後期高齢者医療、お薬手帳の確認を義務付けへ

 28日、中医協の診療報酬基本問題小委員会が開かれ、来年4月より始まる後期高齢者医療のうち、「薬歴管理」や、外来における継続的な医学管理の方法について、課題や論点が示されました。

第112回中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会(2007年11月28日開催)
    資料(WAM NET 11月29日掲載)

 このうち、「薬歴管理」については、患者の服薬履歴の確認・管理を医療機関や薬局に義務づける案が示されています。即ち、「お薬手帳」を義務化し、医師の処方時、薬局での調剤時に服用薬の確認を行うとともに、院内処方も含めて、薬剤交付時に処方薬の手帳への記載を義務付けることになりそうです。(薬剤服用歴管理料と薬剤情報提供料は統合されそうです) 病院薬剤師には負担になるのではないでしょうか。

 CBニュースによれば、今回の提案について医師会の委員は、「義務付けと簡単に言うが、ペナルティを科すという意味か。方向性には反対しないが、現場のことを考えてほしい」と答え、「義務化」という表現については今後継続審議になっています。

「薬歴管理」等について~課題と論点
  • 外来医療を受ける後期高齢者では、服用している薬剤の種類が多いことに加え、入退院を繰り返すなど服薬に関わる医療関係者も多くなることから、薬の相互作用や重複投薬に留意する必要がある。
  • そのため、服用している薬剤の情報を集約し、それを医療関係者(医師、歯科医師、薬剤師及び看護師)や患者自身が確認できるような方策を進めることが重要である。
  • 現在、そのような方策の1つとして、多くの薬局において、調剤するごとに薬剤名や注意事項などを1冊に記載する「お薬手帳」を活用しており、このような取組をより徹底していくことについて、診療報酬上の評価の在り方を検討することとしてはどうか。また、院内処方により、薬剤を直接患者に交付する場合についても、 同様の取組を進め、その評価の在り方を検討することとしてはどうか。
  • さらに、通院可能ではあるが、認知機能の低下などの理由で服薬の 自己管理が十分にできない患者に対する薬局の服薬支援の取組につい て、診療報酬上の評価の在り方を検討することとしてはどうか。
「薬歴管理」等について~具体的な取組の評価
  • 薬の相互作用や畢複投薬を防ぐため、薬局及び医療機関において、調剤するごとに薬剤の情報や注意事項などが「お薬手帳」に経時的に記載されることとなるような診療報酬体系とすることを検討してはどうか。
     具体的には、薬局における調剤の場合、薬剤服用歴管理料と薬剤情報提供料を統合するとともに、その算定要件として、「お薬手帳」への薬剤の情報や注意事項などの記載を義務付けることを検討してはどうか。
  • また、薬の相互作用や重複投薬の防止をより推進するため、医師及び薬剤師は、処方又は調剤に際して、「お薬手帳」に記載された薬剤の情報を確認するなど、患者の現在の服薬状況及び薬剤服用歴を把握することを義務付けることを検討してはどうか。
  • 認知機能の低下などの理由で服薬の自己管理が困難な外来患者に対しては、現在も、薬剤師が、処方せんに基づく調剤時の薬の一包化や服薬指導を行っているが、このような薬剤師の取組を一層推進するために、患者が持参した調剤済みの薬剤であっても、薬局において整理し、服薬カレンダーの活用等により日々の服薬管理を支援した場合には、診療報酬上評価することを検討してはどうか。

 また、この後期高齢者医療制度では、薬剤も含めた包括化の可能性が伝えられてきましたが、厚労省が示した案では、包括化は、基本診療料、検査(患者の病状の急性増悪時に必要な検査等のうち高額なものは別途算定可)、処置、画像診断のみで、注射や投薬については出来高払いとする案が示されています。

 一方注目点としては、一人の医者が基本的な日常生活の能力や慢性疾患の病状等に加え、患者の病歴、受診歴や服薬状況、他の医療機関の受診状況等も把握するような仕組みが必要として、病名などの基本情報、計画的に実施する検査等を記した「高齢者総合計画書」というもののを患者ごとにつくることが検討されています。

(いずれも出典は、第112回中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会資料3)

 厚労省では、この「高齢者総合計画書」を、継続的な医学管理が必要な疾患(高血圧性疾患・糖尿病・高脂血症・喘息など)の75歳以上の患者さん一人一人に交付するとしていますが、こういった一連の方向性に対して日医の委員は難色を示したようです。

 もし、これが服薬指導の際に活用できれば、情報の共有方法として有意義なものになるに違いないと思いますが、文書交付に伴う医師の負担増は間違いなく、電子化をするなど医師の負担を少なくしないと実現は難しいのではないかと思われます。

 さらに、同日開催された中医協の総会では、今年9月に行われた薬価調査の結果が示されています。

第116回中央社会保険医療協議会総会(2007年11月28日開催)
    資料(WAM NET 11月29日掲載)

 薬価との乖離率は6.5%で、次回の薬価改正では4.5%の引き下げが見込まれます。

関連情報:TOPICS 2007.09.05 後期高齢者医療の診療報酬体系の骨子(案)が示される

参考:
CBニュース11月28日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/13282.html 
日本経済新聞11月29日
産経新聞11月28日
日刊薬業ヘッドラインニュース 11月29日 

11月30日 15:30更新 12月1日1:10更新


2007年11月29日 10:30 投稿

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