ロキソニンS、指定第2類へのリスク区分変更見送りへ(Update)

 既に14日の業界紙の速報でご存じかと思いますが、14日開催の薬食審・医薬品等安全対策部会で、ロキソプロフェンナトリウム水和物(ロキソニンS他)のリスク区分の変更についての検討が行われ、安全対策調査会では了承されていた指定第2類へのリスク区分が変更が見送りとなり、引き続き第1類医薬品とすることが了承されたそうです。

ロキソニンS、引き続き第一類で了承-薬食審・安全対策部会
(CB NEWS 2014.11.14)
http://www.cabrain.net/management/article/44258.html

ロキソニンのOTCリスク区分、従来通り第1類に  薬食審・安全対策部会
(日刊薬業WEB フリーサイト 2014.11.14)
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/gyosei/article/1226579279469.html?pageKind=outline

安全対策部会 ロキソプロフェン「第1類」継続を決定、反対意見で一転
(RISFAX 2014.11.17)
http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=46205

 ロキソプロフェン水和物のリスク区分変更については、8月27日に行われた同対策部会の安全対策調査委員会で検討が行われ、リスク区分変更への懸念の意見(下記議事録参考を)があったものの、情報提供を確実に行うことを条件の下で、指定第2類の医薬品への変更の了承が得られていました。

平成26年度第5回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会
(厚労省 2014.08.27開催)
 資料:http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000055900.html
議事録:http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000061450.html

 その後、2015年1月22日からのリスク区分変更案を示して、パブリックコメントの手続きがとられ、日薬などが意見の提出を行っています。

薬事法第三十六条の七第一項第一号及び第二号の規定に基づき厚生労働大臣が指定する第一類医薬品及び第二類医薬品」及び「薬事法施行規則第一条第三項第五号の規定に基づき特別の注意を要するものとして厚生労働大臣が指定する第二類医薬品」の一部改正に係る意見の募集について
(e-gov 案の公示日 2014.09.20  意見・情報受付締切日2014.10.22)
 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495140225&Mode=0

「指定告示改正案に関する意見」について
(公益社団法人日本薬剤師会 2014.09.30 提出)
http://www.nichiyaku.or.jp/action/wp-content/uploads/2014/10/141016_2.pdf#page=2

 安全対策調査会の意見が安全対策部会で覆ったのは異例ですが、ロキソプロフェンの安全性に特に懸念があったのでしょうか?

ロキソニンSの新一般用医薬品製造販売後調査報告書等(製造販売後調査報告書、添付文書、使用者向け情報提供文書)(PDF:3,309KB)(安全対策会資料1-1-2)

 上記後ろの方の85ページから、調査結果に関する見解と今後の安全対策が示され、収集された重篤な副作用の発現傾向については、医療用及び一般用の解熱鎮痛薬と比較して特記すべき点はないと結論づけています。

 一部報道(見出し?)によれば、妊婦への服用懸念があるため(安全対策調査会でも参考人から懸念の意見が示されていた)とされていますが、もしそれだけであれば、イブプロフェンなども同様のはずです。

 結局のところ、ロキソニンSだけが鎮痛薬の第1ブランド化し、頭痛への乱用や不適切使用(マラソン前やマラソン中の使用だってそう)を予防することが目的のようにも思われます。

 実際、ツイッターやグーグルで“ロキソニン”で検索すると多くのツイートや記事がヒットすることが示すように、さまざまな場で、気軽に使用されていることが伺われます。

 鎮痛薬は本来であれば、自己判断で使用する場合にはいうまでもなく、必要最少量で必要最少の期間で使用すべきものです。であれば、ロキソプロフェンのみを別扱いにすることには個人的には疑問があります。

 ドイツやデンマークなど、鎮痛薬(特にNSAIDs)の包装規制をしている国は少なくなく、同じ考えであれば、イブプロフェン配合製品の大包装品の規制や適正販売の強化も検討されるべきではないでしょうか?(楽天モールじゃ、本来できないはずのナロンエース56錠×5個のまとめ売りが未だ放置されているしね)

