吸入型インスリンは費用対効果が十分でない(英国)

 健康増進や病気の予防と治療に関する手引きを手がける英国独立機関のNICE(The National Institute for Health and Clinical Excellence)は、今年1月に承認された吸入型インスリンのエクスベラについて、全ての糖尿病患者には推奨できないとの見解をまとめ、英国では波紋を呼んでいます。

 Inhaled insulin for the treatment of diabetes (types 1 and 2) – Appraisal consultation document(現在このファイルはありません)
   http://www.nice.org.uk/page.aspx?o=305474

 NICEでは、今回の見解は臨床的効果(インスリン基礎分泌の補充が必要な場合、持効型インスリン注射が必要なので、注射嫌いの人に代わるものではない)と費用対効果(インスリン注射では年間一人当たりの費用が400ポンド=約6万円に対し、エクスベラでは1102ポンド=約23万円と試算)などの観点から、総合的な判断として、エクスベラのメリットはあまり高くないとしています。特に従来の治療法でコントロールが十分行われていない患者には勧められないとして、まず、クオリティ・オブ・ライフにどれだけ寄与するかを検討するよう求めています。

 画期的な治療法が生み出されても、全ての国民がその恩恵を受けられないとして、製薬会社はもとより、糖尿病の団体からも失望の声が挙がっていますが、医療費の膨大化を考えればやむを得ない措置なのかもしれません。

 NICEでは、今後一般からの意見を求めた上で、この秋までに正式な勧告としてまとめる見込みです。公的保険給付のあり方としても、注目したいと思います。

関連情報:TOPICS
    2006.01.28 吸入タイプのインスリン「エクスベラ」が米国・欧州で承認

参考:Diabetes inhaler rejected for NHS(BBC NEWS 2006.4.18)
     http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/4919802.stm
    NHS can’t afford drug that transforms lives
      (Times Online 2006.4.19)
     http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2-2140963,00.html


2006年04月20日 22:00 投稿

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