地方都市で薬局用地78坪が何と10億円で落札(Update)

 調剤たたきがある中、波紋が広がらないかと思い、取り上げることに躊躇していましたが、薬局のオモテとウラ(→リンク)で取り上げられている他、ツイートに対してのコメントがあったので、記事にしました。WEB情報を元にまとめましたので、誤りがありましたらご指摘下さい。

 情報は下記WEB記事に限られますが、ちょっと衝撃の内容です。(リンク切れしたらすみません)

薬局用地10億の高値で落札 三木・小野統合病院前
(eo ニュース 2013.04.06 神戸新聞配信)
 http://eonet.jp/news/kansai/kobe/article.cgi?id=72329
  (リンク切れ。キャッシュがまだある→リンク

 この病院は、神戸大学(医学部)の協力・支援の下、三木市民病院と小野市民病院が統合する形で今年10月に開院する病院だそうで、山林を切り開いて建設されたそうです。

三木市・小野市統合病院建設に向けて
http://www.hospital.miki.hyogo.jp/tougou/

北播磨総合医療センター基本構想・基本計画(概要版)
(三木市・小野市統合病院建設に向けて 2013.10.28)
概要版 http://www.hospital.miki.hyogo.jp/tougou/oshirase/pdf/h21_1028.pdf
全体版 http://www.hospital.miki.hyogo.jp/tougou/kyogijiko/pdf/kihon_all.pdf#page=44

 全体版の37ページ、および下記14、19ページを見ると、敷地面積6万平方メートル内に、院外薬局を配置することが記されており、まさしく究極の門前薬局です。(本当にこの通りなの? 公道に面しているとはあまり思えないけど?)

全体配置計画(北播磨総合医療センターの概要)
(三木市病院事業運営審議会資料 2012.01.24)
完成予想図
http://www.hospital.miki.hyogo.jp/05others/shingikai_pdf/240124_05.pdf#page=14
全体配置計画
http://www.hospital.miki.hyogo.jp/05others/shingikai_pdf/240124_05.pdf#page=19

  建設を行っているのは「北播磨総合医療センター企業団」というところで、今回の入札は企業団用地の売払い(公募売却)という形で行われています。(つまり、取得用地を切り売りということらしい)

北播磨総合医療センター企業団有地の売払い(調剤薬局建設用地の公募売却
(北播磨総合医療センター 2013/02/18 公告)
http://www.kitahari-mc.jp/475/477/5840.html
(詳細ファイルはリンク切れていましたが、ググったら下記ファイルが出てきた。結果については現時点では未掲載)

北播磨総合医療センター企業団公告第一号
(2013.02.18)
http://www.kitahari-mc.jp/files/11739.pdf
(処方箋件数450件/日を応需できる体制の保険薬局を開局できるものであることの入札条件がある)

(2013.04.18 追記)
(案内図)

http://www.kitahari-mc.jp/files/11740.pdf
(これを公道って言うんですか? 本当に自治体なら何でもありなんですね) 

 物件は、面積は258平方メートル(約78坪)のものが2つで、最低売却価格は4,205,400円(16,300円/平方メートル 53,790円/坪)だったのですが、記事によれば、高い方が10億円(1坪あたり約1,279万円)、もう一方が4億2千万円(1坪あたり約538万円)で落札され、用地関連事業費(用地購入費。造成工事費など)14億円が、薬局用地の売却だけでまかなえたと伝えています。(35社が入札、大手薬局チェーン2社が落札)

 薬局用地を建設費用に充てたいということは、当初から想定されていたらしく、企業団の議会でも次のようなやりとりがあったそうです、

北播磨総合医療センター企業団議会開催
(もて木みち子 オレンジニュースブログ版 2010.08.25)
http://blog.goo.ne.jp/orangen0808/e/ad0626d3d2af3f561b4e0cb560b45945

Q 門前薬局の選定について
A 病院経営は非常に規模しいものと認識している。薬局の設定についてもあくまでも、病院経営の観点から、選定の基準を設けていく

 いくら病院の前だからと言って、市街地でも一平方メートルあたりの10万円程度の土地にこれだけの値段がついたわけですから、当然世間の目は厳しく、さっそくこういったブログ記事も。(後半の方)

121.0kg ベンチプレス⑦&兵庫県小野市の郊外が坪1,270万円 !!
(しんどい、痛い、つらい。マスターズⅡのベンチプレス 2013.04.06)
http://91683924.at.webry.info/201304/article_2.html

