改正薬事法施行規則に関する通知

 前記事で、無菌調剤室の共同利用を可能とするために、薬事法施行規則が改正されたことを紹介しましたが、厚生労働省法令等データベースサービス(http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/)に同日に発出された通知が掲載されています。

 重要な事項が多く含まれているので、テキストにしました。(下記PDFでご確認下さい)

薬事法施行規則の一部を改正する省令の施行等について
(平成24年8月22日薬食発0822第2号)
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T120823I0010.pdf

薬事法施行規則の一部を改正する省令の施行等について

 「薬事法施行規則の一部を改正する省令」(平成24年厚生労働省令第118号。以下「改正省令」という。)については、平成24年8月22日に公布され、同日から施行されたところである。
 この改正は、薬局に設置された高度な無菌製剤処理を行うととができる作業室(以下「無菌調剤室」という。)において無菌製剤処理を行った薬剤を在宅での治療に使用することへの需要が高まっている一方で、大規模・高額な設備である無菌調剤室を全ての薬局が設置することは困難な状況にあることに鑑み、無菌製剤処理が必要な薬剤を含む処方箋を受け付けた無菌調剤室を有しない薬局(以下「処方箋受付薬局」という。)で調剤に従事する薬剤師が、他の無菌調剤室を有する薬局(以下「無菌調剤室提供薬局」という。)の無菌調剤室を利用して無菌製剤処理を行うことを可能とするものである。
 本改正の内容等については、下記のとおりであるので、御了知の上、貴管内市町村、関係団体、関係機関等に周知徹底を図るとともに、適切な指導を行い、その実施に遺漏なきを期されたい。

第1 改正省令の内容
  薬局開設者の義務として、調剤に関する遵守事項を次のように改めることとしたこと。

(1)無菌調剤室提供薬局の薬局開設営が、処方端受付薬局の薬局開設営から依頼を受けて、当該処方湊受付薬局で調剤に従事する薬剤師に、当該無菌調剤室を利用した無菌製剤処理を行わせるとき(以下「無菌調剤室を共同利用する場合」という。)は、当該薬剤師が、当該無菌調剤室提供薬局において販売又は授与の目的で調剤することを可能としたこと(薬事法施行規則(昭和36年厚生省令第1号。以下「規則」という。) 第15条の9条の第1項関係)。

(2)無菌調剤室を共同利用する場合においては、当該処方箋受付薬局の薬局開設者は、当該処方接受付薬局で調剤に従事する薬剤師の行う無菌製剤処理の業務に係る適正な管理を確保するため、事前に、当該無菌調剤室提供薬局の薬局開設者の協力を得て、指針の策定、当該薬剤師に対する研修の実施その他必要な措置を講じなければならないこととしたこと(規則第15条の9第2項関係)。

(3)調剤の求めがあった場合には、正当な理由がなければ、その薬局で調剤に従事する薬剤師にその薬局で調剤させなければならないこととしたこと(規則第15条の12関係)。
 なお、ここでいう正当な理由とは、薬剤師法(昭和35年法律第146号)第21条に規定する正当な理由と同様であること。
 また、薬剤師法第22条に規定する医療を受ける者の居宅等において調剤の業務を行う場合若しくは同条ただし書に規定する特別の事情がある場合又は無菌調剤室を共同利用する場合に、当該薬局以外の場所で調剤の業務を行うことは、正当な理由に該当すること。

第2 無菌調剤室を共同利用する場合の留意点等
(1)無菌調剤室提供薬局と処方箋受付薬局の間で共同利用に関して必要な事項を記載した契約書等を事前に取り交わしておくこと。契約書等には、少なくとも以下の内容を含むものであること。
① 処方箋受付薬局の薬局開設者が、事前に無菌調剤室提供薬局の薬局開設者の協力を得て講じなければならないとされている指針の策定、当該薬剤師に対する研修の実施その他必要な措置について、その具体的な内容を定めておくこと(第1(2)関係)。
② 無菌調剤室を利用する処方箇受付薬局の薬剤師から処方箇受付薬の薬局開設者及び無菌調剤室提供薬局の薬局開設者の双方に対し、無菌調剤室を利用した無菌製剤処理に係る事故等が発生した場合に、速やかに報告するための体制を定めておくこと。

