3分の1の薬局がOTC販売時に適切な対応を行っていない(英国)

 英国の消費者団体Which?は25日、OTC販売時の薬局スタッフの対応状況についての調査結果をまとめて発表しています。

Pharmacies get test of own medicine Pharmacy staff giving poor advice, Which? reveals(Which? News 2008.9.25)  

 この調査は、2008年5月に英国内の101薬局(チェーン・個人など、さまざまな規模を網羅)を対象に、13人の調査員が次の3つのシナリオで、薬局スタッフがどのような対応を行ったかをまとめたものです。(同様の調査が2004年にも行われているようです)

 

●昨日の夜、避妊をしないでセックスをしてしまったので、緊急避妊薬を売って欲しい

 プライバシーに配慮しているか?(薬剤師がプライバシーが守られるスペースに案内しているか)、緊急避妊薬の使用が適切であるかのどうかの確認(質問)が行われるているか? さらには長期の避妊方法や性感染症に関する情報の提供が行われるか?

(結果)
 他の人に聞こえるところでセックスライフについての質問を受けるなど、約2割の薬局で不適切な対応が行われた。

●偏頭痛を和らげるために、薬が欲しい
  (英国ではスマトリプタンがOTCとして販売)

 薬剤師によって、MHRAが定めた販売指針に従って販売が行われているか?

(結果)
 約4割の薬局で、薬剤師に照会せずアシスタントが対応。また2割の薬局ではひとつの質問もされなかった。

●最近マレーシアに行っていたのですが、ここ2週間下痢が続いています

 どのようなタイプの薬を販売するか?適切なアドバイスが行われているか? 必要に応じて医師(GP)への受診をすすめるか?

(結果)
 約4割の薬局で、薬剤師に照会せずにアシスタントが適切な質問を行わなかった、医師への受診を勧めるなどのアドバイスを行わなかった、

 一方Which?では、鎮痛剤(英国では、アセトアミノフェン含有品は一回の販売量が規制されている)がインターネットで適切に販売されているかどうかについても調査(2008年6月)、英国王立薬剤師会認定の4つのオンライン薬局のうち1薬局で法律に違反して大容量のものを販売していると指摘しています。

 これらの調査の全文を見ることはできませんが、下記ページ(サイト)で概要をみることができますので、是非訪問してみてください。

Pharmacists(Which? Advice)
   http://www.which.co.uk/advice/pharmacists/index.jsp

 また英国王立薬剤師会雑誌のPJ誌もいち早く、この調査結果を記事としてとりあげています。

Advice from pharmacy staff criticised by Which?
  (The Pharmaceutical Journal2008;281:349)

Pharmacy bodies defend staff but recognise room for improvement
  (The Pharmaceutical Journal2008;281:349)

 英国というと、多くの処方せん薬がOTCにスイッチされ、これらは定められた販売指針などに従って販売されているとの印象でしたが、今回Which?が3分の1の薬局(非チェーン薬局では2件に1件)で販売時の対応に問題があると指摘したことで、おそらく英国王立薬剤師会や全国薬局協会はショックを受けているものと思われます。(おそらく近く出されるであろうコメントに注目) 当然、英国各紙もこの調査結果を大きく取り上げています。

 立ち返るに日本では、登録販売者の導入やインターネットでのOTC販売の是非の議論が行われていますが、which?が行ったような調査を日本の消費者団体が行ったら、果たしてどのような結果が得られるでしょうか?

 いずれにせよ薬剤師を含め薬局スタッフは、購入を求めようとしているOTCがその人にとって本当に必要かどうか、また適切に使われるかどうか、また医師の受診が必要かどうかの確認や情報提供が行われるどうか、そしてその販売するOTCが適切に使われるかどうかなどを、きちんと考慮することが求められていると言えるでしょう。

 Which?では、英国王立薬剤師及び北アイルランド薬剤師会に対して、きちんとした対応を行うよう求めると共に、薬剤師以外の薬局スタッフ(日本で言えば登録販売者?)が消費者に対してきちんとアドバイスが行えるようしっかりとトレーニングを積むべきとしています。日本でも考えさせれれますね。

関連情報:TOPICS
    2008.09.16 OTC販売時の業務指針・チェックリスト(英国)
    2006.05.19 スマトリプタンがOTCにスイッチ(英国)
    2005.12.04 アセトアミノフェンと肝不全(米国研究)
    2005.11.03 OTCとして供給される緊急避妊薬(英国)

参考:
Pharmacy advice ‘frequently poor’(BBC NEWS 2008.9.25)
  http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/7633033.stm
A third of pharmacies give ‘unsuitable and potentially unsafe’ advice, survey finds(Mail Online 2008.9.25)
  http://www.dailymail.co.uk/health/article-1061410/
  A-pharmacies-unsuitable-potentially-unsafe-advice-survey-finds.html

9月25日 22:45リンク追加


2008年09月25日 17:42 投稿

コメントが4つあります

  1. アポネット 小嶋

    やはり関係団体からコメントが出ました。(どこかの国の薬剤師会とは違って対応が早いですね)

    SOCIETY RESPONDS TO WHICH? REPORT Which?
    (The Royal Pharmaceutical Society of Great Britain 2008.9.25)
     http://www.rpsgb.org/pdfs/pr080925.pdf

    NPA responds to Which? research
    (national Pharmacy Association 2008.9.25)
     http://www.npa.co.uk/newsarticle.php?id=542ebed558c68e3d9ba0c6f0775a8612

    英国王立薬剤師会は、2004年の調査に比べて改善しているとした Which? の評価を歓迎する一方、サンプル数が全薬局の1%に達していないことから、必ずしも現状を示したものではないと反論してます。

