論文・報告あれこれ 2025年10月

他サイトではあまり紹介されていないものを中心に、ちょっと気になった論文や報告、発表などをピックアップしました。気になったものは独立記事に するかもしれません。誤りがあったらご指摘下さい。必ずしも最近アップされたものとは限りません。(特にJ-STAGE に掲載のものは、発行後一定期間 過ぎてから解禁となるものがあり、1年以上前に掲載された論文等を紹介する場合があります)

紹介日 論文・報告タイトル
(紹介記事・ブログ、関連論文)
概要・コメント
10.30 Japanese nationwide survey to track the impact of long COVID over 3 years
(Environ Health Prev Med. 2025 Oct 28)
多施設共同後ろ向きコホート研究
持続性および多重症状を有する患者は、COVID-19診断後36か月経過後も、QOLの低下と経済的負担の増大を持続的に経験
10.29 Aangepaste doseringen tijdens de zwangerschap: cefuroxim en metformine
(Lareb 2025.10.28)
セフロキシムとメトホルミンは妊娠中、特に妊娠中期および後期には急速に排泄されるため用量を増やすことが必
10.29 薬局薬剤師による介護事業所との連携等に関する調査研究事業
(令和5年度老人保健事業推進費等補助金・老人保健健康増進等事業)
(野村総研 2024.04.12)
薬局の薬剤師が特別養護老人ホーム等の介護事業所と連携することで、療養場所が変わっても切れ目ない薬剤管理支援を提供するための在り方を検討することを目的として実施
10.29 へき地住民のオンライン診療・服薬指導に対する利用意向
(日本公衆衛生雑誌 72(10) p783-792,2025)
山口県周南市のへき地医療対策9地区に居住する20歳以上の住民を対象に調査
へき地診療所などでオンライン服薬指導を利用したい者は53.5%
オンライン診療・服薬指導の利用意向が高い者に関連する要因は,共通して「50代以下」「スマホ利用者」だった
10.29 前・後期高齢者別の多剤服用と要支援・要介護認定の発生:JAGES2013–2019縦断研究
(日本公衆衛生雑誌 72(10) p772-782,2025)
2013年度自記式アンケート郵送調査への回答者を約6年間追跡したデータを用いた縦断研究
前期、後期高齢者ともに多剤服用している者は、要介護認定を受けやすく、疾病やフレイルが少ない地域在住の前期高齢者においても多剤服用の注意が必要な可能性がある
10.28 Telemedicine and Willingness to Die at Home in Rural and Remote Areas in Japan
Telemed Rep. 2025 Sep 24)
遠隔医療と従来の在宅医療を統合することで、地方や遠隔地における終末期ケアの質が向上し、在宅死の実現が促進される可能性がある
10.26 Resilience among clinical pharmacists and related factors: a cross-sectional study
J Pharm Health Care Sci. 2025 Oct 24)
国内38医療機関の臨床薬剤師を対象に、基本属性、勤務状況、レジリエンス、自己効力感、バーンアウトについて、ウェブベースの質問票を用いて調査
10.25 MHRA smashes major illicit weight loss medicine production facility in record seizure
(MHRA 2025.10.24)
マンジャロの成分を含むと表示された注射剤を製造していた工場を摘発
レタトルチドおよびチルゼパチドペン(2,000本以上)を押収 完成した減量製品だけでも、末端価格は25万ポンド以上と推定
10.25 No Cost Sharing for Public Assistance Recipients and Health Service Usage in Japan
JAMA Health Forum. 2025 Oct 24)→東北大2025.10.27
生活保護受給者における生活保護認定前後の外来受診および歯科治療の利用状況を調べた
医療費の自己負担の撤廃は、社会的に脆弱な立場にある人々の医療アクセスを大幅に改善させることが確認された一方、医療政策の観点からは、健康状態にかかわらず、過剰な利用者に対して最小限の自己負担(例えば1%)を導入することが効果的である可能性があるとした
10.24 令和7年版自殺対策白書
(厚労省 2025.10.24)
第2章第1節「若者の自殺をめぐる状況」のコラムで「オーバードーズ」が取り上げられている
10.23 Work-related health issues among pharmacists during the COVID-19 pandemic compared to pre-pandemic levels
Ind Health. 2025 Oct 22)
COVID-19パンデミック中に薬剤師の間で有意に増加した健康問題は、うつ病、不安または感情障害、不眠症、眼疾患、皮膚疾患
10.22 Treatment-Seeking Behaviors Among Japanese Working Women With Menopausal Symptoms
J Obstet Gynaecol Res. 2025 Oct 21)
更年期症状のある40歳から59歳までの働く女性1,031名にWEB調査
