淀川水系で検出されるタミフル代謝活性体

 TOPICS 2007.10.4 の記事で、タミフルの代謝活性体であるオセルタミビルカルボン酸塩(OC:oseltamivir carboxylate)が、通常の下水処理で取り除くことができず、水環境中でこれを野生のカモなどがエサとともに摂取した場合、ウイルスが突然変異を起こしてタミフルに対して耐性を獲得してしまう危険があるとする研究を紹介しましたが、この研究を行ったスウェーデンのウメア大学の研究チームと京都大の田中宏明教授が、淀川水系から採取した水のOCの量を測定し、その結果をPLoS One 誌で発表しています。

Detection of the Antiviral Drug Oseltamivir in Aquatic Environments
  (PLoS ONE 4(6): e6064. doi:10.1371/journal.pone.0006064)
  http://www.plosone.org/article/info:doi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0006064
  http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?artid=2699036

 研究者らは2007-8年のシーズンに、大阪府及び京都府の淀川とその支流(桂川、賀茂川?)の6カ所でサンプリングした水中のOC量を測定したもので、インフルエンザが流行していない2007年6月に採取したサンプルではOCは検出されなかったものの、流行が開始される12月、流行期の2008年2月に採取したサンプルではOCが検出、また淀川下流域のサンプルではOCがより高い数値を示したそうです。

 そして研究者らは、世界的な流行が懸念されている鳥インフルエンザウイルスに耐性を与えてしまうリスクが高まる可能性があるとして、環境中のOCを測定することが生物学的に非常に重要だとしています。

関連記事:タミフル大量処方が自然界のウイルス耐性強化の原因に、日本にも影響
   (AFP BB NEWS 2007.10.3)
  http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2292560/2204865

関連情報:TOPICS 2007.10.04 タミフルは下水処理でも分解されず、耐性獲得のリスクに


2009年06月29日 00:35 投稿

コメントが1つあります

  1. アポネット 小嶋

    淀川水系かどうかわからないですが,田中教授らは下水道処理場でのタミフルの処理の状況も調べています。(論文は現時点では見あたりません)

    読売新聞8月15日
     http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090815-OYT8T00268.htm

    記事によれば,標準的処理ではタミフルの40%以下しか除去できないが、標準的処理に加えてオゾン処理もすると90%以上は除去が可能だそうです。

    一部では,排水からのタミフルの除去対策は進んでいるようですね。