後発医薬品の使用状況調査の結果概要(速報値)

  厚労省は、25日に開かれた中央社会保険医療協議会・診療報酬改定結果検証部会に、今年7月〜8月にかけて行った後発医薬品の使用状況調査の速報値を報告しました。

第26回中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会(2009年11月10日開催)
 資料(厚労省 11月11日掲載)
  http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/s1110-5.html
 資料2-6:後発医薬品の使用状況調査 結果概要(速報)(厚労省 11月11日掲載)

なお、今回の調査の調査表は、第24回検証部会の資料に掲載されています。(p53〜)

第24回中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会資料(2009年6月24日開催)
 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/06/dl/s0624-9b.pdf

 今回の調査は保険薬局における「『後発医薬品への変更不可』とされた処方せんの受付状況」「医療機関における処方せん交付時の状況」「患者における後発医薬品に対する意識」等の把握のために行われたもので、全国から無作為で抽出された保険薬局1,000施設、診療所2,000施設、病院1,000施設を対象に行われた他、これらの施設に勤務する医師、薬局を利用する患者への調査も行われています。(有効回収数566、有効回収率56.6%)

 保険薬局の調査は、2009年7月21日〜27日の1週間に取り扱った処方せんについて、処方せん枚数、後発医薬品の調剤状況等を尋ねています。(有効回収数372、〔〕内の数字は昨年度の厚労省調査・期間は1ヶ月、()内の数字は昨年9月に日薬が調査をおこなったもの)

処方せんベース
(総取り扱い枚数132,045枚)
(1薬局あたりの355枚)
総枚数
(n=372)
全処方せんに占める割合 「後発医薬品への変更がすべて不可」欄に処方医の署名等がない処方せんに占める割合
1)全処方せんのうち、「後発医薬品(ジェネリック医薬品)への変更がすべて不可」欄に処方医の署名等がある処方せん 41,534枚 31.5%
[34.4%]
(42.9%)
  2)1)のうち後発医薬品を銘柄指定している品をる処方せん 18,272枚 13.8%
[14.3%]
(11.5%)
3)全処方せんのうち、処方せん内容の一部について変更不可としている処方せん 2,294枚 1.7%
[1.4%]
(3.4%)
4)全処方せんのうち、「後発医薬品への変更がすべて不可」欄に処方医の署名等がない処方せん 90,511枚 68.5%
[65.6%]
(59.8%)
  5)4)のうち、処方せんに記載されたすべての銘柄について後発医薬品が薬価収載されていないために、後発医薬品に変更しなかった処方せん(後発医薬品のみが記載された処方せんを含む) 10,107枚 7.7%
[6.7%]
(6.8%)
11.1%
[10.2%]
(11.3%)
6)4)のうち、今回は先発医薬品を後発医薬品に変更しなかったが、以前に一度、先発医薬品から後発医薬品に変更し、これを受けて処方医が、当該後発医薬品の銘柄処方に切り替えた処方せん 3,149枚 1.6% 3.5%
7)4)のうち、後発医薬品のみが記載された処方せん(上記6)に該当するものを除く) 3,689枚 2.8% 4.1%
8)4)のうち、以下の理由により、後発医薬品に変更できなかった先発医薬品が1品目でもある処方せん1品目でも後発医薬品の銘柄変更調剤をした処方せん
  a)先発医薬品の含量規格に対応した後発医薬品がなかったため 14,015枚 10.6%
[9.1%]
15.5%
[13.9%]
b)先発医薬品の剤形(ただし、OD錠除く)に対応した後発医薬品がなかったため 4,038枚 3.1%
[1.7%]
4.5%
[2.6%]
c)先発医薬品の剤形がOD錠であり、それに対応した後発医薬品がなかったため 706枚 0.5%
[0.4%]
0.8%
[0.7%]
9)患者が希望しなかったために、すべて後発医薬品に変更しなかった処方せん 9,658枚 7.3%
[5.8%]
(4.8%)
10.7%
[8.9%]
(8.1%)
10)4)のうち、1品目でも先発医薬品を後発医薬品に変更した処方せん(以前に一度変更し、今回も同様に変更した場合も含む) 4,965枚 3.8%
[4.0%]
(3.4%)
5.5%
[6.1%]
(5.6%)
11)4)のうち、1品目でも後発医薬品の銘柄変更調剤をした処方せん 370枚 0.3%
[0.3%]
(0.1%)
0.4%
[0.5%]
(0.2%)
12)全処方せんのうち、1品目でも後発医薬品を調剤した処方せん 55,792枚 42.3%
[44.0%]
(42.9%)
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 上記の表をみてわかるように、1品目でも先発医薬品を後発医薬品に変更した処方せんの割合は、「後発医薬品への変更がすべて不可」欄に処方医の署名等がない処方せんの5.5%(総処方せん枚数に対してはの3.8%)でした。また、全処方せんのうち、1品目でも後発医薬品を調剤した処方せんの割合は42.3%とほぼ前年と変わりませんでした。

