ベクロメタゾンOTC点鼻薬の使用制限

 8月23日の薬事・食品衛生審議会 一般用医薬品部会で承認されたベクロメタゾンプロピオン酸エステル配合の点鼻薬など3成分(TOPICS 2010.08.25)ですが、10月1日開催された薬事・食品衛生審議会 薬事分科会 で、添付文書の案が示されています。

 日刊薬業が行政情報として、当日の資料をアップしています。

薬事・食品衛生審議会 薬事分科会 資料-2(後半の方です)
(2010年10月1日 日刊薬業・行政情報)
 http://nk.jiho.jp/servlet/nk/release/pdf/1226499703092

 上記資料によれば、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル配合の点鼻薬には使用上の注意に次のような文言が記されています。

してはいけないこと
(守らないと現在の症状が悪化したり、副作用。事故が起こりやすくなる)
1.次の人は使用しないでください
(1)次の診断を受けた人。
 全身の真菌症、結核性疾患、高血圧、糖尿病、反復性鼻出血、ぜんそく、緑内障、感染症
(2)鼻腔内が化膿(毛根の感染によって、膿(うみ)がたまり、痛みやはれを伴う)している人。
(3)本剤又はベクロメタゾンプロピオン酸エステル製剤によるアレルギー症状を起こしたことがある人。
(4)18歳未満の人。
(5)妊婦又は妊娠していると思われる人。
(6)ステロイド点鼻薬を過去1年のうち1ヵ月間以上使用した人。
2.本剤は、他のステロイド点鼻薬の使用期間も合わせて、1年間に1ヵ月間以上使用しないでください
3.本剤の使用後は、ステロイド点鼻薬を使用しないでください。ただし、医師から処方された場合は、その指示に従ってください

 個人的に納得がいかないのは、高血圧、糖尿病が禁忌となっている点です。

 ベクロメタゾンプロピオン酸エステル点鼻薬については、確かについ最近まで高血圧と糖尿病については原則禁忌でしたが、2010年2月にリノコートパウダースプレーの添付文書の改訂(慎重投与に移行)の理由を見ると、

 BDP喘息治療剤の再審査結果が公示され、当該製品は使用成績調査で得られた症例データ等に臨床上、問題となるような基礎疾患の増悪を認めた症例はなかったとのことから、「使用上の注意」が改訂されることになりました。

 この吸入BDP 喘息治療剤の改訂を受け、適応や投与経路は異なるものの同一有効成分であることを考慮して同様の改訂を行うこととし、「原則禁忌」として設定していた「呼吸器感染症の患者」及び「高血圧の患者」を「慎重投与」に変更することとしました。

 (中略) 「原則禁忌」に記載していた糖尿病の患者につきましても、本剤は局所製剤であり、全身吸収性の低い薬剤であること、販売開始以降これまでに本剤投与例における糖尿病患者の悪化例の報告はないことから、注意喚起レベルとしては「慎重投与」の方が適切であると考えられました。このため、あわせて、「糖尿病の患者」につきましても「慎重投与」に移動することとしました。

 となっていて、糖尿病や高血圧の人の使用はほとんど問題がないということになっています。

 ちなみに、フルナーゼなども以前は糖尿病・高血圧は原則禁忌でしたが、現在は慎重投与の欄にも入っていません。最近の上市されたステロイド点鼻薬も同様です。

 ニュージーランドの製品情報(Pharmacist Only Medicine)にも記載はありませんね

BECONASE™ HAYFEVER(Consumer Information)
 http://www.medsafe.govt.nz/consumers/cmi/b/BeconaseHF.htm

 にもかかわらず、なぜ高血圧・糖尿病の人は禁忌となってしまったのでしょうか? 私はせめて相談することの項(慎重投与)でもよかったのではないかと思います。

 また、「1年間に1ヶ月以上使用しないで下さい」というのも、やはりしっくりいきません。これでは、販売する人が限られてしまいますね。

 この添付文書の取り扱いについての結果はわかりませんが、最近の再評価(エビデンス)に従って考えるべきではなかったのではないでしょうか?

関連情報:TOPICS 2010.08.25 ベクロメタゾン配合点鼻薬がスイッチへ


2010年10月05日 00:27 投稿

コメントが3つあります

  1. アポネット 小嶋

    厚労省は11月5日に承認を出しています。

    新たに承認された第一類医薬品について(厚労省通知 2010年11月5日)
    http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/pdf/20101105-01.pdf

    7日には、PMDAウェブサイトに8月5日にPMDAがまとめた審査報告書(→リンク)が掲載されています。

    審査報告書によると、ベクロメタゾン点鼻薬の効能効果は、申請時にはクロモグリク酸ナトリウム配合点鼻薬と同じ

    「花粉症、ハウスダスト(室内塵)などによる次のような鼻のアレルギー症状の緩和:鼻づまり、鼻みず(鼻汁過多)、くしゃみ」だったのですが、

    PMDAから、「医師の関与なしに長期にわたり使用される可能性があるが、十分安全性が担保されるのか」と指摘されたことから、効能効果を花粉症に代表される季節性に限定し、

