新年雑感

2.セルフメデフィケーションとOTC医薬品の活用について共通認識を持てるか

 昨年末(反論が出ないようにこの日にしたのではないかと勘繰ってしまう)にようやくエパデールのスイッチOTC医薬品が承認されましたが、承認までの道のりは苦難を極めました。

 承認に関する審査報告書も見ると、必要な項目がきちんと確認されており、なぜこんなにも混乱したのかと思いました。

エパデールT、エパアルテ・審査報告書
(PMDA 一般用医薬品承認審査情報)
http://www.info.pmda.go.jp/ippan/O201200010/790005000_22400APX00613000_Q100_1.pdf

 今回、これだけの混乱となったのは、これまでも指摘したようにスイッチとしてどういうものが適当なのかというはっきりとした基準がないことや、セルフメデフィケーションとしてのスイッチの位置づけがあいまいだったことに他なりません。

 一方、スイッチOTC などの審議を行う一般用医薬品部会は非公開で、審議の様子は3か月以上たってから開催される議事録でしか知ることはできません。

 しかし、スイッチOTCの多くは、医療用医薬品での臨床試験や市販後調査などのデータを基に申請が行われており、承認にあたってはどういう人を使用の対象とするかや販売方法が焦点となります。

 私は、こういったことは企業秘密である必要はなく、むしろ、新薬学研究者技術者集団が指摘(TOPICS 2012.12.28)するように、もっとオープンにして、幅広い意見を求めるべきだと思います。(米FDAのオキシブチチニン貼付剤のスイッチに関する諮問委員会の様子(TOPICS 2012.11.10)をみるとつくづくそう思う)

 そして何よりも、(スイッチ)OTC医薬品がセルフケアやセルフメディケーションの支援・推進でどういう位置づけとなるのか、薬剤師・医師・生活者が共通の認識を持つのかをはっきりすべきではないかと思います。

関連情報:TOPICS
  2012.12.28 エパデールOTCが正式承認、審査報告書も公開TOPICS
  2012.12.28 スイッチOTCについてオープンな議論を求める要望書
  2012.12.19 エパデールOTC正式承認へ、新たに検討会設置も(Update)
  2012.11.21 生活習慣病分野におけるスイッチOTCのあり方に見解(日医)
  2012.11.01 エパデール問題、スイッチへの意義とプロセスの共通認識が必要
  2012.10.14 英国のセルフケア支援とセルフメディケーション
  2012.04.23 OTC医薬品の活用を検討する米FDA公聴会(続報) 
  2012.03.23 OTCの活用を検討する注目の米FDA公聴会が始まる
  2012.03.01 OTCを活用した薬剤師の新しい役割を検討へ(米FDA)
  2011.10.20 日本セルフメディケーション学会で話をしました


2013年01月01日 00:00 投稿

コメントが4つあります

  1.  ネット販売については、ポイント付与と同様に、枝葉末節で混乱が起こっています。 海外でも米国と、英国では大違いですし、フランスや北欧諸国もまた様相が異なっています。
     処方せん医薬品ですら、ネットでの購入が進んでいる国もあり、そもそも何のために面倒な手続きを要求するのかという点を考える必要があります。
     店舗販売しかも、専門家を擁した許可に基づく店舗を原則とするならば、ネット販売を含む郵便等販売についても、同様の安全性・利便性の確保が図られるべきと思います。

  2.  スイッチについても、日本では例外的な扱いが続いています。欧州では、処方せん医薬品として導入された新薬についても、一定の期間が経過し、安全性・有効性の確認がなされれば原則として、非処方せん医薬品に移行することとされています。
     日本では、出来高払いの医療保険制度の下に、医療保険の適用にしがみつく体制がスイッチを特殊なものとし、OTC医薬品の範疇を制約してきました。
     今般の薬事法改正で生まれた「薬局医薬品」の扱いは、薬剤師専用薬の誕生を促すものととらえることができそうです。

  3.  既に指摘が出ているように、調剤医療費の伸びの主体は、高価な新薬の増勢にあります。
     一方、サービスの対価としての費用については、それに見合ったものかとの批判は起こってくるでしょうし、これに耐える立証は不可欠です。
     殊に、OTCの第一類医薬品販売(販売しない場合を含め)では、薬剤師による判断が求められており、そのための説明などが必要となりますが、そのコストは販売の利潤しか見込めない状況です。 この点も含めた、薬局の適正利益が論じられる必要がありそうです。

  4.  海外では、個人の権利と責務という考え方が日本とは異なると思えるほど強いようです。 服薬(とその管理)もまず第一義的に服薬する者の権利と責務であり、他者はそれを支援する立場に立つという考え方と思います。 その支援者に、どれほどの専門技能者を充てるかも選択の問題となります。 医師や薬剤師を雇用できるほどの資産家もいるかもしれませんが、社会資源の見地からは、適切な訓練を受けた非医療職の活用も不可欠となるでしょう。
     そのような中で、薬剤師がすべてを管理し、実務にあたるとするのか、施設の職員に(本人が取り組むこと)を支援する技術の取得を進めるのかは、おのずと自明となるのではないでしょうか。