これってあまりに都合のいい解釈だと思う(Update2)

 日本チェーンドラッグストア協会(http://www.jacds.gr.jp/)はこのほど、昨年までに相次いで発覚した登録販売者実務経験証明の不備や不正を受けて、対策マニュアルを作成し、21日公表しています。

登録販売者試験 実務経験証明不備・不正防止対策マニュアル
(日本チェーンドラッグストア協会 2013.01.21公表)
http://www.jacds.gr.jp/taisaku_jitsumu_rev2.pdf#page=10

 これまできちんとされていなかった実務経験の記録・証明のあり方をまとめた点では評価できるのですが今回のマニュアル策定に至った経過を記したプレスリリース(上記ファイル)の前段の部分が気になりました。

登録販売者試験の実務経験不備・不正問題の経過
http://www.jacds.gr.jp/taisaku_jitsumu_rev2.pdf#page=3

 まず、今回の問題の経緯の部分ですが、

  1. 平成21 年6 月施行の改正薬事法では、旧法・新法適用店舗でも、医薬品のリスク分類と専門家
    の情報提供については経過措置がとられず、施行日より実施しなければならない
  2. そのため、新制度を円滑に導入するためには、改正薬事法施行前までに8 万~10 万人の登録販売者の確保が必要であった
  3. 行政は大量の登録販売者受験者の対応と複数回の試験を実施、企業は多くの従業員への受験対策と登録販売者申請業務を行なうなど、行政も企業も大変な努力を行なった結果、消費者に迷惑をかけることなく平成21 年6 月改正薬事法の円滑な施行が実現できた (以下略)

 つまり、大量の登録販売者の確保が必要だったから、こういう事態も起こってしまったとの弁明にもとれます。(薬剤師や登録販売者が確保できないのなら、医薬品の販売を行わなければいい話)

 そして、次に省令や通知の考え方、これまでの経緯を示したうえで、受験申請の際の証明書の様式について、

  1. 本件の場合、1年の実務経験は法令に基づくが「80 時間12 ヶ月継続」は通知で示した書式
    (様式1 と様式2)内容のみである
  2. 行政手続法により、法的根拠の無い罰則、行政処分は行なってはならない
  3. 旧法下の実務経験の様式1 と施行より3ヶ年の経過措置期間の新法適用店舗での実務経験(様
    式2)は、新制度移行期間であり、平成24 年6 月以降(完全施行)よりは明らかに運用に異
    なりがあると考えるべき
  4. 現在の申請様式では、実務経験不備・不正は、開設者や管理者が行なったものであり、受験
    者が行なったものではないにもかかわらず、返納や取り消しなどの不利益処分は、主に対象
    となる登録販売者が負っていることが問題である。今後は、受験者本人にも実務経験証明(誓
    約サイン)をさせるべきである

として、この間の不正合格者には、取消・返納ではなく、一定期間の使用停止や研修、実務報告を課し、満たされた者には解除(資格使用可)などの寛大な措置を講ずるべきであると考えると訴えています。

 きっと弁護士を入れて今回のプレスリリースを出したのでしょうが、私にはどう考えても自分たちが行ってきたことを正当化するようにしか聞こえません。

 薬剤師不足で医薬品を販売することができないために、いわばドラッグストアなどの業界の要請で生まれた登録販売者制度ですが、確かに法整備の不備があったとしても、まさか厚労省だってこの程度はきちんと守ると思っていたのではないかと思います。

 法律が不備だったんだから、大目に見てくれと言わんばかりですね。(どこかの主張と変わりない)

 なお、先の2つの大規模な不正証明の発覚に対した2社(TOPICS 2012.11.15 2012.11.06)に対して、日本チェーンドラッグストア協会は業界としての処分を行ったそうですが、合格が取り消しとなった人については救済措置を求めているのでしょうね。

登録販売者実務経験不備・不正証明に関する業界処分について
(日本チェーンドラッグストア協会 2013.1.18)
http://www.jacds.gr.jp/press/newsrelease_111.pdf

 ネット販売もそうですが、薬を販売するものの倫理や販売のあり方、資質については、販売する側の論理だけではなく、薬の社会的な存在を踏また検討が必要だと思います。(全てが法律で規制・規定できるものでははないし、薬事行政だって限界がある

 これまでもコメントなどで紹介していますが、海外では薬剤師の他、テクニシャンンの資格の認証や倫理面については、行政とは一線を画した Board というのが関わっています。そろそろ日本でもこういったところが必要ではないかと思っています。

 本来なら、ネット販売や今回の登録販売者の不正受験の問題を受けて、日薬が先頭に立って独自のガイドラインや倫理規定を策定してもおかしくない話です。(全ての薬局や登録販売業が日本チェーンドラッグストア協会に入っているわけではない。日薬はこれを追認して日薬の会員にもこれを勧めるのですか?)

 こういったところにも、日薬の一般用医薬品販売の関心の低さが伺えます。

関連情報:TOPICS
 2012.11.30 登録販売者試験受験者の実務経験を一斉点検へ
 2012.11.15 登録販売者試験、今度は416人の不正受験が発覚
 2012.11.06 西友不正受験を認める 虚偽の証明書は282人
 2012.10.29 登録販売者試験受験資格に関する要望書(薬害オン会議)
 2011.11.11 登録販売者試験の受験資格確認が厳格化へ 

2010年1月22日 11:10 更新 11:47更新


2013年01月22日 10:53 投稿

コメントが2つあります

  1. アポネット 小嶋

    いったん前段の部分が削除されたファイルがアップされたので、コメント・ツイートしましたが、再び確認したところ、前段が書いた元のファイルにもどっていました。

    これまでのコメントとツイートについては削除しました。

    前のものとどう違うんだろう。(比較してみよう)

  2. そんな理屈が通るなら薬剤師が足りないから薬科大学の留年ゼロにして単位足りなくても足りたことにして国家試験受ける事もこの人達は仕方ないって思うんでしょうか?
    医師不足だから医学部にいる人も皆医師免許あげればいいんでしょうか?
    全くもってごり押しのナンセンス。
    6万人~も必要だとする根拠が全く不明。

    本当に日薬も厚労省も本腰入れてOTCには薬剤師の存在が不可欠である体制にして欲しいです。
    しばらく経ったら何でも間でも1類を2類にしてないで。
    何で逆は無いんでしょうね?安全性を考えたら2類を1類にって。
    また調剤しかやってない薬局も薬剤師としての役割を考えないといけないと思います。