一般用医薬品の濫用の実態とその対応策(厚生労働科学特別研究)

 2014年6月、ジヒドロコデインなどの6成分が、「濫用等のおそれのある医薬品」に指定され、これらの成分を含む鎮咳去痰薬などの販売時の数量制限、購入理由の確認等、適正使用のための方策がとられていることは、皆さんもご存知かと思います。

薬事法施行規則第 15 条の2の規定に基づき濫用等のおそれのあるものと して厚生労働大臣が指定する医薬品(告示)の施行について
(厚労省医薬食品局長 2014.06.04 薬食発 0604第2号)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/sankou_1.pdf

(対象成分・品目)

  1. エフェドリン
  2. コデイン(鎮咳去痰薬に限る。)
  3. ジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る。)
  4. ブロムワレリル尿素
  5. プソイドエフェドリン
  6. メチルエフェドリン(鎮咳去痰薬のうち、内用液剤に限る。)

 しかしながら、これまでの厚生労働科学研究(関連記事→TOPICS 2017.05.052013.04.16)などで、一般用医薬品による依存が疑われる事例が一定数存在することが報告されていることから、一般用医薬品による依存等の実態の詳細を明らかにする厚生労働科学特別研究が行われ、その結果が下記サイトで公表されています。

国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・薬物依存研究部HP
https://ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/index.html

【R1厚生労働科学特別研究】
一般用医薬品の適正使用の一層の推進に向けた依存性の実態把握と適切な販売のための研究
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/OTC_R1.pdf

 この研究は、

研究1. 民間の依存症支援団体利用者を対象とする依存実態の再解析及び追加調査

研究2. 「濫用等のおそれのある医薬品」の販売の取り扱いに関する実態把握調査

で構成されていて、一般用医薬品による依存が疑われる事例がどの程度存在するのか、また、その購入方法や販売実態を明らかにしたうえで、適切な販売の実施のためのガイドライン等を示しています。

 研究1では、ダルクの協力を得て、主たる依存対象が一般用医薬品であった21名へのインタビューなどが行われ、次のような店頭での生々しいやりとりも紹介されています。

  • 「個人経営の薬局では店内に陳列せず、店の奥に隠してあった。手で『5本』などとサインを送ると、何箱でも売ってくれる状態であった
  • 某ドラッグストアでは、製品を多く買うと安くしてくれるサービスがあった
  • 私みたいな依存者を出さないためにも、薬剤師さんには、ちゃんと売って欲しい

 ここで明らかになったのは、パブロンゴールドAやエスタックイブのような総合感冒薬の依存症例が確認されたことで、研究班では、ジヒドロコデインやメチルエフェドリンを含有する総合感冒薬についても、販売数量を制限することや、薬局やドラッグストアなど一般用医薬品を販売する現場における予防啓発や、依存症患者の早期発見・早期介入を含めたサポート体制の必要性を訴えています。

 また、研究2では、日本薬剤師会、日本チェーンドラッグストア協会、日本保険薬局局会の協力を得て、上記指定の成分を使用医薬品(厚生労働大臣の指定からは除かれている総合感冒薬等の用途も含む)の販売状況等の実態を明らかにしています。

調査対象となった商品名

(鎮咳・去痰薬)
ブロン錠/ブロン液、新トニン咳止め液/咳止め液D、クールワンせき止めGX、アネトンせき止め液/アネトンせき止め錠、パブロン咳止め液/S咳止め/咳止めカプセル、ベンザブロックせき止め液/せき止め錠、新コルゲン咳止め透明カプセル、カイゲン咳止め液W/咳止め錠/咳止めカプセル

(総合感冒薬)
パブロン/パブロンゴールド/Sゴールド、新ルルAゴールドs/DX、ルルアタックEX/FX/IBエース、ベンザエースA/ベンザブロックIP/L/S、エスタックイブ/ファイン/エスタックアルファ、新ジキニンA顆粒/錠D/IP、ストナジェルサイナス/プラス2、プレコールかぜ薬錠/エース顆粒/感冒カプセル、バファリンEX錠、新コンタックかぜ総合EX/持続性EX

(鎮静剤)
ウット

(鎮痛薬)
ナロン/ナロンエース/ナロンエースT、イブ/イブクイック

 調査の結果、ブロン錠/ブロン液、新トニン咳止め液/咳止め液Ⅾ、パブロン/パブロンゴールドA/パブロンSゴールド、ウット、ナロン/ナロンエース/ナロンエースTが、薬局・店舗販売業等でいずれも、頻回購入及び複数個購入の事例が多いことが明らかになっています。

 研究班では、販売数量が制限されていない総合感冒薬(パブロン類、エスタック等)が、薬物依存・頻回購入・複数個購入の対象となっているとして、「濫用等のおそれのある医薬品」の規制の在り方について、関係業界と議論する必要がある と指摘するとともに、次のような対応策が有効だとしています。(個人的には、総合感冒薬の包装制限に踏み込まなかったことは残念。関連記事→TOPICS 2014.05.21)

  • 自店舗で取り扱う該当製品の一覧の作成、陳列の工夫、販売記録の作成やお薬手帳の活用、レジシステム等の活用による記録の管理
  • 「濫用等のおそれのある医薬品」は、通常の医薬品の陳列(空箱による陳列も含む)で購入できるような対応ではなく、薬剤師又は登録販売者から直接説明を受けた上で購入する仕組みとする
  • 「濫用等のおそれのある医薬品」は、法令に基づき原則として複数個購入することができない旨の注意喚起を医薬品が陳列されている場所等に示す
  • 継続研修において、「濫用等のおそれのある医薬品」についても継続研修のカリキュラムに組み込む
  • 一般用医薬品の濫用の危険性についての啓発を通じて、これら一般用医薬品の濫用による危険性の認知度が高める
  • 小学校・中学校や高等学校等とも連携し、医薬品の濫用の危険性について、適切な情報提供を行う。

 なお、調査では「濫用等のおそれのある医薬品」などは、9割以上の店舗販売業等での取り扱いがあった一方で取り扱いのある薬局は3~4割にとどまっていて、改めて、風邪薬のような地域に必要な一般用医薬品を取り扱っていない現状も明らかになっています。(つまり、有効な対策は店舗販売業が中心となる)

 今回の調査結果を受け、研究班では 「濫用等のおそれのある医薬品」の適正販売に向けた販売者向けのガイドラインと関係団体等に向けた提言 をまとめ、掲示物の提案も行っています。(報告書p48-54)

関連情報:TOPICS
  2017.05.05 医薬品乱用の実態~特に市販薬(厚生労働科学研究)
  2014.05.21 総合感冒薬の販売規制は今後の検討課題(パブコメ結果)
  2014.02.17 濫用等のおそれのある医薬品の成分・品目及び数量は?
  2013.04.16 OTC薬の大量・頻回購入の対象はブロンだけではない
  2013.02.10 OTC鎮痛薬・風邪薬の包装(販売)制限は必要か
  2012.09.14 日本人はOTCの副作用や依存性はあまり気にかけない?
  2010.06.04 コデイン配合OTC薬販売規制、鎮咳去痰薬のみで十分?
  2010.05.01 コデイン配合OTC鎮痛薬の販売規制が開始(豪州)
  2009.09.04 ジヒドロコデイン配合OTC風邪薬,事実上使用禁止へ(英国)


2020年06月19日 15:27 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    厚生労働科学研究成果データベースにも掲載されています。
    概要はこちらでご確認を

    一般用医薬品の適正使用の一層の推進に向けた依存性の実態把握と適切な販売のための研究
    (2019年度厚生労働科学特別研究)
    https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201906023A

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