中等度から重度の更年期症状を呈する女性の割合は58.4%で、そのうち身体症状は46.8%、心理症状は61.0%、泌尿生殖器症状は28.4%
中等度から重度のホットフラッシュを呈する女性の割合は16.5%
調査対象者のうち、45.5%は更年期症状に対処できていなかった
10.17 Collaborative pharmacist prescribing models in Australian hospitals: a scoping study
(Res Social Adm Pharm. 2025 Sep 27)
豪州の病院では 薬剤師の共同処方モデルが試験的に導入、資格を有する薬剤師が医師や患者と協力して患者の投薬計画を作成し、薬が処方されている
10.17 Ethnobotanical survey of herbal medicines for anti-COVID-19 used by traditional Chinese medicine pharmacies in Taiwan
(Front Pharmacol. 2025 Sep 3)
50種類の生薬を記録し、一般的に使用されている30種類を特定し、4つの主要グループに分類し、評価した
10.17 An ideological playground? Changes in community pharmacy ownership – a case study from four Nordic and Baltic countries
J Pharm Policy Pract. 2025 Oct 6)
北欧など4カ国における地域薬局の所有権改革に向けた政策措置、その背景にある論拠と根拠などについて論評
10.14 Medical Products Bill takes shape
(Inside Government NZ 2025.10.14)
ニュージランド政府は、薬局の所有と医薬品の広告に関する法案を提示
地域の薬局の所有権に関する制限を撤廃
処方薬の消費者への直接広告を引き続き許可するが、一部制限導入も検討
10.14 聴覚障がい者の困りごととコミュニケーションのヒント
(塩野義製薬)
「指さし」でつたえるコミュニケーションシート他
i全国の薬局、病院に配布
10.13 Health Ministry to regulate sale of medicines through vending machines
(Times Kuwait 2025.10.12)Kuwait introduces stricter regulations for private pharmacy licenses
(Arab Times 2025.10.12)
クウェートで、薬局開設に厳しい規制が導入へ
10年以上の実務経験/400mの距離制限/最低40平方メートル以上/
室内温度は25度以上
一方で、自販機による販売を容認
機械の内部温度が25℃を超えないこと/一薬局で最大5台まで/
100mの距離制限/1年ごとの更新
10.11 デキストロメトルファン,ジフェンヒドラミンおよびエスシタロプラムの過量服用により死亡した1事例
(中毒研究 38(3) p261-266,2025)
レクリエーション目的でも危険
同時服用で、DXMが代謝されず、血中濃度が服用量から推定されるより高くなり、致死的となった可能性
10.10 Candesartan versus placebo for migraine prevention in patients with episodic migraine: a randomised, triple-blind, placebo-controlled, phase 2 trial
Lancet Neurol. 2025 Oct;24(10):817-827)
カンデサルタンが反復性片頭痛の成人患者における片頭痛日数を有意に減少させ、患者にとって忍容性の高い予防選択肢となることが示された
10.08 Tramadol versus placebo for chronic pain: a systematic review with meta-analysis and trial sequential analysis
BMJ Evidence-Based Medicine 2025 Oct 7)
トラマドールは慢性疼痛の緩和にそれほど効果的ではなく、潜在的な害が利益を上回る可能性がある
10.06 Pediatric stroke risk and neurotrauma from roller coasters in amusement parks
Pediatr Int. 2025 Oct 4)
ジェットコースター関連の小児脳卒中症例(15歳以下)を分析し、神経外傷に関連する主要なメカニズムと臨床的特徴をまとめた
10.04  【なぜ市販薬で依存症になるのか?】薬物依存研究の第一人者・松本
(TBS CROSS DIG with Bloomberg 2025.10.04)
10代の依存が「12倍」に急増している現実
今の薬事政策のあり方にも言及
また、どう接したらよいかのヒントも「相談しろ」が若者を追い詰める → まず雑談から始めよう(動画あり)
10.04 思春期女子のメンタルヘルス悪化と拡大する性差
(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 2025.09.30)
2024年に20歳未満の女子の自殺者数が男子を初めて上回った