  一方、「後発医薬品の使用に関する考え」について尋ねると、「後発医薬品の説明・調剤にはあまり積極的には取り組んでいない」と答えた薬局が23.2%と前年の33.5%からは減少し、薬局は積極的に努力していることがうかがわせます。

なお、後発医薬品の使用にあたっての問題点・課題は以下のような点があるとしています。

【後発医薬品メーカーについて】

  • 後発医薬品メーカーが多すぎる。どのメーカーを信頼できるのか分からない。メーカーを選ぷ基準が分からない。
  • 後発医薬品メーカーのMRの訪問がなく、情報が不足している。
  • 先発医薬品大手メーカーは、自社プラントで合成から製剤まで製造の足どりがはっきりしている。しかし後発医薬品のみのメーカーは、自社で全て行っているのか不明である。
  • 後発医薬品メーカーの副作用モニタリング等の整備が必要だ。

【医師との関係】

  • 医師の中には、「後発医薬品への変更可能な処方せんを出すが、変更はしないように」と口頭で指示してくるケースがある。
  • 医師側で後発医薬品への変更がされていればスムーズに進むと思う。薬剤師が説明しても「先生の出したままで」という意見をたくさん聞く。
  • 後発医薬品に変更する際に薬剤師が直接医師と会話できればスムーズに事が運ぶと思う。

【薬局の在庫負担】

  • 後発医薬品の在庫数増加による経済的リスクが増加している。
  • 分錠をしてくれる卸が少ないため、少量で備蓄することができない。患者の求めに応じて後発医薬品をすぐに供給できない。 /等

【薬局の負担】

  • 後発医薬品に変更した場合の医療機関への情報提供が負担である。
  • メーカーからのデータの公表(溶出試験等)が遅いため、採用薬を決めるのに、時間がかかる。また、レセコンへの反映にも時間を要するために、薬局の従業員への教育が手間取ってしまう。
  • 後発医薬品を選択した患者と先発医薬品を選択した患者を区別して、毎回きちんと調剤するのにはかなりの神経を使う。非常に調剤過誤を起こしやすい状態である。何重にもチェック機能を入れて過誤を防ぐようにしている。

【処方せん様式】

  • 後発医薬品の使用を促進するためには処方せんへの薬剤名記入は、商品名ではなく一般名記入を基本にすべきだと思う。
  • 処方せんの「後発医薬品への変更がすべて不可」欄をなくし、薬局サイドで自由に後発医薬品へ変更できるようにして欲しい。

【後発医薬品の品質】

  • ある特定の薬剤では効果が出ずに、先発医薬品に戻すケースが続いている。
  • 貼付薬などでは、ベトベト感、使用感等についても患者から指摘されたものがある。
  • 抗癌剤などの品目では同等性の評価項目を血中濃度や溶出性試験だけでなく、臨床評価 での効果確認、副作用発現頻度に関する報告も含めて欲しい。
  • 学会等で後発医薬品の安定性、同等性(薬効)のネガティプなデータがたくさんある現況で薬剤師が後発医薬品に進んで変更しようとは思わない。

【患者の希望】

  • 患者の後発医薬品に対する不安感というものが多く残っていると日々の業務で感じる。 特に慢性疾患で何十年も同じ薬を服用している患者に多いような気がする。
  • 金額が変わらないのであれば、先発医薬品を希望する1割負担や負担なしの患者がいる。
  • 後発医薬品を知っている人は後発医薬品を希望するが、知らない人は、説明しても聞く 耳もたずといった感じで希望しない。高齢者ほど後発医薬品の使用頻度は低く、興味を 持ってくれない。
  • 平戒20年4月以降はそれ以前と比較すると明らかに「後発医薬品」「ジェネリック」と いう言葉は浸透し、後発医薬品の使用量も増えている。

関連情報:TOPICS
  2009.03.26 処方せん様式の変更でも後発医薬品の使用は進まず
  2008.07.10 平成19年度後発医薬品の使用状況調査報告書
  2007.11.08 後発医薬品への変更進まず、処方せん書式の変更も視野に

参考:【後発品特別調査公表】未変更は66%‐「薬局の対応不足」解消されず
     (薬事日報 HEADLINE NEWS 11月12日)
     http://www.yakuji.co.jp/entry17240.html

11月11日 19:10 リンク再設定 12日 16:40 リンク追加


2009年11月11日 15:11 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    最終的な報告書が、2010年5月26日開催の中医協の診療報酬改定結果検証部会で示されています。

    後発医薬品の使用状況調査報告書
    http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/05/dl/s0526-7g.pdf