 現地の様子はわからないので、これ以上のコメントは控えたいと思いますが、少なくとも、この病院はあまり面分業とかは考えていないのではないかと思いました。

 地元でも、2年前に似たようなこと(→本サイト足利市で記事検索)がありましたが、やはり、医薬分業を第三者(特に行政や公的団体などの立場が強いところ)が経済的に利用できてしまうという仕組みがあるとすれば、複雑な思いです。

関連ブログ:
薬剤師的話題(2013.4.6):薬局用地10億の高値で落札 他
(薬局のオモテとウラ 2013.04.06)
http://blog.kumagaip.jp/article/64601678.html

2013.04.18 追記


2013年04月08日 21:49 投稿

コメントが14つあります

  1. (他の記事へ18:48にコメントされたものをこちらに移しました。記事関連でないコメントについては次回からは削除する場合がありますのでご了承ください)

    ツイッター(薬局用地高額売却)へのコメントです。場所違い申し訳ありません。

    私は兵庫県在住なのですが、
    薬局用地売却の件について、以前の神戸市医療センター中央市民病院の移転の際にも、同様に多額の売却費が発生したと記憶しています。

    その当時も問題視されていたのですが、少なくとも兵庫県においては、病院横の用地は薬局に高値で売却し、建設費等を回収しようとする仕組みが出来上ってしまっており、今回のセンター企業団もこれを狙ったものと思われます。

    しかし、このような歪んだ状況の原因には調剤報酬制度の問題点もあると考えます。
    圧縮されたとはいえ未だ残る薬価差と、日数倍数の上限が非常に高い点です。
    薬価差が大企業の購買力で確保できる現状を肯定するならば、日数倍数制は大きく見直すことが必要です。
    中医協でも算定の単純化が求められているところです。

    また、かかりつけ薬局が重要としながら、調剤報酬制度にはこれが全く反映されていないことも問題だと思います。
    例えば同一薬局を利用する際、同一月の1回目の基本料は現在より高く設定し、2回目以降は大きく下げることにより、患者の行動を変化させることが期待できます。
    この際、厚労省や薬剤師会は、同一の薬局やかかりつけ薬剤師によって薬物治療を管理することの重要性と、それを実現させるための制度化であることを広報すべきです。

    賛否あると思いますが、個人的な意見を述べてみました。
    日薬が提示するビジョンは非常に評価できるものだと思いますが、それを一つ一つ実現に結びつける行動が必要だと思います。

  2. 500床の市民病院の老朽化に伴い現在地での建て替えか、移転かで市議会は紛糾、市長選まで行われて二転三転。診療を継続しながら建て替え工事など容易なはずはなく、薬局用地も一緒に造成して競売に掛ければ大手薬局チェーンが超高値で購入してくれるとなれば移転派は喜びます。
    公立・私立を問わず病院建て替えの切り札になるかもしれませんね。

  3. アポネット 小嶋

    過去のケース

    足利市が薬局施設(4薬局分)を足利赤十字病院前隣接地に作って賃貸で入札。
    最高は367万5千円/月だったが、第一入札者が辞退。(→TOPICS 2011.01.26)(2010年12月)

    岩国市が、岩国医療センター隣接の市有地1000平方メートルを売却。4社が入札し、落札者は5億1千万だった。(→募集案内 →結果)(2011年12月)

    北秋田市が、北秋田市民病院隣接地を薬局用として市が土地を貸与(2店舗)。金額は年額数十万円だとか (→募集案内 →配置図)(2011年11月)

    神戸のケースは詳細が見つかりませんでしたが、ブログ記事(→リンク)によれば、15億円と6億円だったとか。(2010年10月?)

    入札される薬局も大きな病院の近くに出店することで、知名度を上げることができたり、また、いろいろな処方せんを受けることで社員の教育にもなるというメリットもありますから、入札に参加されることや入札金額自体は個人的にはあまり気にしていません。

    一つだけいえることは、地域の基幹病院の近隣の土地に行政などが土地をもっていれば、本当にいい物件として貸したり売れるということです。(自治体だったら、公道も無理やりつくることも可能ですしね)

    表向きは、地域住民のために薬局を誘致するということなのでしょうが、自治体等が相場よりはるかに高い額で売ったり貸したりすることが果たして社会がどう見るかがいつも気になります。