    さらに、英国王立薬剤師会は全国薬局協会は共同で、今回Which?が行ったような、いわゆる“にせ顧客”(医療での模擬患者のようなもの)にシナリオに基づいて、薬局を訪れてもらい、薬局スタッフがどのような対応を行うかという“Mystery Shopper”の取組みを開始していて、資質向上を図っているとしています。

    この“Mystery Shopper”の取組みは、豪州・ドイツ・スイスなどでも行われていて(Pharmavision2003年1月号、2001年10月号に関連記事あり)、英国では今後保健省の補助を受けて、全国にこの取組みを広げるとしています。

    日本でも、日薬などが中心になって取り組んでみたらどうでしょう。

  2. 初めまして、m(_、_)m。3年前ドラッグの覆面調査を手伝ったことがありますよ。内容は既に発表されています。在店していた薬剤師さんの多くは質問者に配慮していました。薬種や店員は、どうしても他の薬やなにやかやと売りつけたがりました。登録販売員は どうなのかな?と思います。大きな組織がきちんと調べるなら、きっと 緊張して良くなりますよ。一方で、市民に薬の説明書の大切さを啓発してもらいたいものです。ポスターだけを貼り付けたら、ビラを配布したら・・・市民が賢くなるわけではありませんから。日々の業務の中での 毎回の対応が 大切だと思います。相変わらず教科書のような薬の説明だけで指導料を加算している薬剤師が多いのは、問題では?日本薬剤師会が患者からの苦情をデータ解析していないのは、なぜなのでしょうかね?
    いちばん驚いたのは、「そんなもん1ヶ月飲んでも2ヶ月飲んでも誰も死にゃしない!俺は研究所に居たんだから」って何も聞かずに言い放った薬剤師の存在。運悪くこんな人に出会ったらと 寒くなったことを覚えています。消費者庁のモニターに期待したいと思っています。
    ここのサイトは足利出身の友人に教えてもらいました。期待できる薬剤師さんの集まりと。

  3. アポネット 小嶋

    情報ありがとうございます。

    > 薬剤師さんの多くは質問者に配慮していました。薬種や店員は、
    > どうしても他の薬やなにやかやと売りつけたがりました。

    薬剤師だと、購入者にとってそのくすりは本当に必要なくすりなのか、相互作用はないかなどをやはり気にするのでしょう。

    一方薬種商や店員だと、そういったことより会社の販売ノルマが優先されるのかもしれませんね。

    今回登録販売者試験で合格者は一定の資質があるとされるわけですが、登録販売者の資格取得後も(もちろん私たち薬剤師も)諸外国のように、さまざまなケースに対応できるように実践的なトレーニングを積むことが必要だと思います。

    消費庁がモニターするというのはよい案かもしれませんね。

    > 相変わらず教科書のような薬の説明だけで指導料を加算している
    > 薬剤師が多いのは、問題では?

    > 日本薬剤師会が患者からの苦情をデータ解析していないのは、
    > なぜなのでしょうかね?

    確かに、YOMIURI ON LINE の掲示板“発言小町”などのスレッドを見ると、一般の方たちはいろいろと疑問に思われているみたいですね。

     http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2007/0516/130073.htm
     http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2008/0325/175597.htm

    一応、日薬(日本薬剤師会)では一般の方から寄せられた苦情や意見をまとめて、会員には周知させていますが、やはり問題点を明らかにしてオープンで議論するということも必要かもしれません。

    海外では、使用に当たって注意が必要なくすりについては、(医療関係者向け)添付文書をわかりやすくしたもの(日本でも一応、患者向医薬品ガイドというのがあります)を調剤時に渡すことが義務づけられており、くすりを使用する方には詳しい情報が提供されますが、日本ではこういったことは義務付けられていません。

     患者向け医薬品情報(本サイト KETWORDS)
      http://www.watarase.ne.jp/aponet/keywords/iyakuhin_guide/page1.html

    一方、日本ではどうかというと「副作用などを強調しすぎると、くすりを自己判断で飲まなくなる恐れがある」との考えが根強い(処方医に配慮する)ため、どうしても調剤時にお渡しする薬の説明書が不十分な内容のものになったり、患者さんからの質問にたいして「医師に相談してい下さい」など当たり障りのない対応になってしまいがちです。

    OTCであれば、そういったことは細かく添付文書に記されていますが、調剤薬については副作用などの情報をどこまで、どのように伝えるかは実はスタンダードがないのです。そのため、利用された薬局で対応に大きな差が出てしまうのではないかと思います。

    市民に薬の説明書の大切さを啓発することはとても大切なことだと思いますが、くすりとどうかかわるか、薬剤師とどうかかわるかといったことを、まず、一般の方々と考えていくことも必要ではないかと思います。

  4. アポネット 小嶋

    英国のDaily Mail紙は15日、消費者団体Which?が行ったのと同様の調査結果を記事にしています。

    Why trusting your pharmacist could put your health at risk
     (Mail Online 2008.10.15)
    http://www.dailymail.co.uk/health/article-1077346/Why-trusting-pharmacist-health-risk.html

    PJ誌も早速オンライン版で伝えています。

     Daily Mail slates pharmacy(The Pharmaceutical Journal 2008;281:434)
       http://www.pjonline.com/news/daily_mail_slates_pharmacy

    シナリオは、以下の3つです

    ・妻がここ1週間ひどい下痢になっているが何か薬はあるか
     (適切な情報提供や受診勧告を行うか)
    ・風邪と頭痛があり、アセトアミノフェンを含有する風邪薬と痛み止めを同時に求める
     (アセトアミノフェンを過量服用しないよう、同時に飲まないようアドバイスをするか)
    ・妻の顔が虫にさされた。ヒドロコルチゾン含有の外用薬を求める
     (医療機関への受診勧告をするか)