(2)無菌調剤室は、以下の要件を満たすものであること。
① 高度な無菌製剤処理を行うために薬局内に設置された、他と仕切らt れた専用の部屋であること。無菌製剤処理を行うための設備であっても、他と仕切られた専用の部屋として設置されていない設備については、無菌調剤室と,は認められないこと。
② 無菌調剤室の室内の空気清浄度について、無菌製剤処理を行う際に、常時IS014644-1に規定するクラス7以上を担保できる設備であること。
③ その他無菌製剤処理を行うために必要な器具、機材等を十分に備えていること。

(3)処方箋受付薬局の薬剤師が利用できる無菌調剤室提供薬局の設備は、無菌調剤室及び無菌調剤室内で行う無菌製剤処理に必要な器具、機材等のみに限られること。

第3 無菌調剤室を共同利用する場合の薬事法令の運用等
(1)無菌調剤室提供薬局の管理者の義務について(薬事法(昭和35年法律145号)第8条第1項)
 無菌調剤室提供薬局において行った無菌製剤処理を含め、処方箇に基づいてなされた調剤の責任については、一義的に処方箋受付薬局にあると解される一方、無菌調剤室提供薬局め管理者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、無菌調剤室を利用する処方箋受付薬局の薬剤師を監督し、無菌調剤室及び無菌調剤室内で行う無菌製剤処理に必要な器具、機材等を管理しなければならないこと。

(2)処方箋受付薬局の薬局開設者が行う届出等について(規則第1条第1項、第16条第1項、様式第二及び様式第六)
 新たに薬局を開設して、無菌調剤室提供薬局の無菌調剤室の共同利用を行う場合には、規則第1条第1項に基づき、様式第一中「薬局の構造設備の概要」の欄に記載すること。
 また、開設の許可を有している薬局が、無菌調剤室提供薬局の無菌調剤室の共同利用を行う場合、無菌調剤室提供薬局の共同利用を取りやめる場合、無菌調剤室提供薬局を変更する場合等には、それぞれ規則第16条第1項に基づき、様式第六中「変更内容」の欄に記載すること。

(3)薬局機能に関する情報の報告について(薬事法第8条の2、規則第11条の3及び別表第一)
 処方箋受付薬局が、無菌調剤室提供薬局の無菌調剤室の共同利用を行うことにより無菌製剤処理を要する医薬品を調剤することができる場合においては、処方箋受付薬局の薬局機能に関する情報のうち無菌製剤処理に係る調剤の実施の可否について、「可(○○薬局(無菌調剤室提供薬局の名称及び所在地)の無菌調剤室を共同利用)」として差し支えないこと。

(4)帳簿の作成等について(規則第13条第1項及び第3項)
 無菌調剤室提供薬局の薬局開取肴は、無菌調剤室の利用に関する帳簿を無菌調剤室提供薬局に備え、最終の記載の日から3年間保管しなければならないこと。

(5)調剤された薬剤の表示について(薬剤師法第25条、薬剤師法施行規則
  (昭和36年厚生省令第5号)第14条)
 販売又は授与の目的で調剤した薬剤の容器又は被包には、処方箋受付薬局の名称及び所在地を記載しなければならないこと。なお、無菌調剤室提供薬局の名称及び所在地については、省略して差し支えないこと。

(6)処方箋への記入等について(薬剤師法第26条、薬剤師法施行規則第15条)
 処方箋受付薬局の名称及び所在地について、記入しなければならないこと。なお、無菌調剤室提供薬局において無菌製剤処理を行った薬剤については、無菌調剤室提供薬局の名称及び所在地についても、処方箋に記載すること。

(7)処方箇の保管について(薬剤師法第27条)
  処方箋受付薬局の薬局開設者は、調剤済みとなった処方箋を、調剤済みとなった日から3年間保存しなければならないこと。

