シロップ瓶にもチャイルドレジスタンス機能の導入が必要

 東京都は、このほど乳幼児の誤飲についてヒヤリ・ハットや危害体験についてのインターネットアンケート調査を行い、10月25日に結果を発表しています。

乳幼児の誤飲に関するヒヤリ・ハット調査
紙・シール・ポリ袋など身近な日用品による非常に危険な事例も!
(東京都生活文化局10月25日)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2010/10/60kap400.htm

 このアンケートは、東京都に在住の0~6歳の子供がいるインターネットアンケート登録モニター2,000人を対象に行われたもので、子供の年齢が0歳~6歳までの間の品目別の乳幼児の誤飲の体験(もう少しで誤飲をしそうになった、いわゆるヒヤリ・ハットも含む)の有無、危害の程度、誤飲したときの状況等の調査をおこなっています。

 その結果、5,801件の体験事例が報告され、紙類(ティッシュ・新聞紙等)、シールに次いで、354人から493件の医薬品による誤飲体験(ヒヤリ・ハットも含む)があったそうです。

 493件のうち実際に誤飲してしまったのは、74人84件(外皮用薬が23件、風邪薬が20件、眼科用・耳鼻科用剤が8件、胃腸薬8件、その他医薬品が25件。OTCか処方薬は不明)で、うち23件では医療機関を受診(1件は入院)したそうです。

 誤飲したときの状況は、「薬を置き忘れていた」「薬を飲もうとして準備していた」等「テーブル・机の上に置いていた薬を口に入れた」という事例が多く、外皮用薬では、「塗り薬のチューブをかじる、折り曲げるなどしてチューブに穴があいてしまい、中身を口に入れた。」という事例が、また風邪薬、胃腸薬では、「薬を飲もうとしたときに薬を床に落としてしまい、それを子供がみつけて口に入れた」という事例もあったそうです。

 一方、シロップ薬では、「テーブルの上のシロップの薬を2日分ほど飲んだ」「シロップを自分で飲みたいと手に持っていた」などの事例あり、子どもが飲みたがる甘い味付けの薬は細心の管理が必要だとしています。

 東京都では、「医薬品は、薬を飲もうとしているときや薬を塗っているときの誤飲事例も多いので、保管場所だけでなく使用中の取り扱いにも気をつけなければならない。」として、注意を呼びかけています。

平成22年度 ヒヤリ・ハット調査 「誤飲による乳幼児の危険」全文(PDF:930KB)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2010/10/DATA/60kap402.pdf

 今回の調査結果を受け東京都では、乳幼児の誤飲事故防止ガイドを作成し、都内の消費生活相談窓口、幼稚園、保育所等へ約4万部配布するとともに、OTC医薬品では導入が進んでいる、子供が簡単に使えない「チャイルドレジスタンス(CR)機能」が備わった医療用医薬品の容器(つまりシロップ容器のことだと思う)の普及のため、東京都薬剤師会などと取り組んでいきたいとしています。

乳幼児の誤飲事故防止ガイド(東京都)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2010/10/DATA/60kap401.pdf

子供に対する医薬品容器の安全対策
(東京都商品等安全対策協議会)
http://www.anzen.metro.tokyo.jp/tocho/kyougikai/10th/kyougikai.html
 (10月27日に第1回会合が開催、年度内に報告書がまとめられる予定)

 東京都では去年、子供のライター遊びが原因とみられる火災が相次いだことから、同様に安全対策協議会が設置され、経済産業省にライターへのチャイルドレジスタンス機能の付加について法律による規制を行うことを検討すること求めることなどを盛り込んだ報告書をまとめ、これを受けた経済産業省の諮問機関も今年6月に使い捨てライターなどに安全対策を義務付ける方針を決定しています。

 今回の医薬品容器の安全対策についても、使い捨てライターと同様に導入の義務化も検討されるかもしれません。(シロップ容器代のコストが上がりそう)

 また、小さな子どもの目の前で親が薬を飲まないようにすることも、誤飲リスク(興味を持たせない)を避けるために必要かもしれません。

ライターの子供に対する安全対策
(東京都商品等安全対策協議会)
http://www.anzen.metro.tokyo.jp/tocho/kyougikai/9th/kyougikai.html