    それにしても、今回の兵庫のケースは本当にケタ違いですね。

    もしかしたら、これが調剤薬局の社会貢献なのかもしれませんね。

  4. Atomさま、小嶋さま、コメント有難うございます。
    コメントの場所違い、失礼しました。今後十分に留意いたします。

    調剤薬局の門前志向やそれを追認する制度設計は、小規模な医院の横には小さな薬局、大規模な病院の横には大きな薬局が存在し、患者が病院を受診する際にはその都度、隣の薬局で薬を受け取ることが当然という理解を国民に促しています。
    日本における分業開始の経緯を考えれば、地域内に調剤の実施が可能な薬局が少なかった頃の主張が未だ影を落としているのかもしれませんが、これからの薬局のあり方を考える際には、患者が薬局を医療提供施設として本質的に選択する制度的な方策が必須です。ポイント付与や、薬剤師から何も質問されないことをメリットとして定着させるべきではありません。
    実際に医科において、多くの患者は可能であるならば短い待ち時間で総合病院を受診したいと考えていますが、それが難しいのは制度的な誘導があるからです。これは患者からすれば、にわかには理解しがたいことですが、医療の質とコストの両面にメリットを生み出しています。
    個人的な経験から考えても、地域の薬物治療の質を高めるためには、患者が門前に偏らないことが重要だと実感します。門前の数人の薬剤師が気付かなかった、あるいは医師への遠慮のためコメントしなかった重要な治療上の問題点を、別の薬剤師があっさりと指摘することは稀な例ではありません。
    日本人は総じて知的レベルも高く、制度には粛々と従う秩序を持っています。国民が薬局、あるいは医療制度に求めるのは、理にかなった実効性のある仕組みです。現行制度が患者の理解を得られないのは、必ずしもプレイヤーとしての薬剤師の資質に問題があるせいではなく、説明を受けてもなお、その必要性に納得ができないからです。
    もしこの国の薬の問題を明らかにせず暗数のまま放置、あるいは全面的に医師の責任として片付けてしまうのであれば、薬価のコントロールを除けば薬局を廃止することが、今後の日本の医療にとって、説得力のある解決策となります。

  5. アポネット 小嶋

    さらに調べてみました。こういったことに異議が出なければ、どんどん既成事実化していくんですね。

    第2回企業団議会定例会(2010.8.24)より
    http://www.kitahari-mc.jp/files/1614.pdf#page=4

    Q:
    門前調剤薬局の選定条件に、地元枠などの条件は設けられないのですか?

    A:
    新病院の外来患者さんに対する薬の調剤は、院外処方を原則とし、病院本館に近接する位置に、2または3店舗を配置する予定です。

    院外薬局用地は、公正・公平を期すため、地元枠等の条件は設けず、一般競争入札による売却を予定しています。

    第5回企業団議会定例会(2012.02.13)より
    http://www.kitahari-mc.jp/files/8991.pdf#page=3

    Q:
    薬局用地を売却するのではなく、薬局を建設し、賃貸収入を得て、企業団経営の一助にしてはどうですか

    A:(前略)
    保険診療を受けた患者が利用する保険薬局については、賃貸の場合、医療機関と一体的な経営と見なされ、「保険薬局」としての指定を受けることができないこととなっています。(近畿厚生局は土地を売却さえすればOKとの判断をしたんですか?)

    極めつけは小野市のHPにあった次のファイル、病院の「付属施設」として「院外薬局」となっている。

    小野市の今・・・
    https://www.city.ono.hyogo.jp/system/site/upload/live/5565/atc_1356080474.pdf

  6. アポネット 小嶋

    RISFAX さんが取材してくれました。神戸新聞の報道の通りです。

    入札したのは、阪神調剤と日本調剤だったようです。

    兵庫・新病院前薬局用地 阪神10億円、日調4億円で落札
    (RISFAX 2013.04.11)
    http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=40971

  7. アポネット 小嶋

    過去のケース 

    これは知らなかった。これも兵庫ですね。逃亡者さんの指摘の通りですね。

    保険薬局建設用地(加西市所有地)条件付公募は終了しました
    (市立加西病院 2012.01.12)
    http://www.hospital.kasai.hyogo.jp/00temp/240112_koubo.html

    加西市所有地(保険薬局建設用地)条件付公募売却入札結果について
    (市立加西病院 2012.02.20)
    http://www.hospital.kasai.hyogo.jp/00temp/240220_koubo.html

    289.08 平方メートルの市有地を売却、最低売却価格10,869,000円に対し、売却価格は4億円(約457万円/坪)だったのですが、入札金額、書類審査、プレゼンテーション・ヒアリングの結果を加味して、選定したそうなので、もっと高い金額を提示したところがあるのでしょう。