 また、今後鎮痛薬を求める生活者に対しては、単に販売のための情報だけでなく、適正使用を促すための疾患や症状に対する情報提供(例えば、医師会なども監修した、頭痛や生理痛、腰痛への対応について記したリーフレットの配布)、薬物乱用性頭痛などの不適切使用に関する害などについて情報提供も積極的に行う必要があると思います。(販売時における情報提供はここにも力点を置くべき)

関連情報:TOPICS
 2013.04.20 マラソン前の鎮痛薬の予防的使用は臓器にダメージを与える
 2013.04.18 OTC鎮痛薬の販売制限(デンマーク)
 2013.04.16 OTC薬の大量・頻回購入の対象はブロンだけではない
 2013.02.10 OTC鎮痛薬・風邪薬の包装(販売)制限は必要か
 2012.09.14 日本人はOTCの副作用や依存性はあまり気にかけない?
 2012.07.30 OTC薬の乱用・依存の実態(厚生労働科学研究)
 2012.06.30 OTC鎮痛薬は4日分までに制限すべき(ドイツ)

11月17日 16:35 コメント欄で記事追記 


2014年11月17日 02:13 投稿

コメントが3つあります

  1. 厚労行政は常に経済的な側面から、一類薬の二類への格下げをしている。
    ロキソニンは二類に格下げすることによってドラックストアやスーパー系薬品が登録販売者を悪用して大量に販売する懸念があった。
    どうせ、今までのOTC薬の一類品目の安易な格下げ傾向から、このロキソニンも理不尽な扱いで同様に格下げされるだろうと思っていた。
    しかし、安全性の問題から、一転して一類に留められることになった。
    その背景には副作用の問題だけだろうか。
    それであれば、今までの一類薬で二類格下げにするべきではない品目もたくさんある。
    また、指定二類以下の品目でも一類にする品目もたくさんある。
    穿ってみれば、政治力のある医師会の反対から、理不尽にもOTCスイッチ薬化が遅々として進まないため、もう、一類で販売する品目が限りなく少なくなってきている。
    その情勢の中で、よく売れているロキソニンまで指定二類になると、本来、薬剤師による健全なセルフメディケーションのOTC薬販売形態が破壊されることになる。
    そんな懸念があったからではないだろうか。
    こんな小細工で、医師会や医療系製薬メーカーの言うことを聞いて、政府や厚労省は自分たちの安泰のことばかり考えるな・・・・。
    世界の常識的なセルフメディケーション情勢にならって、これらに遠慮せず、OTC薬として相応しい処方薬においてはスイッチ薬化を積極的にどんどんとすすめるべきだ。
    これが、健全な厚労行政というものだ・・・・。

  2. アポネット 小嶋

    医薬品等安全対策部会の資料がアップされています。

    薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会 資料
    (厚労省 2014.11.14 開催)
    http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000065389.html

    資料によれば、安全対策調査会の議論を次のようにまとめています。

    ・ 同類の薬剤であるイブプロフェン及びアスピリンは、ともに妊娠末期の婦人に対して禁忌であり、指定第2類医薬品に区分されている一方、アセトアミノフェンは妊娠末期の婦人が禁忌でなく、第2類医薬品に区分されている。
    ・ ロキソプロフェンについては、特別調査及び一般調査での副作用報告の状況からは、医療用医薬品又は一般用医薬品の他の解熱鎮痛剤と比較して、特記すべき点は認められず、他の指定第2類医薬品(イブプロフェン、アスピリン等)よりも厳格な取り扱いとすべきという理由はない。
    ・ 妊娠末期の女性に対して禁忌であること、長期連用しないことなどの情報提供を確実に行うことが重要であり、購入者への文書による情報提供の継続、及び添付文書の記載を見直すという条件のもと、指定第2類医薬品とすることが適当である。

    資料1-1
    ロキソプロフェンナトリウム水和物のリスク区分について
    http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000065368.pdf

    パブリックコメントに寄せられた意見も対策部会で提示されています。

    資料1-3
    パブリックコメントで寄せられたご意見
    http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000065370.pdf