参考:
医療薬品の容器に「特殊機能」導入へ 子供の誤飲防止に本腰 東京都
 (産経新聞10月20日)
http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/101020/sty1010200130001-n1.htm
乳幼児8割、誤飲経験 東京都、開けにくい容器普及検討
 (朝日新聞11月4日)
http://www.asahi.com/national/update/1102/TKY201011020156.html


2010年11月04日 12:33 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    下記ページに議事録、配布資料が掲載されています。

    協議会テーマ 子供に対する医薬品容器の安全対策
    (東京都商品等安全対策協議会)
    http://www.anzen.metro.tokyo.jp/tocho/kyougikai/10th/kyougikai_shiryou.html

    小児科開業医の委員が、小児の誤飲について述べている部分が興味深いです
    (議事録より抜粋)

    子供は年齢によって、発達によって、どういう事故が起きるというのはわかっています。

    誤飲は生後6カ月を過ぎて、手を出してつかむ、つかんで口に持っていけば必ず発生する事故ですし、その中でも医薬品の誤飲はもう少し大きい子供、0歳ではなくて、二、三歳の子供が親の真似をして親の薬を飲むという場合が非常に多い。子供の誤飲に関しては死亡例はまずないんですが、1年に1例か2年に1例ぐらい死亡する。大人の薬を大量に飲んで死亡する例が人口動態統計をみるとわかります。

    この表の数を見ますと、薬の誤飲は大して起きていないという感じを持たれるかもしれませんが、小児科医であれば、水薬の誤飲は必ず経験します。水薬の誤飲を嫌がって、絶対に水薬は出さない、粉薬しか出さないという小児科医もいます。お母さんが、「粉は飲ませにくい」と言っても、飲ませるのが親の役目だと言って、水薬を一切出さない先生もいます。(なるほど)

    (中略)

    医者は処方として水薬を出しているんですが、それがどういう容器に入れられて患者さんに渡っているかは、薬剤師によるわけです。ですから、今回のターゲットは、法的に規制する前に薬剤師が自分たちの団体で自発的にこれを使うということを決めればかなり普及すると思います。国の規制を目指すよりは、大きな調剤薬局のグループもありますし、個人立もあるんですけれども、こういうものを導入するターゲットとして薬局が非常に重要ではないかと思います。今は院外処方が6割、都心部ではもっと高くなっていますし、今後も院外処方は増えるので、薬剤師会がどう考えて、みんなに指令を出すかでしょう。容器の値段は、1に対して1.5ぐらいの値段じゃないかと思うんですね。そんなに高いものではないので、たくさん流通すればもっと安くなります。そこらへんが今回のポイントかなと思います。

    また、子育てネットの委員からは

    今回この件の取り組みにつきまして話を伺いましたときに、とても興味深いと思いました。恐らく多くの子供が一番最初に出会う薬というのが、水薬だと思います。私が幼い子供を育てているとき、医療機関で、「お母さん、錠剤にしますか、粉にしますか、水にしますか」と聞かれました。初めていただくお薬だったので、どれにしたらよいかわかりませんが、イメージとして、多分飲ませやすいのはお水になっているものであろうと思いましたので、水薬をいただくことにいたしました。そして、そのころはまだ院内処方がほとんどでしたので、病院の薬局の窓口で薬をいただきました。水薬はラインの付いたボトルに入っておりまして、「ここのラインのところまで飲ませてください」と言われます。それを家に持ち帰って、子供に飲ませるための容器に移すときに、私は今気が付きましたが、いつも子供の目の前でその動作をやってきました。具合の悪い子から目が離せないものですからどうしても、なるべく子供の傍にいようと思うと、そういう結果になるわけです。そうすると、子供は幼い目でありながら、じーっとそれを見ている。そして、その薬がどこにしまわれるかということもちゃんと見ているという状況が今思えばあったのだなと。間違って飲まないでいてくれてありがとうというような気持ちです。

