医薬品医療機器法(薬機法)改正案は誰のため?

政府は19日、医薬品医療機器法(薬機法)の改正案を閣議決定しています

【厚労省】
第198回国会(常会)提出法律案
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/198.html

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案(平成31年3月19日提出)

こちらも参照を

改正案は、医薬品医療機器制度部会での取りまとめをもとに

  1. 医薬品、医療機器等をより安全・迅速・効率的に提供するための開発から市販後までの制度改善
  2. 住み慣れた地域で患者が安心て医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局のあり方の見直し
  3. 信頼確保のための法令順守体制等の整備

が改正のポイントとなっており、とりわけ2.については、現場に直接関わることのため、紹介したいと思います。

厚生科学審議会 (医薬品医療機器制度部会)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei_430263.html

薬機法等制度改正に関するとりまとめ
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000463479.pdf

いわゆる調剤後のフォローなどを薬機法条文で法制化

  • 薬剤師が、調剤時に限らず、必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行う義務(薬機法第9条の3調剤された薬剤に関する情報提供及び指導等)に追記)
  • 薬局薬剤師が、患者の薬剤の使用に関する情報を他医療提供施設の医師等に提供する努力義務(薬機法第1条の5(医薬関係者の責務)に追記

 第9条の3はまず、「薬局開設者は」となっているので病院の調剤所の薬剤師は非該当の可能性があります。

特定の機能を有する薬局の認定

「患者のための薬局ビジョン」を踏まえ、患者が自身に適した薬局を選択できるよう、都道府県知事の認定により下記「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」名称表示を可能とする。(薬機法6条(名称の使用制限)で法制化)

名称 定 義 要 件
地域連携薬局 入退院時の医療機関等との情報連携や在宅医療等に、地域の薬局と連携しながら一元的。継続的に対応できる薬局
(患者のための薬局ビジョンの「かかりつけ薬剤師・薬局機能」に相当)
患者に配慮した構造設備
・プライバシーに配慮した構造設備(パーティシ∃ンなど)

医療提供施設との情報共有
・入院時の持参薬情報の医療機関への提供
・医師、看護師、ケアマネージヤー等との打合せ(退院時カンフアレンス等)への参加

業務を行う体制
・福祉、介護等を含む地域包括ケアに関する研修(既存の健康サポート薬局の研修制度を活用可能)を受けた薬剤師の配置
・夜間・休日の対応を含めた地域の調剤応需体制の構築・参画

在宅医療への対応
・麻薬調剤、無菌調剤を含む在宅医療に必要な薬剤の調剤
・在宅への訪問

専門医療機関連携薬局 がん等の専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応できる薬局
(患者のための薬局ビジョンの「高度薬学管理機能」に相当)
患者に配慮した構造設備
・プライバシーに配慮した構造設備(パーティシ∃ン、個室その他相談ができるスペース)

医療提供施設との情報共有
地域連携薬局と同様の要件に加え、
・専門医療機関の医師、薬剤師等との治療方針等の共有
・専門医療機関等との合同研修の実施
・患者が利用する地域連携薬局等との服薬情報の共有

○業務を行う体制
・学会認定等の専門性が高い薬剤師の配置

これら特定の機能を有する薬局の都道府県知事の認定は、構造設備や業務体制に加え、機能を適切に発揮していることを実績にとして1年ごとの更新となるので、年間を通しての相当の対応が必要なことはいうまでもありません。(小規模・個人薬局には厳しい。医科の適時調査のようなものもあるかも)

また、認定手続における、申請資料の一部は、既存の薬局機能情報提供制度で薬局が都道府県に毎年行つている報告内容を利用するとともに、既に調剤報酬の算定要件等として薬局が把握し、地方厚生局に提出している事項の活用も検討するとなっているので、調剤報酬とのリンクはほぼ間違いないと思います。

一方「薬局における対人業務の充実のためには対物業務の効率化が必要であるとして、改正法の施行までに、葉剤師自らが実施すべき業務と薬剤師の監督下において薬剤師以外の者に実施させることが可能な業務の考え方について、有識者の意見を聴きつつ整理を行う」としています

さらには、こういう話も

機械による自動化が進んでいるからと言って、40枚規制が30枚になるということはまず考えにくいですね。以前にはこういう報告もありました。

今の個人的な思いです

あと、過去のツイートも貼っておきます

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=335AC0000000145

関連情報:TOPICS
2018.12.14 薬機法等制度改正(案)がとりまとめへ (医薬品医療機器制度部会)


2019年03月19日 18:13 投稿

コメントが4つあります

  1. アポネット 小嶋

    調剤後のフォローについては、

    薬機法第9条の三の5で、次のようなに規定されていました。

    第一項又は前項に定める場合のほか、薬局開設者は、医師又は歯科医師から交付された処方箋により調剤された薬剤の適正な使用のため必要がある場合として厚生労働省令で定める場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に、その調剤した薬剤を購入し、又は譲り受けた者の当該薬剤の使用の状況を継続的かつ的確に把握させるとともに、その調剤した薬剤を購入し、又は譲り受けた者に対して必要な情報を提供させ、又は必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。

    つまり、院内処方で調剤して授与した薬剤についてのフォローは薬機法では規定されないと言うことです。(薬剤師法の規定が適用されるのかもしれない。下のほうのコメントで)

    下記意見には同意です

    任意分業である以上、こういった問題を薬剤師議員は是非質問して欲しいものです。

    (このコメントは23:54に更新しました)

  2. アポネット 小嶋

    特定の機能を有する薬局の要件については、附則の(定義)に示されていました。

    元記事の表にある詳細な要件は今後、厚労省の裁量で決められる省令に委ねられることになります。(これも恐ろしい)