    今回ばかりは、現場での乱用等の経験から、ロキソニンSのリスク区分変更に反対する意見も寄せらています。以下、一部を抜粋します。

    ————————————————-

    薬局には、「10箱くれ」とかいう患者さん、毎日のように来る患者さんがいます。そういう方には、毎日服用するなら病院へ受診する様に必ず勧めています(薬局では最大2箱までしか売らないようにしてます)。

    今まで、薬局で使用にブレーキがかけられていたものが、外ずれるようで不安です。まだしばらく1類での継続を希望します。

    ・群馬県では数年前に休日歯科診療所を受診した方が、ロキソニンを処方され喘息発作により死亡したという事例があります。この時も院外処方により薬剤師が介在していれば防ぐことが出来たかもしれないという反省がありました。歯痛で痛み止めを買い求めることはよくあることだと思いますが、薬剤師が介在し、アスピリン喘息の既往が確認されればロキソニンSは販売されないと思います。果たして指定第2類に移行した場合大丈夫なのでしょうか?

    また、私の薬局に頭痛の為ロキソニンSを買い求めに来ていた60代の女性がいました。始めは月に1箱(12錠)で足りていたのですが、その後1箱では足りずもっと売って欲しいと言うようになりました。これはおかしいと思ったので、薬剤性頭痛や他の疾患があるかもしれないので、専門医を受診するよう勧めました。その方は脳腫瘍がありました。果たして登録販売員の方がきちんと受診勧告を出来るのでしょうか?

    また、鎮痛作用も強力で、非常に優秀な薬であるがゆえ、安易な使用や、長期使用、耐性が出現するほどの乱用となってしまわぬよう、薬剤師の情報提供が不可欠であると考えます。

    ・喘息患者さんを多く診療しております。ぜん息患者の約10~20%にアスピリン喘息が含まれます。年に数人、市販のNSAIDsを含むかぜ薬で喘息悪化が疑われる患者さんがいます。ドラッグストアで喘息既往を伝えず、あるいは家人の買ったかぜ薬を内服している場合が多いです。

    ロキソニンが通販で購入できるようになった場合、上記のような事例が多くなり、ぜん息死に直結するような事例がでてこないかということを危惧しております。実際、インターネットで購入時に喘息の有無がチェック項目にあっても大量購入して家人・知人に渡す場合は防げません。

    ——————————–

    生活者(購入者)への情報提供はどうあるべきか、またロキソプロフェンだけを厳しくすることだけでいいのかを考えさせられますね。

  3. 処方薬→(関所)要指導薬→(関所)一類薬→(関所)指定二類薬以下・・・・。
    指定二類以下の格下げに至るまでの関所の番人に、薬剤師を備え付けただけ。
    ただ、注目すべき点は処方薬から要指導薬に至る関所は、医師が絶対的権力を持って行使(既得権死守の行使)している。
    それ以下の格下げは、暴言になるが、別に薬剤師でなくてもいいと思われる低レベル。
    OTC薬市場という誰でも自由に買える大衆市場での出荷数をコントロールするための関所(フィルター)の単なる役割(経済的側面からの制御弁)が薬剤師であるだけのこと。
    これは政府、財務省、日本医師会の圧力を受けた厚労省が、部会などの審議の結果をもと(大義名分づくり)によって決められる。
    当然、そこには有効性と安全性の審議は副作用症例報告に基づいて行われているというパフォーマンス(国民的コンセンサス)はしているようだが・・・。
    上述の改善策としては・・・。
    無駄に多い処方薬の中で、OTC薬として相応しいもの(処方薬の中にはたくさんある)を、有用性の観点からしっかりと情報提供することのできる薬剤師(単なる番人から相応しい番人)に受け継がせる流れを構築するべきである。
    これが世界情勢におけるセルフメディケーションの常識的な考え方である。
    ただ、ドラックストアやスーパー系薬品が、OTC薬剤師を限りなく減らして登録販売者の悪用により、処方薬→要指導薬の環境整備を破壊しているところに大きな問題点を孕んでいる。