、「有益」と見出しを出すところもあれば、リスクを前面にとりあげるものもありました。最も、85歳以上を対象としたことが適切であったかということは、個人的には疑問が残ります。

 なお、Newsweek紙によれば、現在3000人以上(75歳以上)を対象とした”The Ginkgo Evaluation of Memory (GEM) Study”という大規模試験が、国立補完・代替医療センター(NCCAM:the National Center for Complementary and Alternative Medicine)などを中心に実施されていて、その結果が今春にも発表されるとのことです。今後の報道に注目しましょう。

GEM – The Ginkgo Evaluation of Memory Study
     http://nccam-ginkgo.org/

参考:Herbal Supplement May Protect Memory After Age 85
      (Medpage TODAY 2008.2.27)
  http://www.medpagetoday.com/PrimaryCare/AlternativeMedicine/tb/8523
    Does Ginkgo Biloba Prevent Memory Loss?
      (Newsweek 2008.2.27)
   http://www.newsweek.com/id/116655

2月29日 0:40掲載


2008年02月29日 00:40 投稿

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