地方自治体による病院等医療施設前の薬局用地売却に関する質問主意書(Update2)

 TOPICS 2013.04.08  のコメントで紹介しましたが、民主党・無所属クラブの柚木道義衆院議員の質問主意書です。ようやく質問本文がアップされたので紹介します。

地方自治体による病院等医療施設前の薬局用地売却に関する質問主意書
(衆議院・質問主意書提出年月日 平成25年 5月22日 答弁書受領年月日 5月31日)
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/183084.htm

 栃木県足利市を皮切りにして、兵庫県内の地方自治体などで、公立病院前の用地を薬局に高額で売却する例が相次いでいるところである。また、愛知県名古屋市でも、八事日赤前、中村日赤前、桜山(市立大学病院前)、市役所(医療センター前)の市営地下鉄四駅の中に薬局スペースの借地権を公募入札し、条件として一つの会社が四駅全部を落札するとしていると聞く。

 このように地方公共団体が薬局に「薬局用地」をめぐって高額入札を企図した用地売却を繰り返すことは、財政規律を考慮することなく一攫千金的な要素を公共財政に持ち込むことにつながり、地方自治の健全性を道徳的な観点から失墜せしむものと考える。病院建設など公共財の建設については、充分な財政計画の下に財政状況に応じた建築計画を立てなければ、後年にいたって病院経営が立ち行かないこととなり、結果として地域住民の医療受給に著しい悪影響を与えかねないものと考える。総務省においては、地方自治法では、一般競争入札においてその金額等に制限をかけることができない故に、こうした高額入札が続くことはいたしかたないという見解であることは、充分に承知するところであるが、地方自治の在り方として、市有地に病院建設などのような付加価値をつけて関係者に高額で販売するような姿は、かつての「地上げ屋」を彷彿させるようであり、いささか節操を欠くという意見も聞かれるところである。総務省としては、こうした薬局への用地売却や借地権の売却等にかかる昨今の高額な売却の実態についてどのように考えるのかお示し願いたい。

 また、国は、これまで医薬分業を推進し、いわゆる「門前薬局」や「第二薬局」のような集約型の薬局ではなく、面分業といわれる「かかりつけ薬局」を志向してきたものと理解するものであるが、今般の自治体病院の薬局用地売却事例や名古屋市営地下鉄における借地権売却の事例を鑑みるに、少なくとも地方自治体自らが、国の施策に反し高利益体質の営業形態たるいわゆる「門前薬局」を設置するようなことを誘発していると理解せざるを得ない。総務省は、こうした現状をどのように考えるのかご意見をお示し願いたい。 また、厚生労働省に問うが、自治体病院において薬局用地売却が公然と行われ、医薬分業の本旨である「かかりつけ機能」と「服用薬のチェック機能」がおろそかになるよう誘導されていることについての見解如何。併せて、面分業を推進させるためにどのような施策を講じているのかについて説明願いたい。

答弁書

 地方公共団体における財産処分については、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)に基づき、それぞれの地方公共団体の判断により行われているものであり、政府としては、個々の財産処分について承知する立場にないが、地方公共団体が土地等の財産の売却や貸付けを行う場合には、同法第二百三十四条の規定に基づき、原則として一般競争入札の方法により、予定価格の制限の範囲内で最高の価格をもって申込みをした者と契約を締結しているものと認識している。

 医療機関の近隣において地方公共団体が売却又は貸付けを行った土地に薬局が開設されることとなることについては、それぞれの地域における医療機関及び薬局の立地状況及び利用状況等を踏まえ、様々な評価があり得るものと考えており、一概に見解をお示しすることは困難である。

 お尋ねの「面分業」の推進については、一般的に使用頻度の少ない医薬品を備蓄し、管轄地域内の薬局の求めに応じてこうした医薬品を供給すること等を目的として都道府県薬剤師会が設置する医薬分業推進支援センターの施設設備の整備に関する経費の一部を補助することや、一定品目以上の医薬品の備蓄を行い、患者ごとに薬剤服用歴の記録を作成するなど一定の基準を満たした保険薬局について調剤報酬において評価することとする等の施策を講じているところである。

