近くスイッチ品としての製造承認が審議される見通しの緊急避妊薬ですが、緊急避妊薬を販売する薬局等の薬剤師を対象とした研修の在り方や研修教材が厚労省の研究班によってまとめられ、このほど報告書が公開されています
【2024厚生労働科学特別研究】
緊急避妊薬の薬局販売に備えた薬剤師研修用資材の作成
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/178178
教材は試験販売の研究事業の薬剤師向けの研修で使われたものを改変し、日本薬剤師研修センターの e-learning システムで提供可能な動画として次の6つのテーマで作成されたそうです。
テーマ | 研修項目 |
---|---|
教材1 月経、月経異常、ホルモンの調節機序 (スライド 19 枚、約 19 分間) |
1. 月経・排卵と内分泌 2. 女性ホルモンと子宮内膜(消退出血、破綻出血) 3. 月経周期の異常とその原因 4. 月経量の異常、月経随伴症状 |
教材2 妊娠と中絶 (スライド 17 枚、約 19 分間) |
1. 射精~妊娠成立まで 2. 月経周期と排卵 3. Fertile window 4. 着床~妊娠 5. 妊娠検査薬 6. 異常妊娠 7. 妊娠週数の数え方と中絶期限 8. 人工妊娠中絶 9. 堕胎罪と母体保護法、配偶者同意 10. 予期せぬ出産を防ぐ |
教材3 日本における妊娠の現状と避妊法の選択 (スライド 30 枚、約 30 分間) |
1. 日本における妊娠の転帰 2. 予期せぬ妊娠の現状と背景 3. 各種避妊法の効果、避妊法の選択 4. OC の避妊機序 5. OC の飲み忘れへの対応、EC 必要性の判断 6. OC の副作用とその対応 7. OC のベネフィットと普及の意義 |
教材4 緊急避妊(スライド 28 枚、約 27 分間) |
1. UPSI 2. 緊急避妊法 3. Fertile window 4. 緊急避妊薬の作用機序 5. 緊急避妊薬要否および適否判断(妊娠の否定) 6. 禁忌、相互作用、妊娠中の ECP 服用に対する考え方 7. 緊急避妊薬の効果の判定 8. 72 時間を超える場合、Cu-IUD、LNG-IUD |
教材5 Sexual and Reproductive Health and Rights (SRHR) (スライド 32 枚、約 37 分間) |
1. SRHR とは 2. 性暴力とその対応(とくに証拠保全等の機会逸失防 止) 3. DV(性的 DV 含)とその対応 4. 性的搾取、避妊への不協力 5. 性感染症 6. 性教育 |
教材6 オンライン診療に伴う緊急避妊薬の調剤について (スライド 31 枚、約 20 分間) |
1. はじめに 2. 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の記載 3. 薬局における調剤の手順について 4. 緊急避妊薬の販売・調剤における薬剤師の役割~試験 販売の事業を通じて ~ 5. おわりに |
さらに、教材1~教材5について、受講者の理解を確認するための試験問題も作成したとのこと。
そして、研修修了者の管理は修了者による申請に基づいて厚生労働省が情報の管理・更新等を行うことが適切だとしています。
研究者らはこれらの内容について、オンライン診療に伴う調剤における学習内容としても適している他、店舗販売業においても、調剤の手順等を理解しておくことが望ましいとしています。
また、妊娠・避妊に関する知見を全国の薬局等の薬剤師が身に付けることで、プレコンセプションケアの推進、健康行動の促進、性犯罪・性暴力を防ぐための啓発等につながることが期待できるとしています。
スイッチ品が発売にあたっては、これら資材での研修が販売の条件となりそうですが、特別な薬ではないのに、こういった学習をどこまで必須とするかは意見が分かれるところです。
研修修了者の名簿化で、地域でどの薬局・ドラッグストアが販売しているかを見える化する狙いがあると思いますが、研修をいわば義務化することで、うちは関係ないから置かない、置きたくないという薬局を増やし、かえってアクセスを悪くする懸念もあります。
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2025年07月08日 10:25 投稿