    「花粉など季節性アレルギーによる次のような症状の緩和:鼻づまり、鼻みず(鼻汁過多)、くしゃみ」としたそうです。

    また、「1年間に1ヶ月以上使用しないで下さい」となった経緯については、

    「連続して使用できる期間を3ヵ月とし、その後の使用再開までに3ヵ月以上の休薬期間を設け、1シーズンに1度、医師の受診を必要とする」

    という厳しい販売制限が当初検討されていたものの、

    「専門医からは、調査結果には特に問題はないものの、1シーズンに1度医師の受診を必要とするならば、OTCとする意義は薄いと思われる。本剤の使用を1年間のうち1ヵ月間に限定し、副作用について使用者に十分な情報提供を行い、異常が現れた場合には薬剤師が速やかに受診勧奨するよう徹底すれば、受診は必要ないのではないかとの意見が出された。」

    として、対象を「花粉など季節性アレルギー」に限定した上で、今回の「1年間に1ヶ月まで」ということで落ち着いたようです。(1年間に1ヶ月では、あとは医者にかかりなさいと言っているようなもの、3ヶ月まででもよかったのでは)

    また、「ステロイド点鼻薬を過去1年のうちに1ヵ月間以上使用しているか」を確認事項として設定されている薬剤師向けの販売時チェックシートも作成されるそうです。

    しかし厳密に言えば、「過去1年」というと先シーズンの使用分までカウントされてしまいます。去年のシーズン分は含むのかどうかなどの明確なガイダンスが果たして出るのでしょうか?

    ちなみに、ステロイド配合点鼻薬としてはプレドニゾロンが配合されたコールタイジン点鼻液(指定第二類)(→リンク)がありますが、こちらとの整合性は問題ないのでしょうか?

    ところで、このOTCベクロメタゾン点鼻薬が申請されたのは、何と平成16年10月7日だそうで、どうしてこんなに開発に時間がかかるのでしょうね?

  2. アポネット 小嶋

    グッドタイミングで、佐藤製薬の担当者が来局して説明に来ました。

    商品名は「ナザールAR< 季節性アレルギー専用>」の方で、希望小売価格は1,880円(税抜き)。12月7日に発売されるそうです。

    花粉などによる鼻づまり・鼻水に
    「ベクロメタゾンプロピオン酸エステル」 配合の点鼻ステロイド薬
    『ナザールAR<季節性アレルギー専用>』(第1類医薬品)12月7日(火)より新発売
    (佐藤製薬プレスリリース11月12日)
    http://www.sato-seiyaku.co.jp/newsrelease/2010/101112.html

    すでに、販売店向けの解説書も作成されていたので、注目の「高血圧」「糖尿病」が禁忌(使用しないでください)となった設定の根拠を見たところ、次のように記載されていました。

    >医療用ベコナーゼの使用上の注意の「原則禁忌」の項に「結核性疾患
    >[症状を増悪するおそれがある]」、高血圧の患者[血圧上昇を起こすお
    >それがある]、糖尿病の患者[症状を増悪するおそれがある]」の記載が
    >あるため、これらの診断を受けた人の使用を禁止しました。

    添付文書は元記事の通り、今年2月に改訂されており、高血圧と糖尿病は原則禁忌から外れているのに、これはダメでしょう。またベコナーゼももう販売されておらず、根拠設定の理由としては大いに不満ですね。

    添付文書改訂から承認の審議まで半年もあったのですから、この添付文書の変更の反映はできたはずです。PMDAの審査の人も添付文書の変更を把握していなかったのですかね?

    メーカーや卸の担当者から説明があったら、皆さんもこの部分は指摘して下さいね。

    また、1年間に1ヶ月の使用制限の取り扱いについては次のような記載があります。

    ・1年間の使用は他のステロイド点鼻薬も合わせて1ヶ月間までです。
    ・使用期間の合計が1ヶ月に満たない場合、1年間に1ヶ月間までは
     数度に分けて使用することができます。
    ・本剤と他のステロイド点鼻薬の使用期間の合計が1ヶ月に達した場合でも、
     医師から処方されたステロイド点鼻薬は使用できますので、医師の指示に
     従って下さい。

    どうして、ここまで事細かに制限を設けるのでしょうね。

    真面目にガイダンス通りに対応したら、販売できる人が限られてしまいそうです。

    (11月12日プレスリリースがあったので追記しました。価格が違っていました。すみません)

  3. アポネット 小嶋

    GSK社も15日、12月7日にコンタックブランドでの販売開始を発表しています。

    「コンタック」ブランドから初のスイッチOTC
    「コンタック鼻炎スプレー<季節性アレルギー専用>」新発売
    (グラクソ・スミスクライン株式会社プレスリリース11月15日)
    http://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2010_07/P1000663.html

    製造は佐藤製薬なので、中身は全く同じです。