抗不安薬・眠剤を3種類以上調剤で薬局も減額?

 2日開催の中医協総会では、調剤ポイント付与の問題とともに、精神科医療の問題についての議論が行われています。

第203回中央社会保険医療協議会総会(2011年11月2日開催)
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001trya.html

資料(総-1)精神科医療について(PDF:6.7MB)
 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001trya-att/2r9852000001ts1s.pdf

 中医協では、このうち外来における抗精神薬等の使用状況の問題(外来における向精神薬扱いについて、p111-120、125)が議論となり、次のような課題と論点が示されています。

  • 抗不安薬、睡眠薬の使用実態について、抗不安薬で4.2%、睡眠薬で13.6%、添付文書を超えた用量の処方がなされていた。
  • 抗精神病薬は大量に使用しても治療効果を高めないばかりか、副作用のリスクを高めることが知られており、海外のガイドラインでは慎重に使用することとされている。
  • 認知行動療法について、精通した看護師等が医師の同席のもと行った場合、医師が行った場合と同様のうつ症状の改善効果が示唆されたが、具体的な手法や必要な研修内容等は
    現在研究中である。

↓ ↓ 

  • 抗不安薬、睡眠薬について、3以上の抗不安薬、睡眠薬を処方する医療機関、調剤する保険薬局それぞれに対し、診療報酬上どのような評価を行うことが適切か。
  • 医師以外が行う認知行動療法やうつ病以外に適応を拡大することについては、具体的な手法や必要な研修、それらを前提とした有効性、安全性等の結果を踏まえたうえで、評価を行うこととしてはどうか。

 資料(p113)によれば、APA(アメリカ精神医学会)では、「抗精神病薬、抗うつ薬は単剤を推奨。(併用のエビデンスは乏しい)」「ベンゾジアゼピンは依存の可能性があり、使用には注意が必要」。また、NICE(英国立医療技術評価機構)では、「通常、抗うつ薬、抗精神病薬の併用は行わない」「2週間以上のベンゾジアゼピン投与は行わない」などがガイドラインで示されており、日本における向精神薬の使用状況(特に多剤併用)は問題があるとして、次回改定から3種類以上抗不安薬・睡眠薬を処方したり、薬局で調剤したりすると調剤報酬で何らかのペナルティ(報酬の減額)を課すことを視野に入れているそうです。

 抗不安薬や眠剤などは患者さんの訴えで併用されることが少なくないとは思いますが、処方権は医師にあり、薬局まで画一的にペナルティを課すということには違和感があります。また、抗不安薬の入手目的でドクターショッピングする人に対しても必ずしも効果的ではありません。(m3.com によれば、京都では情報の共有などの対策が模索されているとのこと)

 一般医向けのガイドラインの作成(これは現在進行中)とその順守、3種以上の併用の原則禁止の明文化、処方変更の権限を薬剤師に認める、さらにはICカードなどにより処方履歴の管理や情報の共有するといった対策も必要ではないでしょうか。

資料:向精神薬の処方実態に関する報告及び今後の対応について
    (厚労省プレスリリース11月1日 日刊薬業WEB行政情報資料)
   http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226518837320

関連情報:TOPICS 2009.01.26 OTC鎮痛剤で依存が起こるか?(英国)

参考:
医療介護CBニュース11月2日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/35885.html
m3.com 医療維新11月2日(要登録)
http://www.m3.com/open/iryoIshin/article/143963/
朝日新聞11月2日
http://www.asahi.com/national/update/1102/TKY201111010772.html
http://www.asahi.com/national/jiji/JJT201111010164.html


2011年11月04日 13:19 投稿

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