一般用医薬品のネット販売、ほぼ全面解禁か

 昨日から各紙が伝えていますが、流れは第一類のごく一部を除き解禁という方向のようです。

市販薬:ネット販売、99%解禁へ 政府最終調整、1類の一部は除外
(毎日新聞 6月3日配信)
http://mainichi.jp/select/news/20130603ddm001040059000c.html

薬ネット販売 一部除き解禁の方向で調整へ
(NHK NEWS WEB 6月4日4時12分配信)
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130604/k10015048421000.html

読売新聞(6月4日3時15分配信)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130604-OYT1T00199.htm

大衆薬、ネット販売を解禁へ-政府が具体策検討
 (日刊工業新聞 6月4日)
 http://www.nikkan.co.jp/news/nkx1020130604agaw.html

第1類OTC薬「一部対面限定」案が軸
ネット販売 政府内でなお綱引き、関係閣僚で協議し結論へ
(RISFAX 2013.06.04)
http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=41441

 やはり、カギは第8回検討会の資料7だったようです。(この時点で、第一類の一部も含めた解禁を視野にしている(してしまった)のではないかと思う)

一般用医薬品(第1類、第2類)の主な種類について
(第8回検討会 資料7)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000031khv-att/2r98520000031kti.pdf

 第一類については、わざわざ次のように分類していました。

1.一般用医薬品としての安全性評価が確立されておらずリスクが不明のもの
※一般用医薬品としての使用成績についての調査期間(通常3年)に1年(評価のために必要な期間)を加えた期間を経過していないもの

【例】
「ロキソニンS」解熱鎮痛薬
「アレグラFX」鼻炎用薬

2.日常に支障を来す副作用のおそれがあり、特に注意が必要なもの
※上記1の調査期間+1年が経過し、評価が終了しているもの

㋐購入者側の判断による使用では重大な疾患を見逃すおそれがあり、薬剤師が、購入者側から最大限の情報収集を行い、受診勧奨の有無を判断する必要性が特に高いもの

【例】
「ガスター10」胃酸分泌抑制薬
「アクチビア軟膏」口唇ヘルペス用薬

㋑上記㋐及び下記㋒以外のもの(薬剤師による十分な説明(チェックリストの充実等)により、適正使用が可能なもの)

【例】
「リアップ」発毛剤
「ニコチネルパッチ10」禁煙補助剤

㋒劇薬等
【例】
「ガラナポーン」勃起障害等改善薬

 新聞報道を総合すると、おそらく、リスク評価が終わっていない1のみを禁止として、2はネット販売OKということになるのではないかと思います。

ただ、新聞を見ると気になる記述も

  • これまでの規制を温存すれば、国民自身による健康管理を促して医療費の削減につなげるという国の方針にも逆行しかねず、ネット販売規制の大幅緩和は避けられない情勢にあった。(日刊工業)
  • 利用者の安全性に配慮しつつ、消費者の利便性を向上させて経済活性化につなげたい考えだ。(読売)

 一般用医薬品が必要な人に新たな方法で供給されることについては否定はしませんが、私は医療費削減(=セルフメデフィケーション)や経済活性化のためにネット販売を評価するような記事には賛同できません。

 99%解禁の記事を最初に打った毎日新聞は、早くも社説で取り上げています。

社説:薬のネット販売 安全性をどう守るか
(毎日新聞6月4日 2時30分配信)
http://mainichi.jp/opinion/news/20130604k0000m070151000c.html

  • 報告された副作用被害と販売時の説明不足との因果関係も実証されているわけではない。
  • 最高裁判決以降、ネット販売は野放図状態になっているともいわれる。悪質な業者をチェックして締め出す仕組みや、副作用の監視や報告体制の充実、若年者らを対象にした薬に関する教育も必要ではないか。
  • 高齢者人口が増え、複数の慢性疾患を持った人がいくつもの薬を服用するのが当たり前になった。患者の服薬履歴を管理しながら相談に乗る「かかりつけ薬剤師」を持つこともこの機に進めるべきだ。医療費抑制のため、軽症の疾患は病院にかからないようにすることも今後は検討される可能性がある。薬剤師の役割は地域医療でますます重要になってくるに違いないのだ。

 正式に方針が決まりましたら、改めて今後の課題を示したいと思います。

関連情報:TOPICS
 2013.05.31 第11回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.05.24 第10回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.05.16 第9回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.05.10 第8回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.04.26 第7回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.04.19 第6回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.04.05 第5回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.03.22 第4回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.03.13 第3回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.02.27 第2回一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討会
 2013.02.14 一般用医薬品のインターネット販売に関するルールの検討が始まる