政府 自治体の薬局用地売却「見解を示すのは困難」
(RISFAX 2013.06.03)
http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=41427

 いつもながら、逃げの常套の答弁ですね。

 この内容だと、兵庫のケース(TOPICS 2013.04.08)のように自治体(正確に言うと自治体ではないが)が10億円をふところに入れても問題なしということのようです。

 また、名古屋市の同様のケースというのも、この質問主意書で指摘されていたんですね。

常態化する医薬分業利用の「錬金術」
地方自治体が薬局に用地売却・貸与で資金捻出、新たに名古屋でも
(RISFAX 2013.05.23)
http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=41334

 なお、柚木衆院議員は下記のような質問主意書も提出しています。(現時点では、質問・答弁アップされていません)

民間病院等が移転及び新設等に伴い近隣の薬局用地等利害関係のある法人等に売却するビジネスモデルに関する質問主意書
(衆議院・質問主意書提出年月日 平成25年5月31日)
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/183090.htm

 保険指定を受ける民間病院等が、移転あるいは新設にともない取得した土地に公道等を整備した上で、当該病院等が保有する用地を薬局等利害関係のある法人等に販売し、利益を得るようなビジネスモデルが展開されるとして、それは健康保険法及び医療法の謳う崇高な精神とは相反するものと考えるが政府の見解如何。

 あるいは、民間病院等があらかじめ移転等を考える用地を取得し、公道を挟んだ土地や周囲の土地も併せて取得し、薬局、診療所、後方支援施設等利害が及ぶ施設等に購入価格よりはるかに高額な価格で売買する行為が認められるのかについて政府の見解如何。

答弁書

お尋ねの件については、詳細な事実関係が明らかでないことから、健康保険法(大正十一年法律第七十号)又は医療法(昭和二十三年法律第二百五号)に違反するかどうか等について、一概にお答えすることは困難である。

 なお、医療法人が当該医療法人が開設する病院等を建設するために必要な土地を購入すること及び利用する予定のない土地を売却することについては、健康保険法及び医療法上禁止されていない。また、医療法人が行うことができる業務の範囲については、同法第三十九条等に定められており、土地の売買等を業として行うことは認められていない。

関連情報:TOPICS
 2013.04.08 地方都市で薬局用地78坪が何と10億円で落札
 2010.12.21 究極の門前薬局、最高使用料は月額367万5千円
       (当時いろいろあったんですよね。上記関連記事は→リンク

6月10日 10:25更新 2015年3月8日リンク再設定


2013年06月04日 13:33 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    答弁書がアップされましたので、元記事を更新しました。

    地元の事情っていうのは許されちゃうんですね。

    公的がらみなら、偽装したとしてもOKってことみたいですね。

  2. アポネット 小嶋

    地元の話なので紹介するのをやめようと思っていましたが、こういうこともOKになっちゃうんでしょうね。

    医療センターと広場整備9.5億 新市民病院と一体化 院外薬局は事業者が設置 小山市緑の健康づくりの森基本計画
    (日刊建設新聞 2012.10.19)
    http://www.jcpress.co.jp/wp01/?p=8337

    小山市緑の健康づくりの森事業(小山市)
    http://www.city.oyama.tochigi.jp/gyosei/keikakushishin/midorinokenkoudukuri.html

    院外薬局基本計画
    (小山市 緑の健康づくり森基本計画)
    http://www.city.oyama.tochigi.jp/gyosei/keikakushishin/midorinokenkoudukuri.files/kihonkeikaku.pdf#page=37

    新市民病院や (仮称)健康医療介護総合支援センター(保健分館)の夜間休日急患センター等との連携強化や利便性向上に向け、院外薬局用地を整備し民間による施設整備を図ります。

    新市民病院の 予測外来患者数から 必要となる院外薬局用地は3区画とします。

    兵庫のように、きっと多くの薬局・企業が入札に群がるんでしょうね。