スイッチOTCの承認審査が不当に妨げられている(OTC医薬品協会)

 エパデールのスイッチ問題などにより、一気に萎縮・停滞している、医療用医薬品の一般用医薬品へのスイッチ承認ですが、現状を憂慮(?)した日本OTC医薬品協会が厚労大臣に要望書を提出しました。

一般用医薬品(体外診断薬等を含む。)のスイッチ承認審査の迅速実施について(緊急要望)
(日本OTC医薬品協会 2013.10.07/日刊薬業行政情報資料)
http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226628991991

 日本OTC医薬品協会では、これまでもスイッチ化の促進に向けてさまざまな提言を行っていますが、スイッチOTC、特に生活習慣病分野の承認審査が、一部の利害関係者の発言により不当に妨げられているとして、以下の緊急提言を行っています。

  1. 薬事法に基づくスイッチOTCの承認審査については、早急かつ全面的に業務を進めて頂きたい。
    なお、スイッチを行っても、当該医療用医薬品は薬価リストから除かれることはないので、医療の場で支障をきたすことはない。
  2. 厚生労働大臣の諮問機関である薬事・食品衛生審議会において、利害関係者からの強硬な発言等により、昨年末以降、長期にわたり、不当に承認審査手続きが停滞している。 その様なことが再発しないよう以下の措置を検討して頂きたい。
    (ア) OTC医薬品等の承認の可否を審査する委員から、医師会や薬剤師会等の利害関係者を外すこと。 審議会での審査に、利害関係者が入つていることは、欧米先進国では見られないことである。
    (イ) 上記措置を講じた上で、わが国においてもスイッチOTCの承認に当って、日本医師会、日本薬剤師会を含め、生活者や供給事業者等の広範な利害関係者の参加を得て、公開の場での論議を進める米国FDA等で実施している公開討論会(Public hearing)を採用するといった改善策を講じること。
  3. 生活習慣病領域のスイッチOTCの活用では定期的な健診とアドバイスが必要であると考える。スイッチOTCを購入し活用する生活者は、国が勧める健康診断や特定健診等の機会を活用し、医療専門家のアドバイスを得ることを励行させる取組みを、国として進めて頂きたい。

 エパデールのスイッチ問題で、完全に新規成分のスイッチの検討は止まった感がありますが、要望2を見ると、厚労省が新たな承認審査自体を医師会に配慮して事実上ストップさせているように思われます。

 日本OTC医薬品協会の今回の要望書には大いに同意するところですが、やはり問題は、厚労省がOTC医薬品をセルフメディケーションの中でどう位置づけ、どう活用していくか(薬剤師の活用も含め)ということをこれまでに真剣に考えてこなかったことも大きいと思います。

関連情報:TOPICS
 2012.03.01 OTCを活用した薬剤師の新しい役割を検討へ(米FDA)
 2012.03.23 OTCの活用を検討する注目の米FDA公聴会が始まる
 2012.04.23 OTC医薬品の活用を検討する米FDA公聴会(続報)
 2013.01.09 医療機関にまず受診していないとエパデールOTCは買えない
 2013.01.11 一般用医薬品への転用の在り方などに関する質問主意書
 2012.12.28 スイッチOTCについてオープンな議論を求める要望書
 2012.12.07 医薬品の分類についての指針(英医薬品庁)
 2012.11.01 エパデール問題、スイッチへの意義とプロセスの共通認識が必要
 2011.07.29 スイッチOTC医薬品の選定要件は?(厚生労働科学研究)


2013年10月08日 02:37 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    各紙記事の内容が見れないんですが、医師会・薬剤師会共に反発があるようですね。

    特に、2 ア)の「OTC医薬品等の承認の可否を審査する委員から、医師会や薬剤師会等の利害関係者を外すこと。 審議会での審査に、利害関係者が入つていることは、欧米先進国では見られないことである。」というところはひっかかっているみたいです。

    海外の関連委員会のメンバーがのっているページを掲げます

    米FDA:
    Nonprescription Drugs Advisory Committee
    http://www.fda.gov/AdvisoryCommittees/CommitteesMeetingMaterials/Drugs/NonprescriptionDrugsAdvisoryCommittee/default.htm

    Nonprescription Drugs Advisory Committee Roster
    http://www.fda.gov/AdvisoryCommittees/CommitteesMeetingMaterials/Drugs/NonprescriptionDrugsAdvisoryCommittee/ucm106033.htm

    医学部の先生方多いようですが、薬剤師会・医師会の肩書がある方はいないようです。

    豪州TGA:
    Advisory Committee on Medicines Scheduling (ACMS) & Advisory Committee on Chemicals Scheduling (ACCS)
    http://www.tga.gov.au/about/committees-acmcs.htm#membership

    専門委員に加え、各州からの代表が委員になっているようです

    ニュージーランドMedsafe:
    Medicines Classification Committee
    http://www.medsafe.govt.nz/profs/class/MedicinesClassificationCommittee.asp

    一応、医師会・薬剤師会の代表2名ずつとはなっていますが、タミフルが要薬剤師薬になる国ですから、あくまでも下記のプロセスに従って、これは「医師の領域だ」といった観念をいれず、OTCとしての必要性や、どうすれば生活者が安全に使うことができるかといったことが議論の中心になっているようです。(年に2回行われる会議の議事録を見るとよくわかる)

    Medicines Classification Committee – Phases of the classification process
    http://www.medsafe.govt.nz/profs/class/ClassificationProcessPhases.asp

    Medicines Classification Committee Minutes of Previous Meetings
    http://www.medsafe.govt.nz/profs/class/minutes.asp

    ちなみに、今年11月に行われる委員会では、シルデナフィルの要薬剤師薬への変更を求める企業からの申し入れを検討するようです。

    GENDA FOR THE 50th MEETING OF THE MEDICINES CLASSIFICATION COMMITTEE TO BE HELD IN THE MEDSAFE BOARDROOM,LEVEL 6, DELOITTE HOUSE, 10 BRANDON STREET, WELLINGTON on TUESDAY 12 NOVEMBER 2013 AT 9:30am AND WEDNESDAY 13 NOVEMBER 2013 AT 9.30am
    http://www.medsafe.govt.nz/profs/class/agen50.htm

    Sildenafil – proposed reclassification from prescription medicine to restricted medicine (Silvasta, Douglas Pharmaceuticals Limited)
    http://www.medsafe.govt.nz/profs/class/mccAgenNov2013/6.7-MCC-Sildenafil-Submission.pdf

    (タミフルスイッチの実績や、英国PGDの事例を示している)