新年雑感

3.調剤医療費伸びへの圧力にどう対応するか

 TOPICS 2012.12.19 や 2012.10.25 でも紹介しましたが、ここのところ医系団体から、医療費における調剤医療費の伸びに注目が集まっています。

 医薬分業の拡大に従って、薬局自体が増えているのであり、調剤医療費の伸びは自然増と言ってもいいものです。

 豪州や欧州などのように、薬局の開局制限(適正配置)ができれば一番いいのですが、こういった規制は日本では不可能です。

 一方で、薬剤費は薬価引き下げや後発医薬品の使用率の拡大にもかかわらず、引き続き大きな伸びを占めているという現実もあります。

 今回、さまざまな団体が問題視するのは、やはり株式会社化した調剤チェーンが拡大化しているという現実です。分たちは経営に苦慮しているのに、どうして某社の社長はあんなに報酬が得られるのかという羨望もあるのかもしれませんが。

 また、中医協では薬剤師の給与を調査することも決まっています。もし、看護師より高い報酬をもらっているという結果が出れば、それに相当するだけの医療における貢献をしているかという声も出てこないとも限りません。

 確かに医療費には限りがあり、薬剤師が医療費の適正化に貢献できなければ、いつかは調剤に回せるだけの医療費の余裕がないとして、日薬が危惧する方向になることもありうるでしょう。

 現状の調剤医療費の伸びについて誰かが、きちんとデータを集めて指摘・反論するとともに、医薬分業における薬剤師業務の流れや患者さんへのベネフィットを伝えたり、必要な業務の再点検とその実行が求められているのかもしません。

 そして、医薬分業というシステムは国際標準であることをきちんと認識してもらいたいものです。(TOPICS 2012.08.11) 医薬分業自体を否定する発言を行えば、患者さんや生活者に対して誤ったメッセージとなりかねません。関係団体は、医薬分業のデメリットばかりを強調するような発言は控えるべきではないでしょうか。

関連情報:TOPICS
 2012.12.19 調剤医療費の伸びは悪なのか
 2012.10.25 長期処方で医科医療費が調剤医療費に置き換わる(日医総研WP)
 2012.09.26 FIP会長のメッセージ(医薬分業を推進する国際シンポ)
 2012.08.11 国際標準医薬分業を再陳情(日本薬剤学会)


2013年01月01日 00:00 投稿

コメントが4つあります

  1.  ネット販売については、ポイント付与と同様に、枝葉末節で混乱が起こっています。 海外でも米国と、英国では大違いですし、フランスや北欧諸国もまた様相が異なっています。
     処方せん医薬品ですら、ネットでの購入が進んでいる国もあり、そもそも何のために面倒な手続きを要求するのかという点を考える必要があります。
     店舗販売しかも、専門家を擁した許可に基づく店舗を原則とするならば、ネット販売を含む郵便等販売についても、同様の安全性・利便性の確保が図られるべきと思います。

  2.  スイッチについても、日本では例外的な扱いが続いています。欧州では、処方せん医薬品として導入された新薬についても、一定の期間が経過し、安全性・有効性の確認がなされれば原則として、非処方せん医薬品に移行することとされています。
     日本では、出来高払いの医療保険制度の下に、医療保険の適用にしがみつく体制がスイッチを特殊なものとし、OTC医薬品の範疇を制約してきました。
     今般の薬事法改正で生まれた「薬局医薬品」の扱いは、薬剤師専用薬の誕生を促すものととらえることができそうです。

  3.  既に指摘が出ているように、調剤医療費の伸びの主体は、高価な新薬の増勢にあります。
     一方、サービスの対価としての費用については、それに見合ったものかとの批判は起こってくるでしょうし、これに耐える立証は不可欠です。
     殊に、OTCの第一類医薬品販売(販売しない場合を含め)では、薬剤師による判断が求められており、そのための説明などが必要となりますが、そのコストは販売の利潤しか見込めない状況です。 この点も含めた、薬局の適正利益が論じられる必要がありそうです。

  4.  海外では、個人の権利と責務という考え方が日本とは異なると思えるほど強いようです。 服薬(とその管理)もまず第一義的に服薬する者の権利と責務であり、他者はそれを支援する立場に立つという考え方と思います。 その支援者に、どれほどの専門技能者を充てるかも選択の問題となります。 医師や薬剤師を雇用できるほどの資産家もいるかもしれませんが、社会資源の見地からは、適切な訓練を受けた非医療職の活用も不可欠となるでしょう。
     そのような中で、薬剤師がすべてを管理し、実務にあたるとするのか、施設の職員に(本人が取り組むこと)を支援する技術の取得を進めるのかは、おのずと自明となるのではないでしょうか。