2013年06月04日 10:01 投稿

コメントが11つあります

  1. 2013.06.05 産経新聞 
    全国薬害被害者団体連絡協議会や日本薬剤師会、日本漢方連盟など6団体は4日、共同で会見を開き、それぞれの立場からネット販売解禁に反対の姿勢を表明。日本薬剤師会の生出泉太郎副会長は「医薬品(産業)が成長するということは、病気が増えるということ。それで経済成長が見込めるのか」と政府の動きを痛烈に批判した。
    ————————————–
    医薬品産業が成長すると病気が減るというのなら納得できるのだが、なぜ病気が増えるのか? 解せぬ。

  2. アポネット 小嶋

    別の報道だとちょっと違うみたいです。

    ネット販売“高リスク”除外を…薬害被害者
    (日テレNEWS24 2013.06.05)
    http://news24.jp/nnn/news89059521.html

    薬剤師の団体は「薬が多く売れるには病人が増えるしかない。薬のネット販売が経済成長につながるとはナンセンスだ」と主張した

    日経DIも報じています。

    日薬など「OTCネット販売慎重派」が合同記者会見
    「リスクを伴う規制緩和は慎重に行われるべき」と日薬・児玉会長
    (日経DI 2013.06.05 要会員登録)
    http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/trend/201306/530925.html

    資料は日薬HPで見れます。

    一般用医薬品のネット販売問題に関する記者会見資料
    (日本薬剤師会 2013.06.04)
    http://www.nichiyaku.or.jp/?p=19632

  3. 小嶋先生 解説ありがとうございます。

    >薬が多く売れるには病人が増えるしかない。
    >薬のネット販売が経済成長につながるとはナンセンスだ。
    ここで売上げが増える薬は一般薬ですよね。日薬はセルフメディケーションを推進すると明言しているにもかかわらず、何時からセルフメディケーション反対になったのでしょう。
    日本薬剤師会は第一類は通販解除に反対。日本チェーンドラッグストア協会は、指定第二類以上の通販解除に反対。日本漢方連盟に至っては「漢方薬などの医薬品の一律郵送規制に反対します。」って通販解禁に賛成でしょう?
     各組織の利権ばかり主張しあう共同記者会などしないほうが良かったのではないでしょうかね。

  4. こんにちは、
    「薬のネット販売の利便性のみにスポットが当たれば
    当たる程、そこに出来る薬の乱用・依存の危険性の
    影は、益々濃く成って行く」と、思います。

  5. ネット販売解禁って、薬事法改正前の無秩序状態に戻るだけ。
    これで、どういった成長戦略が描かれるのか理解不能ではあります。

    少なくとも、ネット販売を理由に日医はスイッチ品の反対を強力に進めるでしょうから、
    すでに認められたヒアレイン等のスイッチにも待ったがかかりそう。
    100%解禁にする為に、高リスクの1類は医療用に戻す話もあるんでしたっけ?
    まあ、ますますOTCの市場規模が縮小していきそうな雰囲気ですね。

  6. アポネット 小嶋

    (別記事のコメントと同じ内容です)

    ネット販売の解禁問題で日医が5日プレスリリースを出しています。

    一般用医薬品のインターネット販売についての日本医師会の見解
    (日本医師会 2013.06.05)
    http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20130605_1.pdf

    (抜粋)
    第二に、一般用医薬品の安全性を確保する仕組みの再構築を医学、薬学等の専門家によって検討することを提案する。第一類医薬品は、その多くが医療用から一般用に移行(スイッチOTC)されたものであり、一般用医薬品としてのリスクが確立されておらず、一般用医薬品に移行した後に、死亡例が報告されているものもある。

    今後は、スイッチOTC化を慎重に検討するとともに、スイッチOTC 化後の一定期間は、たとえば経過期間として取り扱い、問題事が発生した場合には、いったん医療用のみに戻すことも必要であると考える。

    上記を読むと、これを機に、エパデールTの販売中止に持っていきたいのではないかと勘繰りますね。

  7. アポネット 小嶋

    Katsu 様

    私も違和感を覚えますね。

    日薬以上に他の団体の方が危機感があるんでしょうが、日本漢方連盟や日本チェーンドラッグストア協会の会員はネットや電話相談による郵便等販売はするのでしょうから。

    一般用医薬品のインターネット販売について(意見)

    全国薬害被害者団体連絡協議会
    全日本医薬品登録販売者協会
    日本漢方連盟
    日本医薬品登録販売者協会
    日本チェーンドラッグストア協会
    日本薬剤師会

    ①インターネット販売において、第1類医薬品を解禁することは、絶対に受け入れられない。
    ②万一、全面解禁によりインターネット販売による事故が生じた場合には、一般用医薬品のインターネット販売を推進した者などの責任の所在を明らかにすべきである。
    ③これまでの状況や経過を見ても、インターネット上の悪質業者を排除することは非常に困難である。
    ④国民の安全をないがしろにしてまで政策を進めることは、後世に禍根を残すことになる。

