ネット販売の規制見直し、工程表の作成が求められる

 行政刷新会議の規制・制度改革委員会(http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/)は6日、29日にまとめられたフォローアップ調査結果等の委員会報告書を公表しています。

規制・制度改革委員会報告書(フォローアップ調査結果等)(平成24年6月29日)
http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/publication/p_index.html#fu

 このうち医療分野については、下記のような事項が重点フォローアップ項目指摘事項として、厚労省と合意した今後の方向性などが示されています。

  • 保険外併用療養の範囲拡大
  •  ICTの利活用促進(遠隔医療、特定健診保健指導)
  • 一般用医薬品のインターネット等販売規制の見直し
  • 訪問看護ステーションの開業要件の見直し
  •  ドラッグラグ、デバイスラグの更なる解消
    [医薬品及び医療機器の審査手続の見直し]
  • 再生医療の推進

重点フォローアップ項目指摘事項(医療分野)
http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/publication/240629/fu/item9.pdf#page=15

 このうち私たちと関連のある部分について抜粋すると以下の通りとなり、これには、一般用医薬品のインターネット等販売規制の見直しについて、早期結論に向けた工程表の作成が求められています

●ICTの利活用促進(遠隔医療、特定健診保健指導)
問題意識等 指摘事項(厚生労働省と合意)
<遠隔医療の普及促進の必要性>
医療資源の不足や偏在が問題視される中、遠隔医療は地域医療の維持・再生に貢献し得るものである。一方で、対面診療との同等性を疑問視する声もあるが、患者と医師の合意を前提に、ケースバイケースで判断すべきであり、画一的に規制すべき理由はない。患者の選択肢を拡大する観点からも、積極的に普及促進を図るべきである

<電子処方箋の実現に向けた議論の加速化>
処方箋は書面交付することとされているために、遠隔診療を受けても、患者が診療当日に処方箋を受け取ることは難しいのが現状である。
処方箋の電子化については、かねてから継続検討すべき旨が示されており、平成23 年度中に処方箋の発行にかかる考え方について結論を得ることとされているが、スケジュール等を含め、実現に向けた具体性を有する結論が示されているとは言い難い。他の医療情報電子化との整合性等が重要であることは理解できる一方で、診療と投薬は不可分と言うべき関係であるにもかかわらず、診療当日に医薬品を受け取れないことは患者の利便性を大きく損ねており、遠隔医療普及の大きな障害となっている。遠隔診療に対応した電子処方箋の早期実現を図り、遠隔医療の普及促進を図るべきである。

<保健指導における検討の加速化・充実化>
特定健診に基づく保健指導について、本閣議決定においては、平成23 年度中に結論を得ることとされているが、検討が遅れているため、早期結論に向けた取組が必要である。また、遠隔面談と対面面談の指導内容の差異のみを検証するのではなく、受診率への影響等
も踏まえた上で制度の見直しを行うことが必要である。

ICTを活用した保健指導
特定健診に基づく保健指導における、ICT(情報通信技術)を活用した遠隔面談については、実証データ等を収集した上で、対面での指導内容等との差異を検証し、制度の見直しについて検討する。
<平成24年度上期検討・結論>

処方箋の電子化
 「処方箋の電子化に向けて」(平成24年4月 医療情報ネットワーク基盤検討会)に示された論点を踏まえつつ、全ての処方箋電子化の早期実現を図るために、インフラ整備等の所要の措置について工程表を作成し、公表する。
<平成24年度検討・措置>

●一般用医薬品のインターネット等販売規制の見直し
問題意識等 指摘事項(厚生労働省と合意)
<販売方法に応じた合理的な規制・制度の確立>
一般用医薬品の販売について、対面販売が安全性を担保できる唯一無二の販売方法ではないことは明らかであり、インターネットや電話を通じた一般用医薬品の販売を一律に禁止する合理的な理由は存在しない。画一的に緩和・禁止を議論するのではなく、それぞれの販売方法の特性に応じた規制・制度の確立を目指すべきである。
特にインターネットを通じた販売については、対面販売との比較において、購入履歴を残しやすいといった利点もあることから、そうした利点を活用しつつ、本人確認を確実に実施するために利用者を登録制とすること等の方策が考えられるところであり、どうすればインターネットを通じた販売における安全性を確保できるのか、という視点から検討を行うべきである。

<議論の長期化>
継続購入者及び離島居住者を対象とした経過措置が設けられており、平成25 年5月まで2年間延長されたところだが、新たに継続購入者は発生しないため、時間の経過とともに対象者は減尐している。つまり、議論に時間を費やしている間に、議論とは関係なく、徐々に国民の利便性が損なわれているのが現状であり、経過措置の再延長は許されない。一般用医薬品の販売制度について、安全性と利便性を両立できる制度を早急に確立すべきである。

<適切な調査の実施>
医薬品の販売に関して様々な調査がなされているが、現状の一般用医薬品の販売経路別副作用報告は、因果関係が不明なものを含めた報告に基づくもので、販売経路不明の報告が多い上に、販売経路別の販売数量が把握されていないため、副作用発生率の算出・比較ができない。
販売経路と副作用発生の因果関係を正しく評価するためには、副作用の個々の事例について、「副作用の原因が本当に一般用医薬品なのか」「薬剤師等による情報提供が適切に行れた上で発生した副作用なのか」「販売経路に起因して発生した副作用なのか」「販売方法が異なれば防ぎ得たのか」等の観点から掘り下げた分析を行うことが必要である。
しかし、現行制度の導入以降、そうした調査が行われないままに、インターネット等を通じた第三類医薬品以外の一般用医薬品の販売規制が行われている。つまり、規制についての合理性・妥当性の説明責任が果たされていないのが現状であると言わざるを得ない。合理的な規制の在り方を検討するためには、合理的な根拠が不可欠であるため、閣議決定の趣旨を踏まえ、可及的速やかに実効性のある調査を実施すべきである。
また、高齢化に伴って外出困難者の増加等が見込まれる一方で、セルフメディケーションの重要性は増している。経過措置対象者に限定することなく、そうした潜在的なニーズが存在することも踏まえた調査を実施すべきである。