    そして最近、若いお母さま方に伺っても、意外に皆さん無頓着で、私が育てていた30年ぐらい前とほとんど変わらない状況で薬と接しているということを感じます。

    各病院で医師からも、あるいは薬局の窓口でもやっていただきたいことの一つは、まず、その薬を飲ませ過ぎないで、ということをもっと強調していただきたいことと、どうやって保管するかということを、単に冷蔵庫に入れておいてね、ではなく、子供さんの目に触れないように、それから手の届かないように、そういうところに保管してください、ということを一言沿えていただくこと。それで随分違うと思います。また容器と薬の取り扱いについての注意を受ける。薬を飲ませること以外に、そういったことも聞かせていただいていると、徐々に親御さんの中に、薬を扱うときには何に注意しなければいけないか。薬の分量、保管から取り扱いと注意しなければいけないことが沢山あるな、というような意識を植えつけていくことも、とても大事なことではないかと感じています。

    水薬の容器に安全が施されるようになると、子供のおもちゃにも、影響が出てくるのではないかと思います。例えば、しゃぼん玉。あの容器は非常に簡単に開けることができます。お子さんがしゃぼん玉をやっていて、お母さんが傍についていないと、私ははらはらしてしまいます。またかわいいピンクの容器に入っていたりするものですから、そのお子さんがいつ何時ちょっと飲んでみちゃおうかなと思うんではないかと思うとドキドキします。

    薬の容器に限らず、子供さんが手にする必然性のある容器について、さまざまなところでこのチャイルドレジスタンスの考え方が普及していくと良いと期待しておりますので、今回の協議会、積極的に参加させていただきたいと思っております。

    平成22年度 第1回東京都商品等安全対策協議会・議事録
    http://www.anzen.metro.tokyo.jp/tocho/kyougikai/10th/pdf/1_gijiroku.pdf

    今後は、やはり(シロップ状になった)水薬瓶の形状の対策をすすめて、ユニバーサルデザインとなるようなものも提案するようです。

    また、資料によれば、改めて実態調査も行われるようです。

  2. アポネット 小嶋

    くま☆さんのところで、リンクを張って頂きました。

    [日経DI]子供を誤飲から守るシロップ容器
    (薬局のオモテとウラ 2011年1月19日)
    http://blog.kumagaip.jp/article/42722383.html

    その後、11月30日と1月7日に協議会が行われ、チャイルドレジスタンス容器の導入を薬剤師会やメーカーなどに呼びかける方向で話が進んでいるようです。

    今日の時点では11月30日の協議会までの議事録と資料がアップされています。

    第2回東京都商品等安全対策協議会(東京都商品等安全対策協議会)
    http://www.anzen.metro.tokyo.jp/tocho/kyougikai/10th/kyougikai_shiryou.html#2nd

    第2回の議事録を見ると、協議会ではチャイルドレジスタンス容器の導入について、次のような意見も示されています。

    ———————-
    できれば、私も安全キャップの容器を普及させたいと思うんですが、一つの案として、厚生労働省から調剤報酬点数表が出ていますが、今回、いろいろなデータをそろえて、保険の調剤報酬の中に、安全キャップを出したら3点、30円上げるとか、それをやれば容器代がトントンになってできると思います。戦略的には、薬剤師会あるいは医師会、歯科医師会などと相談をして、調剤報酬の点数、例えば3点、安全容器を使えば30円とか上乗せをするシステムを提案する。そのバックグラウンドとして、今回、いろいろなデータを出して示すこと、それが一番現実的な方法だと思います。法制化はとても無理だと思います。インセンティブとして、保険点数を上げれば一気に進むのではないか。みんなが安全キャップを使うようになれば、それが当たり前になります。そうした
    ら、厚生労働省は保険点数を切っちゃうんですね。

    薬の名前も、我々が患者に教えると、最初、2点でしたか、上げると言われたんですよ。今はそれ
    が当たり前だというので点数を減らされました。保険の点数ではよくやる手口なので、それに合わせて安全キャップを入れれば進むかもしれません。そのためには、医師会、薬剤師会などの調整をしていただいて、厚生労働省の保険点数を決めているところに要望を出せば実現するかもしれないと思いました。
    ———————

    平成22年度 第2回東京都商品等安全対策協議会・議事録
    http://www.anzen.metro.tokyo.jp/tocho/kyougikai/10th/pdf/2_gijiroku.pdf

    くまさん☆(日経DI)も指摘されているのですが、私も調剤報酬で薬局に負担がかからないようにするというのは、根本的な解決にならないと思います。

    まず、誤飲がおきるというリスクがあるという現実があることを保護者の方に知ってもらい、それを納得してもらって相応の負担をお願いする、または、散剤の使用を推進することも検討する必要があるかもしれません。