    第一類だけ反対っていうけど、安全性がある程度確認されたからスイッチされたわけで、これだけの内容だと、ただ単に楽天やケンコーコムなどのネット販売だけは反対したい(気持ちはわかりますが)というところだけで一致したという印象も否めません。

    (指定)第二類の総合感冒薬や鎮痛剤などを気軽に購入、使用できることで、不適切な使用や、依存や乱用、潜在的な健康リスクがあるなどの問題提起をすれば、まだ、印象がよかったと思うのですが。

    漢方の団体もネット販売で漢方薬が広く売られるようになると、相談して購入する人が少なくなることを心配しているんだと思います。

    それと影響ですが、マスコミ品(メディアで広く宣伝される商品)や売れ筋品は価格破壊が起こるでしょう。

    一時的に売り上げを伸ばすことはあっても、どこでも買えるということもあり、今度はリアル店舗で推売しなくなりますから、長い目で見ると売上減につながると思います。結果的に良い商品や必要な商品がが市場から撤退を余儀なくされることだって考えられます。(メーカーは高めに価格設定しているから痛くもかゆくもないでしょうけど)

    電化商品だったらリニューアルで対応するでしょうが、医薬品は簡単ではありません。別の成分を加えたり、変えたりすることは個人的にはあまり好ましくないと思っています。

    そうなるとどういうことが起こるかというと、メーカーによる販売店の選別です。

    ネット販売をしないという同意を得させ、価格を維持してブランド力を保つということです。

    やむを得ないことだとは思いますが、今後、新規スイッチ品(まあ、今回の解禁を機に、日医の意向でほとんどつぶされるだろうけど。エパデールTだって危ない)の流通や供給に影響を及ぼさないか心配です。

  8. 小嶋先生 こん**は
    >ネット販売をしないという同意を得させ、価格を維持してブランド力を保つということです。
    ネット通販が違法行為でなければ、上記のような価格維持政策は独占禁止法違法における再販売価格維持行為として違法行為となります。

    違法とならない例外として、委託販売の場合というのがあります。
    薬業関係では、ネットでの値引き販売を絶つため、サニーヘルス社マイクロダイエットというダイエット商品の販売形態を委託販売として、店頭のみでの販売を契約書に盛り込みました。
    ネット上の販売はもっぱら直営店で行っておりますが、同じコンセプトのダイエット食品の上市で直営店でさえセット価格やらポイントセールによる商品添付など行わねばならない有様です。
    製造メーカー・販売会社の目線で判断せず、消費者目線で物事を判断していかないと、思わぬところに落とし穴かがある時代になりました。

  9. 末端にいると日薬や都道府県薬剤師会が組織を上げて反対しましょう!なんて話聞こえてきません。
    多分多くの人は・・・・へええ・・・・そんな事やってるんだ・・・・って気にも留めていないでしょう。

    小嶋先生とはいつも意見を異にするのですが・・・・
    今後は調剤(医療用医薬品)のネット販売なんてのも俎上にあがる可能性あるんですから、医師会とセルフメディケーションについて話し合って連携できるとことは連携して行くべきと思います。
    なんて言っても薬剤師会よりは組織力はありますし。

    国民の健康、医療を金に換えるのが成長戦略なのはおかしいです。

  10. アポネット 小嶋

    >医師会とセルフメディケーションについて話し合って連携できるとことは連携して行くべきと思います。

    どうでしょうかね?

    上の方のコメントで紹介した日医のプレスリリースを見ると、かなり限定的に感じてしまうのですが。

    むしろ私は、厚労省がセルフメディケーションをどう考え、薬剤師の職能をどう生かすかということを示さないと無理じゃないかと。

    でも、今回の検討会の報道をみると、自分たちの方針なんてこれっぽっちもなかったですけどね。

  11. 世間はそんな甘くないでしょうね。
    でも、政治で考えると結局力がないと何もできない。
    そうなるとより大きいところに頼るしかないって単純な発想です。何かいつも医師会とは溝を感じるのですが・・・・・しっかりしてないから医師会と話をできないのか、医師会と協調していけないでしょうか?ときっかけを持たないから溝が埋まらないのか、鶏か卵か?の話かもしれません。
    これで健康被害が問題になったら言い出した三木谷さんや英断した首相でなく、また薬剤師が悪いって話になるんでしょうね。

    偉そうに言うようで申し訳ありませんが、薬剤師教育の中で薬剤師としての矜持、医療人としての心って何かも教えて欲しいって最近感じます。
    高給や休みが当然などの自分の生活だけでなく免許を持つ重みや責任などもっと大切な事があるって思うのです。
    何よりもこの問題に関心を持ってるのが一部で、薬剤師の免許を持ってる人間から「おかしいだろう」って大きな声が上がらない事にまず憂いを感じます。