OTC薬の乱用・依存の実態(厚生労働科学研究)(Update2)

 これも、国立精神・神経医療研究センター・薬物依存研究部のサイト(http://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/)で見つけた最新の厚生労働科学研究です。(現時点ではまだ厚生労働科学研究成果データベースには掲載されていません。)

薬剤師を情報源とする医薬品乱用の実態把握に関する研究
http://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/drug-top/data/researchSHIMANE2011_1.pdf
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000303tz-att/2r985200000303yp_1.pdf
(厚労省検討会で配布されたもの)

 この研究は、OTC 薬の大量・頻回購入の実態の一端を明らかにすること目的に、OTC 薬依存者、チェーンドラッグストア勤務薬剤師、うつ自殺予防対策の「富士モデル事業」における薬剤師連携に携わる薬剤師を対象に、個別面接(グループインタビューも含む)による情報収集、電話・メールによる情報収集、対象者から得た各種資料とする面接調査を実施したもので、インタビューによる発言やエピソードををまとめたものがOTC薬の乱用や依存、販売の実態を生々しく伝えています。

このうち、勤務薬剤師の次のような声やエピソードが目に留まりました。

  • 30~40代の女性の方で、定期的に買いに来るお客さんがいます。いつもマスクをしていて、とても細い方です。以前『どうしてこんなに必要なのですか?』とお聞きしたところ、『家族で使うためです』と言われました。(タケダ漢方便秘薬)
  • ブロン同様に販売数を制限していますが、3~4箱を買い求める方が多いです。大量購入を希望するのは20~30 代の女性が多いのではないでしょうか。(ロキソニンS)
  • 薬局での販売方法もおかしいと感じているのですが、3本パックで販売していたり、5本セットで買うと安くなったりします。陳列場所も小児用なのに成人用のコーナーに置いてあります。(新小児ジキニンシロップ)
  • 登録販売者の中にはやる気のある方もたくさんいらっしゃいますが、やはり医療従事者ではないので、『いかに売るか』ということが主眼とされ、OTC 販売を適正使用の観点から捉えている方はほとんどいないように思います。
  • 今回の話にでてきたようなOTC 薬を大量に頻回に売る際には第2類医薬品であっても薬剤師による対面販売を義務付ければ、介入のチャンスはあると思います。
  • まずは乱用のリスクがあるOTC 薬に啓発パンフレットなどを貼って販売するのはいかがでしょうか? 健康被害に関する情報だけでなく、薬物依存の相談先に関する情報が書いてあった方がよいですね

 今回の調査を受け、研究者らは、

  1. 薬剤師が購入時に症状や使用目的を確認する「声かけ」は、大量・頻回購入の抑止力となっている可能性がある。
  2. 現在、努力義務とされている「指定第2類医薬品」の対面販売を義務化することで、薬剤師が大量・頻回購入者に積極的に関われる可能性がある。
  3. OTC 薬の大量・頻回購入時に、薬物乱用・依存のリスクや相談援助機関の情報が記載されたリーフレットを配布することで薬物乱用防止につながるかもしれない。

としたうえで、 薬剤師(特にチェーンドラッグストア勤務薬剤師)向けのOTC 薬の乱用・依存に関する研修や、薬局薬剤師のOTC 薬の乱用・依存に関する薬剤師の知識の程度や、現場での実践(頻回購入者への声かけ経験など)に関する疫学調査が必要だとしています。

 海外では、今回指摘された取り組みは既に行われていることは以前紹介しました。まずは、買う側・売る側・救急搬送・OTC依存症患者などの実態調査をさらに詳しく行うことが必要でしょう。

関連資料:(これらの存在は知らなかった)
薬剤師の薬物乱用・依存に対する認識と薬局における一般医薬品の販売実態について(概要)
(文部科学研究(若手B)、2006 年度研究実績報告書,2006.)
http://kaken.nii.ac.jp/d/p/17790398/2006/3/ja.ja.html
https://kaken.nii.ac.jp/ja/report/KAKENHI-PROJECT-17790398/RECORD-177903982006jisseki/

【第65回日本公衆衛生学会総会(2006年10月25~27日、富山県)報告】
「薬物乱用の対象となっている一般用医薬品はどのように販売されているか」
(APARI フェローシップ・ニュース NO.20 新年号)
http://www.apari.jp/npo/fellowship/20.pdf#page=4

 この 「APARI フェローシップ・ニュース」(http://www.apari.jp/npo/fellowship.html)は、特定非営利活動法人 アジア太平洋地域アディクション研究所(APARI:Asia Pacific Addiction Research Institute)(http://www.apari.jp/npo/)が発行するニュースレターで、1、2、3、7、8、24、29、32、35、37、42号などにも、体験記などブロンや咳止め薬関連の記事が掲載されているようです。

関連情報:TOPICS
  2010.06.04 コデイン配合OTC薬販売規制、鎮咳去痰薬のみで十分?
  

7月30日 10:20 リンク追加 2016.12.08リンク修正


2012年07月30日 00:50 投稿

コメントが2つあります

  1. 業界団体の反対にあって無理でしょうね。特にドラッグチェーン店は。やるならまず、雑貨販売の医薬品登録販売者は廃止したほうがよろしいかと思います。

  2. アポネット 小嶋

    共同研究者にスギメディカルの方が名を連ねているので、薬剤師がきちんと管理をしている大手ドラッグチェーンは協力してもらえるような気もしますが。

    ご指摘のように私も、ホームセンターなどの薬剤師がいない、新規参入したホームセンターなどの異業種の店舗に勤務している登録販売者が、この問題についてどのように考え、向き合っているかは興味深く、是非しっかり調査をしてもらいたいと思います。

    記事を書いた後、思い出したのですが、英国では去年、薬局業務について研究を行っている“The Pharmacy Practice Research Trust”(http://www.pprt.org.uk/)というサイトに、依存乱用者本人や現場スタッフへのインタビューをまとめた詳細なレポートが発表されています。(分量が膨大で、まだ内容を理解・把握し切れていませんが、日本でもこれくらい詳細な調査結果としてまとめてもらいたい)

    ‘Respectable Addiction’
    – A qualitative study of over the counter medicine abuse in the UK(2011.7)
    http://www.pprt.org.uk/Documents/respectable_addiction_richard_cooper_2011.pdf