新年雑感

4.地域薬局の役割をPublic health の視点でもっと広くとらえるべきではないか

 TOPICS 2012.12.20 で紹介しましたが、日薬はこのほど日本ににおける地域薬局で禁煙支援、ヘルスプロモーションなどの実施状況の調査結果をまとめました。

 一方海外では、本サイトではたびたび紹介していますが、生活習慣病などのスクリーニング、アルコール対策、Sexual Health など、実にさまざまな public health 活動やプライマリヘルスケア活動、生活者に対してのセルフケアへの支援も行われています。

  日本でも海外のような事例を取り入れることはそれほど難しくはないとは思いますが、日本においては医療が医師中心であるという認識があること、また現場ではルーチン業務(詳細な薬歴作成)や職能発揮の場としての在宅活動(とはいうものの、いろいろなサイトや論文を調べてみると、海外ではこういった分野での報告や論文はあまり見当たらない)が特に重きがおかれているため、新たな独自活動を行いたくてもできないという状況にあるように思います。

 しかし、海外に目を向けると、これまでも紹介しましたように、セルフケアや健康増進について気軽に相談できる場として地域薬局における薬剤師の職能発揮の期待は確実に広がっています。

 例えば英国では、2009年から始まった保健省の取り組み“Self Care Week”で、セルフケアという取り組みが始まっており、セルフメディケーションの支援・推進に関するさまざまな情報発信が行われています。(トリアージという言葉も出てくる)

Self Care Week (NHS Choices)
http://www.nhs.uk/Planners/Yourhealth/Pages/self-care-week-2012.aspx

Resources available for Self Care Week 2012
(英国保健省 2012.10.19)
http://www.dh.gov.uk/health/2012/10/self-care-week-2012/

Self Care Forum
http://www.selfcareforum.org/

Self Care Week 2011(英国保健省)
http://www.dh.gov.uk/health/2011/07/self-care-week/

 ともすると、在宅をしなければ薬剤師は生き残れないといった風潮をどうしても感じてしまうのですが、さまざまな事情で全ての薬局が同じような取り組むことができるわけではありません。

 これに対し、public health や Self care への支援はどの薬局でも同じようにできるものです。

 TOPICS 2012.12.20 でも述べましたが、日薬は行われている public heatlth 活動を広く紹介するとともに、海外の事例なども紹介し、地域薬局の役割の可能性を広く社会に訴え、広げていくことも必要ではないかと思います。

(関連で気になった視察報告)
 ドイツでは海外では高齢者施設における薬剤管理は、医療(介護)保険ではなく、施設との直接契約(しかも、一部は複数の薬局で持ち回り)で行い、薬局は医薬品の供給し、実際の管理を行う職員を教育するという仕組みがとられているとのこと。(日本は薬剤師が管理することで、医療保険・介護保険でカバーされるが・・・)

ドイツ高齢者施設での薬の供給体制
(Open Sesame No.31 薬剤師調査MMPR)
http://yakuzaishi-di.net/column_detail/id=206

ドイツ高齢者施設での薬の供給
(Open Sesame No.24 薬剤師調査MMPR)
http://yakuzaishi-di.net/topics_detail/id=175

関連情報:TOPICS
  2012.12.20 日本の地域薬局における Public health 活動(日薬)
 2012.09.08 高血圧対策には地域薬剤師の力が必要(米国)
 2012.07.31 薬局企業と健康増進に関する協定を締結(佐賀県)
 2012.05.03 市民数千人が利用している薬局を生かさない手はない(高岡市)
 2012.03.12 地域薬局・薬剤師と Public health 活動 
 2011.10.20 日本セルフメディケーション学会で話をしました
 2011.07.28 公衆衛生分野における薬剤師活動の認知と期待はこれから
 2010.05.08 公衆衛生分野における薬剤師活動の認知度と期待度(英国)
 2008.04.05 薬剤師はさらなる役割を担うべき(英国)


2013年01月01日 00:00 投稿

コメントが4つあります

  1.  ネット販売については、ポイント付与と同様に、枝葉末節で混乱が起こっています。 海外でも米国と、英国では大違いですし、フランスや北欧諸国もまた様相が異なっています。
     処方せん医薬品ですら、ネットでの購入が進んでいる国もあり、そもそも何のために面倒な手続きを要求するのかという点を考える必要があります。
     店舗販売しかも、専門家を擁した許可に基づく店舗を原則とするならば、ネット販売を含む郵便等販売についても、同様の安全性・利便性の確保が図られるべきと思います。

  2.  スイッチについても、日本では例外的な扱いが続いています。欧州では、処方せん医薬品として導入された新薬についても、一定の期間が経過し、安全性・有効性の確認がなされれば原則として、非処方せん医薬品に移行することとされています。
     日本では、出来高払いの医療保険制度の下に、医療保険の適用にしがみつく体制がスイッチを特殊なものとし、OTC医薬品の範疇を制約してきました。
     今般の薬事法改正で生まれた「薬局医薬品」の扱いは、薬剤師専用薬の誕生を促すものととらえることができそうです。

  3.  既に指摘が出ているように、調剤医療費の伸びの主体は、高価な新薬の増勢にあります。
     一方、サービスの対価としての費用については、それに見合ったものかとの批判は起こってくるでしょうし、これに耐える立証は不可欠です。
     殊に、OTCの第一類医薬品販売(販売しない場合を含め)では、薬剤師による判断が求められており、そのための説明などが必要となりますが、そのコストは販売の利潤しか見込めない状況です。 この点も含めた、薬局の適正利益が論じられる必要がありそうです。

  4.  海外では、個人の権利と責務という考え方が日本とは異なると思えるほど強いようです。 服薬(とその管理)もまず第一義的に服薬する者の権利と責務であり、他者はそれを支援する立場に立つという考え方と思います。 その支援者に、どれほどの専門技能者を充てるかも選択の問題となります。 医師や薬剤師を雇用できるほどの資産家もいるかもしれませんが、社会資源の見地からは、適切な訓練を受けた非医療職の活用も不可欠となるでしょう。
     そのような中で、薬剤師がすべてを管理し、実務にあたるとするのか、施設の職員に(本人が取り組むこと)を支援する技術の取得を進めるのかは、おのずと自明となるのではないでしょうか。