<リスク区分の見直し>
一般用医薬品のリスク区分については、安全性の確保を前提としつつ、購入者の利便性向上を図る観点から、生薬製剤及び漢方製剤を含めて分類の妥当性を逐次検証し、見直しを実施すべきである。

<偽薬流通防止に向けた取組>
ネット販売を規制する根拠として、ネット販売が偽薬流通を助長するとの主張が存在するが、偽薬の流通を防止することは、販売方法にかかわらず、医薬品制度全般に係る重要な課題である。
国内で一般用医薬品のネット販売等を規制しても、インターネットを通じた取引は、容易に国境を越えることが可能であることを踏まえ、販売方法の規制とは切り離した議論を行い、早期に結論を得るべきである。

早期結論に向けた工程表の作成
一般用医薬品の販売方法について、第三類医薬品以外の一般用医薬品の郵便等販売に関する合理的な規制の在り方の検討、薬剤師等の合理的かつ適切な対面販売の実施状況・円供給への寄与度等の検証、経過措置期間中の副作用発生状況等の検証を行うに当たって、計画的かつ早期に結論を得るための工程表を作成し、公表する。
<平成24年度検討・措置>

適切な調査の実施
経過措置期間中の副作用発生状況等について、薬剤師等からの情報提供との関連性、販売経路起因性等の様々な観点から詳細な分析を行い、副作用を含めた安全性と販売方法の関連性を明らかにするための調査を実施する。
これらの調査結果に基づき、一般用医薬品の販売規制の見直しに反映させるため、利用者の安全性を確保するための要件を整理し、結果を公表する。
<平成24年度措置>

郵便等販売の経過措置終了後の代替措置
経過措置による郵便等販売を利用している継続購入者及び離島居住者について、経過措置終了後の対応の在り方を検討し、必要な措置を講じる。
<平成25年5月末までに措置>

偽造医薬品の流通防止体制の強化
偽造医薬品の流通防止に向けて、販売方法ごとの特性を踏まえた規制の在り方について検討を行い、その結果を踏まえて適切な監視体制・罰則を検討する。
<平成25年度できる限り早期に結論>

●ドラッグラグ、デバイスラグの更なる解消(医薬品及び医療機器の審査手続の見直し)
問題意識等 指摘事項(厚生労働省と合意)
<審査人員の更なる強化>
PMDAにおいては、審査体制強化に向けて、審査人員の増員を図り、研修等を通じて育成を行っているところである。そうした中長期的な取組は重要だが、審査体制の強化が喫緊の課題であることを踏まえ、短期的な取組を並行して行うことが必要であり、即戦力の人員を確保することが必要である。また、人材の育成及び確保のために、大学等の教育機関を主な対象とした人材交流が実施されているが、この範囲を更に拡大すべきである。研究開発及び審査に関わる人材の流動性を、産・官・学全体で高めることが、我が国の研究開発の底上げにつながることが期待できる。PMDAの就業規則における再就職制限の見直しが議論されたところだが、採用後の従事制限を含め、制限規定全体を見直すべきである。

<審査運行状況の明確化・透明化>
PMDAにおいては、審査機能の強化に向けた取組として、事前評価相談制度の拡大や薬事戦略相談の創設等を実施してきている。そうした取組が、所期の狙いどおり審査機能強化に貢献しているのであれば、更なる取組を行うべきである。具体的には、申請者側にとって、審査がいつまでかかるのか予見性がないことは、経営上の大きなリスクとなっている。審査機能が強化され、迅速かつ質の高い審査体制が構築されているのであれば、申請受理時に審査期限を設定したり、審査期間中においても、申請者に審査状況等について随時フィードバックしたりする制度運用を行い、審査運行状況の明確化・透明化を図るべきである。申請ごとに必要となる審査が千差万別であることは当然だが、それを理由として審査期限を設定しないのではなく、審査期限を超過する場合は、その理由について申請者側との間で意思疎通する等、審
査側と申請者側のコミュニケーションを深化することが重要である。

<コンパッショネート・ユースに関する議論の更なる促進>
安全性確保等の点において、慎重・丁寧な議論が必要であることは理解できる一方で、患者の強いニーズがあることを踏まえる必要があるため、「薬事法等制度改正についてのとりまとめ」'平成24 年1月24 日 厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会(において提示された論点につき、更に議論を加速化するとともに、導入に至るまでのスケジュールを明確化することが必要である。

審査体制の強化
独立行政法人医薬品医療機器総合機構'PMDA(採用後の企業出身者に対する就業制限定については、産・官・学の人材流動化を促進する観点から、利益相反に十分配慮した見直しを検討し、結論を得る。
<平成24年度検討・結論>

未承認医薬品等の例外的使用(アクセス制度)の検討
「薬事法等制度改正についてのとりまとめ」'平成24 年1月24 日 厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会(において提示された論点に関する議論を早期に行うため、未承認医薬品等の例外的使用に関する関係者の調整に着手し、結論を得る。
<平成24年度できる限り早期に結論>


2012年07月06日 16:11 投稿

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