    加西市所有地(保険薬局建設用地)条件付公募売却実施要領
    (受付期間 2012.1.12~1.25)
    http://www.hospital.kasai.hyogo.jp/00temp/240112_koubo.html.pdf

    (追記)
    さらについ最近のものもヒット。これも兵庫です。プレゼンもしています。(川西と実施要項が似ている)

    神河町所有地(保険薬局建設用地)条件付公募売却実施要領
    (公立神崎総合病院)
    http://www.kanzaki-hp.jp/yakuyoukou.pdf
    (条件付公募売却入札参加申込の受付期間 2013.1.21~1.31、選定は終わっているはずなのに、結果はアップされていない)

    病院の近隣に理想の薬局に開設してもらいたいという気持ちはわからないでもありませんが、さすがにここまでやると、どうなんだろうと思います。

    独立性って何だろうと思います。こころが重くなります。

  8. アポネット 小嶋

    日経DIに関連記事です。

    坪単価500万円の薬局が病院の附属施設!?
    (日経DI 2013.04.17)
    http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/kumagai/201304/530027.html

    日本調剤、阪神調剤薬局は現時点では非公開情報として、認めていないようです。

    でも、入札が終わってから随分立っていますよね。結果も公表しないとなるとますます不透明ですね。

  9. アポネット 小嶋

    もう一度ググったら、入札時の案内図が出てきました。

    向かいに他の店舗もあるんですね。

    でもこれが公道ですか? 笑えますね。

    案内図
    http://www.kitahari-mc.jp/files/11740.pdf

  10. 日経DI記事の紹介、有難うございます。読んでみました。

    そちらの方にもコメントを書かせていただきました。
    各地で起こっているであろう、こういった問題に焦点が当たるのも、小嶋さんのように影響力のある方が取り上げてくれればこそと感じています。

  11. アポネット 小嶋

    日経DIの方にコメントをしてきました。

    承認が遅れていたので、NGワードでもあったのかと思っていました。

    「付属施設」という認識を見ると、この病院の院外薬局の位置付けというのが容易に想像できます。(厳密にいうと、おそらく裏でサポートするコンサルティング会社の助言なんだと思いますが)

    それにしても、相場の100倍超のこの金額は本当に異常です。何か裏があるのではないかと思われても仕方ないでしょう。

    まだ正式に落札結果が公表されていませんが、報道通りに入札を成立させるのか、また思惟的に作った公道であっても問題ないとして保険薬局の指定を行うかどうか注目です。

    厚労省に「国民の皆様の声」というのがあるので、質問しようかと本気で考えています。

    「国民の皆様の声」
    http://www.mhlw.go.jp/houdou_kouhou/sanka/koe_boshu/

  12. アポネット 小嶋

    入札結果がアップされました。これで入札成立ってことですね。

    平成25年3月28日入札等執行状況
    http://www.kitahari-mc.jp/files/12098.pdf

    物件A
    北播磨総合医療センター企業団有地の売払い(調剤薬局用地の公募売却)
     1,001,000,000円  ㈱阪神調剤薬局

    物件B
    北播磨総合医療センター企業団有地の売払い(調剤薬局用地の公募売却)
     422,220,000円  日本調剤㈱

  13. アポネット 小嶋

    RISFAXで下記のような記事がアップされました。(全文が見たい)

    常態化する医薬分業利用の「錬金術」
    地方自治体が薬局に用地売却・貸与で資金捻出、新たに名古屋でも
    (RISFAX 2013.05.23)
    http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=41334

    いったいどこなんだろうと調べたのですが、該当するファイルがなく困っていたのですが、あちこち調べたところ、衆議院で次のような質問主意書(http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_shitsumon.htm)が5月22日に受理されていることがわかりました。(関連があるのかなあ?)

    【質問答弁経過情報】
    地方自治体による病院等医療施設前の薬局用地売却に関する質問主意書
    http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/183084.htm

    現時点では、質問の内容と答弁は未掲載ですが、これで実態が明らかになるかもしれません。

  14. アポネット 小嶋

    現時点では、質問・答弁書は確認できていませんが、答弁書が出たようです。

    この内容だと、今回のケースのように自治体が10億円をふところに入れても問題なしということのようです。

    政府 自治体の薬局用地売却「見解を示すのは困難」
    (RISFAX 2013.06.03)
    http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=41427