    法律案新旧対照条文(90ページ)
    https://www.mhlw.go.jp/content/000489906.pdf#page=94

    —————————————————————
    第六条の二(地域連携薬局)

    薬局であつて、その機能が、医師若しくは歯科医師又は薬剤師が診療又は調剤に従事する他の医療提供施設と連携し、地域における薬剤及び医薬品の適正な使用の推進及び効率的な提供に必要な情報の提供及び薬学的知見に基づく指導を実施するために必要な機能に関する次に掲げる要件に該当するものは、その所在地の都道府県知事の認定を受けて地域連携薬局と称することができる。

    1.構造設備が、薬剤及び医薬品について情報の提供又は薬学的知見に基づく指導を受ける者(次号及び次条第一項において「利用者」という。)の心身の状況に配慮する観点から必要なものとして厚生労働省令で定める基準に適合するものであること。

    2.利用者の薬剤及び医薬品の使用に関する情報を他の医療提供施設と共有する体制が、厚生労働省令で定める基準に適合するものであること

    3.地域の患者に対し安定的に薬剤を供給するための調剤及び調剤された薬剤の販売又は授与の業務を行う体制が、厚生労働省令で定める基準に適合するものであること。

    4.居宅等(薬剤師法(昭和三十五年法律第百四十六号)第二十二条に規定する居宅等をいう。以下同じ。)における調剤並びに情報の提供及び薬学的知見に基づく指導を行う体制が、厚生労働省令で定める基準に適合するものであること。

    上項の、一年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う。

    —————————————————————

    第六条の三(専門医療機関連携薬局)

    薬局であつて、その機能が、医師若しくは歯科医師又は薬剤(新設)師が診療又は調剤に従事する他の医療提供施設と連携し、薬剤の適正な使用の確保のために専門的な薬学的知見に基づく指導を実施するために「必要な機能に関する次に掲げる要件に該当するものは、厚生労働省令で定めるがんその他の傷病の区分ごとに、その所在地の都道府県知事の認定を受けて専門医療機関連携薬局と称することができる。

    1.構造設備が、利用者の心身の状況に配慮する観点から必要なものとして厚生労働省令で定める基準に適合するものであること。

    2.利用者の薬剤及び医薬品の使用に関する情報を他の医療提供施設と共有する体制が、厚生労働省令で定める基準に適合するものであること。

    3.専門的な薬学的知見に基づく調剤及び指導の業務を行う体制が、厚生労働省令で定める基準に適合するものであること。

    2)前項の認定を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、次の各号に掲げる事項を記載した申請書をその薬局の所在地の都道府県知事に提出しなければならない。

    1.氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名

    2.その薬局において専門的な薬学的知見に基づく調剤及び指導の業務を行うために必要なものとして厚生労働省令で定める要件を満たす薬剤師の氏名

    3.その薬局の名称及び所在地

    4.前項各号に掲げる事項の概要

    5.その他厚生労働省令で定める事項

    3)第一項の認定を受けた者は、専門医療機関連携薬局と称するに当たつては、厚生労働省令で定めるところにより、同項に規定する傷病の区分を明示しなければならない。

    5)第一項の認定は、一年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う。

    —————————————————————

    最近近報じられる、某チェーンが専門薬剤師の養成に躍起になる理由がわかります。

    でも、果たして地域薬剤師にここまでの知識を求める必要があるのでしょうか?。

  3. アポネット 小嶋

    あと、薬機法第2条12で薬局の定義の見直しが行われています・

    「薬局」とは、薬剤師が販売又は授与の目的で調剤の業務並びに薬剤及び医薬品の適正な使用に必要な情報の提供及び薬学的知見に基づく指導の業務を行う場所。

    また薬剤師法第25条の2(情報の提供及び指導)に下記項目が新設されます。
    もしかすると、病院薬剤師の義務はこれに該当するのかもしれません。(院内調剤の外来患者もこれに該当?)

    薬剤師は、前項に定める場合のほか、調剤した薬剤の適正な使用のため必要があると認める場合には、患者の当該薬剤の使用の状況を継続的かつ的確に把握するとともに、患者又は現にその看護に当たつている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。

    遠隔服薬指導については、薬機法第9条の3(調剤された薬剤に関する情報提供及び指導等)の対面の部分に映像及び音声の送受信より相手の状態を相互に認識しながら通話をすることが可能な方法その他の方法により薬剤の適正な使用を確保することが可能であると認められる方法として厚生労働省令で定めるものを含む。が追記されたたけで、詳細は省令で定められることになりそうです

  4. アポネット 小嶋

    薬事日報の記事によると、調剤録に記録することも義務化されるようです。

    条文自体は変わらないんだけど、現時点では該当箇所はここしか見当たらない

    法律案新旧対照条文(329ページ)
    https://www.mhlw.go.jp/content/000489906.pdf#page=333

    (薬剤師法)
    薬剤師は、薬局で調剤したときは、厚生労働省令で定めるところにより、調剤録に厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。

    薬剤師法の省令で規定されることになると、病院薬剤師と薬局薬剤師との違いが出るのでしょうか。現場の負担が増えないよう配慮するらしいけど。

    ちなみに現行は、下記になっているので、ここにどのように追記されるかです。

    薬剤師法施行規則
    第十六条 (調剤録の記入事項)
    http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=336M50000100005_20181031_430M60000100118&openerCode=1#153

    一 患者の氏名及び年令
    二 薬名及び分量
    三 調剤年月日
    四 調剤量
    五 調剤した薬剤師の氏名
    六 処方せんの発行年月日
    七 処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師の氏名
    八 前号の者の住所又は勤務する病院若しくは診療所若しくは飼育動物診療施設の名称及び所在地
    九 前条第二号及び第三号に掲げる事項