このような傾向の背景に、従来のジェンダー規範に沿った期待に応えるだけでなく、社会的成功も同時に求められる二重のプレッシャー、インターネットの不適切利用、対面だけでなくインターネットを介した性的搾取、過剰なやせ願望、思春期の早期化など、複数の要因が複合的に関与している可能性
10.03 Effectiveness of Statins for Oxaliplatin‐Induced Peripheral Neuropathy: A Multicenter Retrospective Observational Study
Clin Transl Sci. 2025 Sep 29)
オキサリプラチンを投与したがん患者2657人のカルテを解析
スタチンが神経保護剤として作用する可能性
10.03 薬局における口腔の健康維持・増進を推進する薬剤師対象研修プログラムの開発および地域住民を対象とした口腔の健康サポート事業の有用性評価
(2024厚生労働科学研究)
口腔の健康サポートに特化した薬局薬剤師向け研修プログラムを修了した薬剤師による、地域住民の口腔の健康サポートの有用性を、27薬局によるRCTにより検証し、医療費への影響も推計
10.03 Knowledge of the risks associated with being underweight and body shape differences among young Japanese women: a cross-sectional study
Biopsychosoc Med. 2025 Oct 2)
18~29歳の日本人女性984名を対象にしたウェブ調査
7割以上の女性が低体重が無月経のリスクと認識していた一方で、不妊、摂食障害、骨粗鬆症をリスク要因として認識していたのは約半数に過ぎず、低体重が妊娠に及ぼす悪影響について十分な知識を持っていなかった。
10.02 Economic Analysis of Expanding the Role of Community Pharmacy Services in Medicines Optimisation
Final Report
(National Pharmacy Association 2025.10.02)
英業界団体のNPAによる調査報告書
教育的介入、モニタリング、処方の中止、投薬レビュー、疼痛評価など、薬剤師が提供するさまざまな医薬品最適化サポートの経済的影響を検討
コミュニティ薬局の医薬品アドバイスサービスへの投資は、NHSが約12億1000万ポンドを節約するのに役立つ可能性がある(→PressRelease 2025.10.02
10.02 99% of pharmacies now able to treat UTIs
(英ウェールズ政府 2025.10.01)
薬剤師は尿路感染症の症状を評価し、必要に応じて適切なアドバイスと治療を提供できます。これにより、かかりつけ医の予約なしで、NHSのケアを無料で、秘密厳守で受けられるようになります。
10.02 プレコンセプションケア 自治体の炎上事例から学ぶリスク管理-科学的エビデンスと推奨モデルは区別し、性と健康の自己決定権を侵害しない内容構成が必要-
(ニッセイ基礎研究所 2025.10.02)
科学的なエビデンスと将来の健康に影響する現在の個人の健康状態とは区別して考える必要があり、プレコンセプションケアの情報を通して、あくまでも自身の健康状態に目を向けるという視点が必要
少子化対策としての側面を併せ持つことから出産奨励に繋げたい意向も理解できるが、性と健康の自己決定権に踏み入る推奨モデルを強要するのではなく、将来の選択肢を広げるために今の健康づくりの必要性を訴えかける必要がある
10.02 Gender and Social Isolation across the Life Course
J Health Soc Behav. 2022 Sep;63(3):319-335
結婚したことがない男性や、関係の崩壊を経験した男性は、著しく社会的孤立がある
一方、安定したパートナーを持つ人は、年齢を重ねるにつれて、親族や地域社会とのつながり(子供を通じたものも含む)が、未婚またはパートナー関係が破綻した同年代の人に比べて、より安定し、孤立感を軽減する可能性がある
10.01 Could a chat at the pharmacy counter be the antidote to loneliness?
(Women’s Agenda 2025.10.01)
薬剤師は、孤独を感じている人々に他の専門家よりも気づき、サポートする可能性の高い医療専門職です
10.01 腎不全患者のための緩和ケアガイダンス
(日本透析医学会2025.09.29)
腎不全患者の辛い身体症状・精神症状に対する、緩和ケアの体制整備を求める世論を踏まえ、日本緩和医療学会と共同で作成
10.01 Long COVID Symptom Management Through Self-Care and Nonprescription Treatment Options: A Narrative Review
(Int J Environ Res Public Health. 2025 Aug 29)
軽度から中等度の症状を市販薬などで管理するための最新の推奨事項をレビュー
10.01 ICTを利用した全国地域医療情報 連携ネットワークの概況(2024年度版)
(日医総研WP 2025.09.30)
地域医療情報連携ネットワーク(地連NW)について、調剤薬局の調剤結果を地連NWで共有している地域はおよそ2割であった

 

 


最終更新日:2025年11月22日

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