薬剤師は適切な医療に結びつけるキーパーソン(自殺対策PT)

 厚労省の自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム(PT)は9日、自殺との関連が指摘される医師の指示量を超えた向精神薬の服用防止や、薬物治療のみに頼らない診療体制への転換を目指すため、新たな施策をまとめています。

第7回自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム 資料
(厚労省資料 9月24日掲載)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000sh9m.html
(日刊薬業 行政情報)
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226498949956

 PTでは、自殺対策として向精神薬の過量服薬問題の取り組みが必要だとして、解決に向けて実施する取り組みと、ワーキングチーム(WT)を設置し、時間をかけて検討していく取り組みの実施を提案しています。

解決に向けて実施する取組
  1. 薬剤師の活用
  2. ガイドラインの作成・普及啓発の推進
    1)最新の診療ガイドラインの普及啓発を推進する
    2)境界性パーソナリティー障害に関する診療ガイドラインの普及啓発
  3. 研修事業に過量服薬への留意事項を追加
    1)厚生労働省の研修事業を活用
    2)関係団体による研修事業の活用
  4. 一般医療と精神科医療の連携強化
    1)救命救急センターにおける精神科ケアの対応能力の向上を推進する
    2)一般医療と精神科医療との連携を強化する取り組み等を周知する
  5. チーム医療で患者と良好な関係を築く

 上記のうち、「薬剤師の活用」では、「薬剤師は、過量服薬のリスクの高い患者を早期に見つけ出し、適切な医療に結びつけるためのキーパーソンとして重要な役割を担うと考えられる」として、患者さんへの声かけや薬剤師による積極的な処方内容の照会や助言などを通じて、向精神薬に依存するリスクの高い患者の早期発見に薬剤師を活用したいとしています。

 一方、今後時間をかけて検討していく対策としては、

  1. 向精神薬に関する処方の実態把握・分析
  2. 患者に役立つ医療機関の情報提供
  3. 不適切な事例の把握と対応
  4. 量服薬のリスクの高い患者への細やかな支援体制の構築
  5. 患者との治療関係を築きやすい診療環境の確保

が示され、厚労省では精神保健医療の枠組みを超え、関連制度との連携も視野に入れ、検討していきたいとしてます。

 薬事日報によれば、厚労省は9月中にもWTを設置し、それぞれの課題について検討を進めるとのことで、日薬などの関係団体もこのWTに参加していくこととなりそうです。

関連情報:TOPICS
  2010.05.29 地域薬局は自殺・うつ病対策のゲートキーパーとならないのか
  2010.06.29 向精神薬、再び処方日数規制か

日薬定例記者会見2010年7月29日
 http://www.nichiyaku.or.jp/contents/kaiken/p100729.html

自殺対策ホームページ(内閣府)
 http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/index.html

みんなのメンタルヘルス総合サイト(厚労省)(新たに開設されたサイトです)
 http://www.mhlw.go.jp/kokoro/
自殺予防対策(厚労省HP、障害者福祉)
 http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jisatsu/index.html

参考:
【厚労省/自殺・うつ病対策PT】向精神薬の過量服薬防止‐薬剤師がキーパーソン
(薬事日報 HEADLINE NEWS 9月13日)
http://www.yakuji.co.jp/entry20512.html
毎日新聞(9月9日)
http://mainichi.jp/select/science/news/20100910k0000m040076000c.html
朝日新聞(9月9日 時事通信配信)
http://www.asahi.com/national/jiji/JJT201009090112.html
NHKニュース(9月10日)
http://www.nhk.or.jp/news/html/20100910/t10013897291000.html

9月10日 9:10リンク追加 9月13日 12:20更新 


2010年09月10日 01:29 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    日刊薬業の行政情報に資料が掲載されています。(元記事も更新しました)

    地域薬局と病院・医院などとの本格的連携・役割分担について、今後の議論が大いに期待されます。

    個人的には、OTC睡眠改善薬を販売する場でのアプローチ(検討)も必要ではないかと思います。

  2. アポネット 小嶋

    日薬雑誌の10月号の日薬情報No.220に関連情報が掲載されています。

    内容は経緯と上記記事の解説のみで、富士市薬剤師会のモデル事業(TOPICS 2010.05.29 コメント)が全く触れられなかったことは残念でなりません。

    とつぜん自殺・うつ病対策に薬剤師の活用が求められたわけではなく、とりまく背景や取組の成果があったからこそ今回の活用案が示されたのです。

    そのことに触れることなく、「自殺予防対策のゲートキーパーという、薬剤師の新たな社会貢献を通じ、改めて職能をアピールしていただきたいと考えます」といっても、関心が高まるものではありません。

    なお、薬剤師の活用についての提案があった第6回PTの資料が厚労省HPに掲載されています。

    第6回自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム 資料
    (2010年7月27日開催)
    http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000te7m.html

    薬剤師の活用について提案を行った松本俊彦氏は、向精神薬の乱用を防ぐために

    薬剤師を自殺対策に巻き込む
    • 乱用の疑いある患者・家族への声かけ
    • 主治医への積極的なフィードバック
    • 市販薬剤(OTC)購入への積極的介入
    • 「おくすり手帳」の有効活用

    といった提案を行っています。