(8)調剤録への記入等について(薬剤師法第28条、薬剤師法施行規則第16条)
  処方箋受付薬局の調剤録には、無菌調剤室提供薬局において無菌製剤処理を行った薬剤に関する事項も含め、当該処方箋が調剤済みとなるまでに行った全ての事項について記載する必要があること。
  また、無菌調剤室提供薬局の調剤録には、無菌調剤室提供薬局において無菌製剤処理を行った薬剤に関する事項についてのみを記載すれば足りること。 

 調剤薬の責任問題があるので、当然ですが実に細かく規定していますね。

 6年制の薬剤師が出てくる時代なので、調剤を行うスタッフについては将来的に問題はないと思いますが、留意点などがこれだけあると、小さな薬局が大きな薬局にお願いして調剤を行うというのは現実的にはかなりハードルが高いと思います。

 パブコメ結果(→リンク)を見ると、同一都道府県内であれば利用が可能なので、無菌調剤に力を入れているチェーン薬局が県内に1か所拠点を設け、同一都道府県内にある支店の無菌調剤に応えるというのは大いにあると考えます。

 理想を追求するのなら、都道府県ではなく最低でも医療圏ごとに1施設は必要だと思います。

 地域により事情が異なるかもしれませんが、全て民間に任せるのか、それとも公的に無菌調剤が可能な施設をつくるのか、そういった点についての検討は果たして行われているのでしょうか?(これを機に会営薬局の存在意義が再認識?となるか)

関連情報:TOPICS 2012.08.23 無菌調剤室の共同利用に関する改正省令


2012年08月23日 16:40 投稿

コメントが2つあります

  1. 在宅推進のための無菌室設置の補助金は会営薬局に対してって話しでは?
    ついこないだまで会営薬局は縮小してゆくゆくは廃止って話だったのに、厚労省の方針に従って、会営辞めたとこは、補助金の対象外なんですよね。
    何かもう少し一貫性にある行政であって欲しいですけど。

  2. アポネット 小嶋

    ぼんたさんのコメントを見て、以前の記事の確認と関連資料がないかどうかググってみました。

    2012年度の厚労省の方針(関係部局長会議)
    http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/120117.html

    「在宅医療提供拠点薬局整備」事業(新規)
    (平成23年度 事前事業評価書 平成23年9月)
    http://www.mhlw.go.jp/wp/seisaku/jigyou/11jigyou01/dl/IV-1-1-3.pdf
    (今年度予算は1.6億円ですが、当初20.3億円の予算要求がされていた)

    上記評価を見ると、

    ① 行政関与の必要性(民間に任せられないか):有
    患者・家族が在宅医療を希望する場合に、それが可能となるような体制を全国的に整備することが必要であるが、民間等の医療機関・薬局による個々の活動のみでは、体制に地域差が生じることが考えられるため、共同利用できる薬局を全国的に整備し、最低限の基盤整備を行い、その後の在宅医療推進につなげていくためにも行政機関の関与が必要である。

    ②国で行う必要性(地方自治体に任せられないか):有
    全薬局で、在宅医療を支援する地域薬剤師会営の拠点薬局への無菌調剤室の整備を行う場合、当該整備に係る費用について、財政基盤の弱い市町村等に負担させるのは困難である。また、全国どの地域においても、患者・家族が在宅医療を希望する場合に、それが可能となるような体制を整備する必要があることからすれば、財政支援を含め国として支援していく必要がある。

    ③民営化・外部委託の可否:否
    在宅医療提供拠点薬局整備事業は、各都道府県又は郡市区薬剤師会を運営主体とする薬局を拠点として、全国規模で、在宅医療を推進するため、国が整備等を進めていくべきものであり、また、初期投資が大きいことから民営化や外部委託を期待することは現実的にも難しい。

    となっていて、国の考えは、共同利用/補助金事業は民間に任せずに会営薬局や行政が主体になって行うことが前提みたいですね。(それだったらもっとはっきりと打ち出した方がいいと思う。会営薬局がない、つくれない地域では自治体が考える必要があるから)

    改めて読むと、今回の薬事法施行規則改正と通知は会営薬局が行うということを前提にしているように思いますが、チェーン薬局にとってもアピールするチャンスになるんでしょうね。