地域薬剤師が在宅業務に取り組むには(中医協論点)

 11日開催の中医協総会では、在宅医療における薬剤師業務について話し合われています。

第205回中央社会保険医療協議会総会(2011年11月11日)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001uo3f.html

資料(総-3)在宅医療における薬剤師業務について
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001uo3f-att/2r9852000001uo7n.pdf

 上記資料によれば、在宅での薬学的管理指導の必要性などが示されたうえで、下記のような課題と論点が示されています。(議論の様子が報道され次第、記事更新または追記予定)

現状・課題 論点
 薬剤師数の少ない小規模薬局においては、日中の開局時間外に患家へ訪問せざるを得ない、あるいは、在宅患者に訪問薬剤管理指導業務を実施している間は閉局せざるを得ないなど、規模の大きな薬局に比べて、在宅薬剤管理指導の負担が相対的に大きい。
一方で、責任体制を明確にした上で、薬局同士が連携・協力すれば、小規模薬局であっても在宅に取り組むことは可能である。
小規模薬局による在宅薬剤管理指導の先進的事例を参考にして、小規模薬局でも在宅医療・介護に積極的に取り組めるよう改善してはどうか。
 全保険薬局のうち、在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨の届出を行っている薬局は比較的多く、そのうち、実際に応需可能である薬局は多い。
しかしながら、在宅医療・介護への対応可否について、外部に積極的に周知していない薬局が多く、医療機関等でも、どの薬局が在宅医療・介護へ対応可能であるのか知らない場合が多い。
在宅医療・介護へ対応可能な薬局に関する情報については、医療機関等が容易に把握できるよう改善してはどうか。
 医療材料・衛生材料については、包装単位が大きいなどの理由により、在宅療養支援診療所、訪問看護ステーション等では、一定の負担感を持っている。
一方で、在宅薬剤管理指導業務に取り組んでいる薬局の多くは、医療材料・衛生材料も供給している。
在宅で使用される医療材料・衛生材料の供給に、薬局が積極的に関与するよう改善してはどうか。
 がん患者を中心に、無菌調剤を必要とする在宅患者は多く存在するが、無菌調剤を行うためには、無菌環境を達成・維持するための特別な設備が 必要とされる。
 クリーンベンチ等の中には、大きなスペースの必要がない小型(卓上型)のものもあるが、薬局の広さや構造上の問題から、現行の施設基準では、不都合が生じている事例もある。
無菌製剤処理加算の施設要件については、より合理的に見直してはどうか。
 薬局薬剤師の患家までの移動には、一定の時間を要するが、薬局が緊急時の対応を求められた場合、患家までの距離が遠いと患者に不利益が生  じるケースも予想される。
 一方、医療機関では、往診可能な距離について、一定の制限が設けられている。(16Km以内との規定がある)
在宅医療・介護へ対応する薬局について、医療機関における規定を参考にして距離の要件を見直してはどうか。
 在宅医療・介護の現場においては、服薬に関し、医師等以外の他職種(訪問看護師、ケアマネジャー、ヘルパー等)とも、必要に応じて、情報を共有し、連携を図っている。
 連携に当たり、服薬等に関する情報共有のため、連携手帳等を活用しているケースがあり、このような取組みには、患者にとっても一定のメリットが期待される。
患者等に対して一定のメリットが見込まれる、在宅でのお薬連携手帳等を活用した他職種連携について、どのように考えるか。

2011年11月11日 12:17 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    CBニュースとm3.com 医療維新で記事が配信されています。

    両記事共に、上表最後の「連携手帳」についてのやりとりを取り上げています。

    【中医協】「お薬連携手帳」はサービス?
    (医療介護CBニュース11月11日)
    http://www.cabrain.net/news/article/newsId/35953.html

    m3.com 医療維新11月11日(要会員登録)
    http://www.m3.com/iryoIshin/article/144324/

    厚労省では、

    ・薬剤の特徴等を連携手帳で情報共有し、安易な粉砕等を防止
    ・嚥下能力の低下を連携手帳から的確に把握し、医師へ剤形変更を依頼
    ・BPSD(認知症に伴う問題行動)の記録から薬剤との関係を把握し、処方変更を依頼
    ・ヘルパーの服薬介助の記録により内服のコンプライアンスを確認
    ・HPNバッグの交換時間や流量設定について情報共有

    など、服薬等に関する情報共有のため、「連携手帳」等が活用されているケースがあり、患者にとっても一定のメリットが期待される(資料p23-26)というものとして評価をしてはどうかというのを提案したのですが、委員からは

    「どこまでが診療報酬上の評価であって、どこまでが在るべき基本的なサービスなのかを議論すべき」

    という意見が出され、今回は評価の対象になるかは微妙です。

    厚労省の資料の通り、有用性についてはだれも否定はしないでしょうが、勉強不足なのか私自身も「お薬連携手帳」というのは言葉は初めて聞きました。

    お薬手帳プラスαなのか、それとも今後作成される可能性がある「介護連携パス」や「認知症連携パス」の一部となのか、それとはまったく別ものになるかはわかりませんが、今、患者情報を一元化し、連携パス(連携手帳)などで共有する方向であることを考えると、くすりの部分だけ取り出して「連携手帳」をつくることはどの程度メリットがあるでしょうか?。(お薬手帳+αの活用もまだ必ずしも十分ではない)

    まずは、さまざまな分野で作られている連携パスに薬剤師が関わるチェック事項を設ける(例えば、認知症パスや介護パスで、剤型が適正か、認知機能を低下させる薬剤が処方されていないかなどのチェック)ことでも十分可能のようにも思われます。

    薬の部分だけを取り出した「連携手帳」を評価してもらうことよりも、私はまずは連携パスに薬剤師の出番をどのくらい反映させ、可能な地域から実践を積んでいくことが先のような気もするのですが。